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輪廻の風 第3章

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2022年9月の記事一覧

輪廻の風 3-57

「何あれ〜!?やばくな〜い!?」
突如押し寄せてきた軍勢を見たモスキーノは、わざとらしく驚いていた。

遠くから見ると、まるで波打つ蟻の大群のように見えた。

「ざっと4万は超えてるね。やば。」
ラベスタはポカーンとしていた。

パッと見たところ、4万を超える大軍のうち、バレラルク王国の兵士たちが約3分の1程を占めていた。

なんと、魔族に恐れをなして王都を去ったバレラルクの戦士達が、時間をかけて

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輪廻の風 3-56

エンディは、まるでミサイルに撃墜された小型飛行艇の様に、最上階から5階へと緩やかに落下してきた。

「エンディー!」
ラーミアは泣き叫び、ロゼ達の治療をそっちのけでエンディにしがみついた。

焼け爛れた肌に血塗れの身体、更に骨が2〜30本ほど折れていた。

ラーミアは両手からパッと眩い光を放ち、すぐにエンディの治療に取り掛かった。

「くそが!!よくも俺の相棒を…ちくしょう!どこのどいつだぁ!出て

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輪廻の風 3-55

イヴァンカに敗北したルキフェル閣下は、生と死の狭間を彷徨っていた。

深い斬り傷による出血多量と、黒い雷の直撃により内臓損傷数箇所、またそれらの外傷による人体の壊死。

もはや身動き一つ取れぬほどに身体中はボロボロだった。

そんな中でも、ルキフェル閣下は意識を取り戻した。
恐るべき生命力だった。

薄れゆく意識の中でゆっくりと瞼を開くと、何者かに肩を担がれ、人気のない場所へと移動させられている事

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輪廻の風 3-54

イヴァンカは剣を握り、刀身をルキフェル閣下に向けたまま立ち尽くしていた。

しかし、自身のいかなる攻撃もルキフェル閣下の前では無効化されてしまう現実を前にしても、茫然自失となったわけでもなく、遠い目をしながらルキフェル閣下に視線を合わせていた。

ルキフェル閣下はイヴァンカに何度も斬りかかった。

凄まじい威力を秘めたルキフェル閣下の斬撃に対し、イヴァンカはひたすら防御に徹するのみで、一切反撃をし

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輪廻の風 3-53

イヴァンカとルキフェル閣下は、早速剣を交えていた。

両者とも、まるでお互いの手の内を探るような、或いは様子を伺い合っている様に、絶妙に加減をしながら軽く剣を振るっていた。

それでも、2人の剣技の応酬は、常人ではとても目で追いきれないほどの速度であった。

また、仮にもこの2人の間合いに入ろうと試みた物好きな者がいたのならば、間合いに近づこうとしたその時点で、身体が斬り裂かれてしまうほどの破壊力

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輪廻の風 3-52

「カインが勝った。良かった。」
「あの野郎、やってくれたぜ!」

ラベスタとエスタは、魔界城4階の壁に空いた大きな穴から外の様子を眺め、カインがジェイドに勝利したことを皆に報告した。

無表情のラベスタとは対照的に、エスタは拳を握りしめて喜んでいた。

2人はカインの勝利を祝福しており、報告を聞いたマルジェラとダルマイン、サイゾーとクマシスもホッとしていた。

「そんな…ジェイドさんまでやられちま

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輪廻の風 3-51

「うぎゃー!うぎゃー!」
ジェイドに頭を掴まれ、宙吊りになるルミノアの大きな泣き声が城内に響き渡った。

一向に泣き止む気配のないルミノアを見て苛立ちを募らせたジェイドは、更に強い力でルミノアの小さな頭を乱暴に掴んだ。

「やめて!ルミノアちゃんが死んじゃうよ!」
「ルミノアちゃんを離しなさいよ!」
あまりの痛ましい光景を見て、居ても立っても居られなくなったモエーネとジェシカが、ジェイドに向かって

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輪廻の風 3-50

「ヒャハハッ!本当はよぉ、この俺に雷ぶっ放したイヴァンカちゃんを探し出してぶっ殺してやろうと思ってたんだけどよぉ…てめえ、この前も今も、俺の最強の黒炎をちょっとかき消したくれえで良い気になってんじゃねえかぁ!?カインちゃん〜〜!!ムカつくからよぉ!まずはてめえからぶち殺してやるぜぇ!!」

ジェイドは甲高い声でそう言うと、猛スピードでカインの間合いへと詰め寄り、カインの顔面を殴りかかった。

カイ

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輪廻の風 3-49

魔界城最上階。

エンディとヴェルヴァルト大王の死闘は、遂に決着がつきそうな局面に達していた。

優勢なのは、ヴェルヴァルト大王。
それも、圧倒的だった。

金色の風を纏ったエンディの攻撃をその身に受けても、さほどダメージを負っている様子もなく、たとえ傷を負ったとしても、超速再生能力によって瞬く間に回復してしまうのだ。

それに対し、エンディの身体には着々とダメージと疲労が蓄積されていき、一向に勝

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