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介護業界が変わらない理由は、「現場が大変だから」と言い訳しているから

介護ビジネスにおいて中核となるのは、”介護現場”である。それは介護を要する高齢者に対して直接的に支援する仕事だからだ。

また、介護現場で行われる支援によって売り上げが発生する。そのため、介護においては介護現場の発言力が強くなる。

私は経営および運営に携わっている立場のためか、たまに介護現場のスタッフから「もっと現場を分かって下さい!」「現場業務をしてみれば、大変さが分かるはず!」といった申し出を受ける。

予めお伝えしておくと、この類の申し出はどんなに現場で一緒に作業をしても言われる。急な欠員やクラスターなどでヘルプに入った後も言われたし、そして月の半分以上で現場業務をしていても現在においても言われる。

何なら、新人教育を直接行った介護職員からも言われたこともある。「ここでの介助はこういう手順でやるんですよ」と親切に教えてくれるのは有難いが、「それは私が教えた内容では?」と突っ込もうと思ったこともある。

いずれにせよ、介護現場は大変な思いをして日々の支援を行っているのは確かであり、それによって事業の要ともなっているのは事実である。それに対してプライドをもつことは自然だと思う。

しかし、介護現場の方々は、何かしらの問題が起こると「現場」を言い訳にする傾向が伺える。

具体的には「現場が大変だからできない」「現場が忙しいから無理」といったことである。

現場が大変なのは分かる。しかし、何も現場が大変なのは介護業界だけではない。業界全体・職場全体あるいは現場以外だって大変である。

特に介護現場で働いている方々の中には、まるで「介護現場だけで事業が成立している」と言っていいほど視野の狭い物言いをすることがある。

そのせいだろう、たまに事務員や調理員などの担当者が「自分も現場で働いたほうがいいのでしょうか?」と相談されることがある。どうやら、介護現場のスタッフから「介護業務は事務や調理よりもずっと大変だ」みたいな言い方や陰口を言われるらしい。

だが、役割は人それぞれである。事務員がいるから労務や財務などの事業の血液が循環するし、資材管理がされているから現場に備品や消耗品などが滞りなく支給されるのだ。

そのため、私はこの手の相談に対しては「気にしないほうが良いですよ。気持ちはわかりますが、あなたの役割に専念しましょう」と言う。お互いに雇われ方が違うのに、土台が違う役割を比較しても不毛なだけだ。

それは私だってそうだ。現場からの申し出を気にして現場業務ばかりしていたら、経営や運営がおろそかになる。現場の意見には耳を傾けるが、社会人として視野の狭い物言いに対しては毅然と振る舞うことも大切だと思う。

特に、法人として運営として業務改善や新しい介護技術を提示するとき、「現場が大変だからできません」と言われることは珍しくない。そこで、思考を変えていくよう働きかけをする。

もちろん、方針や新体制をとるときは事前に啓蒙活動や説明会はする。しかし、それをスタートした後で「現場が大変だからやってません」というスタッフは、残念ながら評価できない。

何もトップの考えを現場に押し付けるつもりはない。

しかし、最初から「できない」「やりたくない」という頑固な思考が丸わかりで、それを「現場は大変だから」という言い訳をして逃れられると思っている幼稚さを容認するつもりはない。

プロフェッショナルとは、自身を成長させながら社会の課題や期待に応えようとする姿勢である。それを最初から「大変だからできない」として、その言い訳として現場を取り上げるのはお粗末である。

介護において「現場が大変だからできない」というならば、できないという理由を自分の実力ではなく、利用者たる高齢者に責任転嫁していると思ったほうが良いと思う。

――― 何だか辛辣な記事となったが、介護業界の働き方が10年たっても変わる気配がなかったり、(行政も含めて)DXが進まない理由はこのあたりにあると思う。

つまり、変化したくない・現状維持したいという建て前として「現場が大変だから」という便利な言い訳を使ってきたから発展しないのだ。

――― いい加減、介護業界は現場を言い訳に使うのはやめよう。現場が大変なのは介護だけではないし、現場以外だって各自の役割に尽力している。

他業界では現場であっても業務改善をしたり、新しい働き方をどんどん採用している。大変かもしれないが、動くならば今しかない。

そうしてないと、介護業界はどんどん人材が離れてしまう。魅力ある業界にするためには言い訳しないことが先決ではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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