せっかくデジタル管理されている情報を「紙で保管しておけば安心」とわざわざ印刷する非合理さよ
介護サービス事業は保管書類がやたら多い。
利用者情報の管理や記録作成などはデジタル化がそれなりに進んでいるが、それでも書類が多い。
中には「これは何のために保管しているの?」という書類もある。
さらに、クラウド管理されている情報や記録すら、わざわざ印刷して保管していることもある。
この手の書類を印刷してファイリングしている担当者に聞くと「前の担当者からそう引継ぎされたので」「この職場ではそのような体制になっているので」という理由になっていない理由を言われる。
こちらの意図としては「クラウド管理しているのだから、インク代や用紙代をかけて印刷しなくても閲覧できるのだが」と言いたい。
そこで「これはシステム上にデータが保管されているから、わざわざ印刷する必要はないよ」とやんわり言うが、なかなか伝わらない。
デジタル化された情報を、ことあるごとに印刷およびファイリングしている担当者の言い分としては「紙で印刷しておくとすぐに確認できるんですよ」とか「パソコンが苦手な職員もいるので」ということらしい。
だったらシステム管理なんて必要ないだろうと突っ込みたくなるが、その場では言わない。とりあえず背景や現状をひたすら聞く。
――― そこでふと気づいた。「もしかして、入力結果の確認は印刷するしかないと思っているのかも」ということだ。
試しにシステム上で必要な情報の検索・抽出方法を教えた。すると案の定「へー、こういう機能があったんですね」という反応をされた。これはずっとシステムを利用し続けているスタッフからも出たので驚きだった。
つまり、多くの介護職員にとって利用者情報や記録管理などのシステムと言えば、タブレット端末やパソコンはただの入力端末という認識なのだ。入力したデータが保管・蓄積して、そこから活用するという認識がないのだ。
さらに、入力したデータを閲覧する方法および媒体はモニター上ではなく、印刷された紙しかないと考えているわけだ。だから印刷するのだ。
職員によっては、体温や血圧などの記録管理システムで入力されている情報を、エクセルで作った一覧表にに手書きで書き移していたということもあって唖然とした。
そこで「システム上で期間を選択して、そこからこのように一覧表や温度板が出せますよ」と教えるも、今度は「その操作法を覚えられないので、今のやり方(手書き)でやります」という頑固さを発揮された。
――― 別に馬鹿にしているわけでない。しかし、このような現実を目の当たりにすると、介護業界のICTやらDXは何年先になるのか分からないと思ってしまう。
また、このような非効率というか非合理的な仕事の仕方こそが、介護現場の多忙さに拍車をかけているとも思ってしまう。
これは介護現場だけではない、書類を整備するように通知および指導している行政そのものも同様だ。
いつまでFAXでやりとりしなければいけないのだろう?
いつまで申請書を郵送で送らなければいけないのだろう?
以前、内容に不備はないのに「提出は両面印刷ではなく、片面印刷して差し替えを提出してください。その差し替えは郵送してください」という謎のリテイクをくらったこともある。
このような行政のアナログ気質が残っているためか、管理者によっては「システム管理されているけれど、一応紙でも印刷しておこう」と考えていることもある。
そこでも「いえ、最近は運営指導(旧 実地指導)でも、モニターやタブレット端末で一部を見せれば問題ないですよ」と伝えるものの、書類やファイルといった物質として形がないと安心できない様子も伺える。
――― 何もすべてをデジタル化すればいいと言いたいわけでない。
正直、国の通知文などは細かすぎてモニター上で閲覧するよりも紙で印刷したほうが良いといったこともある。
アナログかデジタルかは使い分けすればいい。
しかし、せっかくシステム管理されている情報を、コストと資源をかけて、保管場所も圧迫しながら、わざわざ紙として形にすることは疑問である。
さらに、わざわざ紙に印刷しながらただ保管しているだけというのは、コストや時間の無駄もあるが、限りある資源への冒涜であると思う。
そろそろ、私たちは「とりあえず紙として残しておけば安心」という風潮から脱却するべきである。
それは引いては事業にとってもプラスになるし、地球環境にとってもマイナス要因を減らせることにつながるのだから・・・。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。
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