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輪廻の風 第3章

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2022年3月の記事一覧

輪廻の風 3-7

ユドラ帝国が滅亡してから2年。
かつて栄華を極めたあの国は、今となってはその面影を微塵も感じさせないほど寂れてしまっていた。

ユドラ帝国の跡地は現在、バレラルク王国の管轄下に置かれており、"人間"は誰1人として住んでいなかった。

しかし、管轄下と言ってもほとんど形式上で、警備の実態は穴だらけであった。

そう、かつてユドラ帝国が繁栄していたその土地は、魔族にとって絶好の隠れ蓑となっていたのだ。

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輪廻の風 3-6

ペルムズ王国は、"砂漠の国"と名高い軍事大国だ。

今回紛争が勃発している土地は、バンホイテン砂漠と呼ばれる、世界最大規模の砂漠地帯である。

ペルムズ王国では急遽、討伐部隊が編成された。

総勢100名を超える討伐部隊が、旧ユドラ軍と謎の軍勢の小競り合いを沈静化すべく、バンホイテン砂漠を巡回していた。

すると、討伐部隊の部隊長が、砂丘に座り込む30数名から連なる集団を発見した。

その集団は旧

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輪廻の風 3-5

エンディとアベルは急いでジェット機に乗り込んだ。

もちろんこのジェット機は、毎度おなじみのロゼが所有する王室御用達のプライベートジェット機だ。

「よーし!さっさとペルムズ王国に行こうぜ!」

「エンディ、そんなはしゃがないでよ。旅行じゃないんだから。」

気持ちが昂っているエンディとは対照的に、アベルは少し冷めていた。

「おいちょっと待てえ!どうしてオレ様がオメェらと同行しなきゃならねえんだ

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輪廻の風 3-4

エンディ達は宴を中止し、ロゼに玉座の間へと招かれた。

急遽、緊急会議が執り行われたのだ。

玉座の間にはバレラルク王国の軍事機関の中核を担う者達が集められた。

しかしその場には、軍人ではないエンディ、カイン、エラルドも招集をかけていた。

「おいおい、なんで俺まで呼び出されてるんだよ?」仕事中に突然呼び出されたエラルドは気怠そうに言った。

「君は軍人じゃないけど、一応天生士(オンジュソルダ)

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輪廻の風 3-3

「おいカイン、誰だよこいつ?知り合いか?」エンディは突如現れた謎の男を凝視しながらいった。

「いや、知らねえな。」
カインがキッパリとそう答えると、男は心外そうな表情を浮かべていた。

「知らないだとお!?ふざけるなよ!貴様、恩師を忘れるとは何事だ!」

「は?恩師?何言ってやがる?」
カインの頭の中でクエスションマークが飛び交っていた。

「私はマルクスだ!ユドラ帝国の神央院で天文学の教授とし

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輪廻の風 3-2

「ちょっと!走らないで!ここをどこだと思ってるのよ!!」
病院内を全力で走るエンディ一行に、年配の看護婦が激怒していた。

しかしエンディたちは聞く耳を持たず、アマレットがいる病室を目指して一目散に走った。

ここは王都ディルゼンで最も大きな病院だ。

「アマレット!!」
病室に着くやいなや、エンディは大声で叫んだ。

「おいうるせえぞ。ここは病院だぜ?静かにしろよ。」ロゼが呆れた顔で注意した。

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輪廻の風 3-1

イヴァンカとの戦いから2年の歳月が経過した。

終戦後、エンディ達がバレラルク王国に帰国して直ぐ、盛大に戴冠式が執り行われ、ロゼは国王となった。

国王となったロゼが初めに行った公務は、生き残ったユドラ人達の選別だった。

滅亡したユドラ帝国の戦闘員や民間人は連合軍によって一斉に拘束された。

しかし彼らの多くが、イヴァンカに対する恐怖心で動いていた者がほとんどだった。

矯正の余地が有ると判断さ

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