人を育てるということ
人を新たに採用したら、まず新人教育をします。そこでその会社のシステムや社風を理解してもらうわけですが、教える事と育てることは違います。
教えることは一方的に情報を伝えることですが、育てることは、教えることで相手の成長を促すことです。よく、教えただけで育たないのは相手が悪いと思っている人がいますが、ただ教えただけでは人は育ちません。水を与えるだけではなく、肥料をやったり、日に当てたり、雑草を取り除いたり、手間をかけなければうまく育ちません。部下が育たないのは、そういうことを怠った自分が悪いのかもしれないのです。
そこで、人を育てるということについて考えてみます。
<育てるとは>
まず、育てるという行為は、一定の水準に満たない人を、そこに近づけようとすることです。その“理想の水準”まで達することが、人が育ったといえます。
<求める人物像は>
ですから、この目標となる“理想の水準”をどのように設定するか、これがまず問題となります。その会社にとって、どういう人材が必要なのか、を考えておくということです。
しかし、この目標設定の注意点は、売上目標設定の時と同様、高すぎないということです。全く手の届きそうにない目標では、やってみようという意欲は沸いてきません。理想に走りすぎて現実からかけ離れないようにします。この目標は、必要最低限の水準だからです。
人を新規に採用する際も、このことを念頭において、この水準により近い人、つまりすぐに育ってくれそうな人を探すことになります。
まずどんな人に育てたいかは重要なポイントなのです。
<社員の能力は>
それが決まったら、次は現状把握です。
それぞれの社員はどんなタイプで、どんな才能、長所、短所を持っているか、これを知らなければなりません。それによって教え方もおのずと変わってくるからです。
人には様々な長所や短所があります。目標水準となるスキルに対しても様々な角度からアプローチしていく必要があるのです。画一的に皆同じように接していてはダメなのです。
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という孫氏の言葉があります。こちらの実力も相手の実力も両方しっかりわかっていなければ、戦いを勝ち抜くことはできないということです。
<どんな作戦で>
相手のことが少しわかったら、それに合わせて指導方法を考えていきます。
呑み込みの早い遅いによるすけスケジューリング、理解度に応じたアプローチ方法、座学で理解しやすい人もいれば、勉強は苦手だから現場の方がいいという人もいます。それぞれの時間配分や重点指導項目を考えて、その人に合わせた形のほうが、結局一番の近道なのです。
<どこまできた?>
人の成長というのは一本調子ではなく、階段状になるものです。少し成長してはしばらく停滞し、また少し成長するということを繰り返しているのです。
この、一段上がった時を見逃さず、その都度ほめてあげましょう。
小さな成長を見逃がさないことで、この人はちゃんと見てくれているという安心感から次のチャレンジのモチベーションにつながっていくのです。ほったらかしの放任主義はよくありません。
成長をよく観察して気づいてあげましょう。
<出し惜しみしない>
よく、人を教えるときに、肝心なことを隠している人がいます。自分しか知らないことで優位性を保とうとしているのでしょうか。そういう貧乏性のようなことはやめましょう。知っていることは出し惜しみせず、すべて吐き出して伝えてしまいましょう。
このことは、教えた人が自分よりできる人になられると困るという意識が働いていることの現れです。そういう恐怖があるなら、その人に追い越されないように自分を高めればいいだけの話です。それを怠るのは、ただの怠慢です。そうやってその人の成長を阻止するようでは会社にとって大きな損失ということになってしまうのです。
自分を奮い立たせましょう。
<自分も成長>
よく、「人に教えていると自分も勉強になる」といいます。これは自分の知識の再確認ということです。「新たな発見があって自分も教えられた」ということで、それはそれでいいのですが、これだけでは不十分です。「自分が忘れていたことを思い出した」、「気づかなかったことに気づけた」にすぎないのです。
「でも自分を高めるにはどうすればいいかわからない」と思うかもしれません。
そんな時は、「人の振り見て我が振り直せ」ということわざを思い出してください。
人の失敗を見て原因を分析し、どうやったら繰り返さずにすむかを考えて自分で実践することで、あたかも自分自身が経験したかのように成長できるということです。
自分が今人を指導している立場なら、その人の失敗を数多く見ているはずです。つまり、自分が成長できるきっかけを得るまたとないチャンスなのです。
こういうように、どんなところにもヒントは隠されています。貪欲に自分の成長の糧を探してみましょう。
教えている人の成長を見ることが楽しくなるよう、自分も一緒に成長すれば楽しくなります。
以上人を育てるということについて考えてみました。最後までお読みいただきありがとうございました。
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