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介護情報公表システムは必要なのか?

身近な高齢者が介護サービスや施設を必要とするとき、あるいは今後を見据えて検討するとき、どのように調べるだろうか?

おそらく現代であれば、多くの人はまずスマホで検索すると思う。

しかし、実は厚生労働省では「介護情報公表システム」というものを既に運用している。これは平成18年から始まった介護サービス事業所や施設などを探せる情報総合サイトだ。

「介護サービス情報公表システム」は、全国の介護サービス事業所のサービス内容などの詳細情報を、インターネットで自由に検索・閲覧できるシステムです。介護保険法の規定に基づき都道府県が行う「介護サービス情報の公表制度」の運用のために、厚生労働省が設置しています。このシステムを使い、利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討して適切に選ぶための情報を都道府県及び指定都市が提供しています。

厚生労働省HP 介護サービス情報の公表制度より抜粋





しかし、おそらく国民の多くは、この介護情報公表システムの存在を知らないと思う。知っていたとしても活用していない。

なぜ、断言できるのかというと、単純に「アクセス数が少ない」ということでハッキリわかる。

総アクセス数は2500万だが、平成18年からの累計だとすると、多く見積もっても年150万、月12.5万となる。しかもこれは日本全国での話なので、都道府県で月3000未満となる。

計算が間違っていたらご指摘いただきたいところだが、そんなことをしなくても、都道府県別のアスクセス数を見れば一目瞭然である。1日100も達していない地区も珍しくない。

この高齢化社会において、国が運用している介護情報公表システムのアクセス数が異常に少ない、つまり活用されてないという事実があるのだ。




「活用されていない」なんてと言うと、何だか語気が強いように思えるが、これは別な視点からも分かる。

この介護情報公表システムは、平成27年4月より「介護事業所ナビ」というアプリとして発信されていたが、令和6年3月で終了となった。

終了となった背景は分からないが、誰もがスマホを持っている時代にアプリが終了というのは、スマホゲームで言えばユーザ数が少なかった(人気がなかった)くらいしかないだろう。

まぁ、介護サービスや施設を探すとなると、これらが見つかるまでの一時的な期間となるわけだから、継続利用が基本のアプリは社会的ニーズとして適合しなかったのは分かる。

しかし、そこで「アプリ終了後はブラウザで介護情報公表システムをご利用ください」とお知らせするのは分かるが、前記したとおり「アクセス数が少ない=活用されていない」システムを活用しろと言われても困るだろう。

アプリが活用されなかったのならば、現行のシステムを改善して、アクセス数を増やすことに焦点を合わせたほうが良いと思う。




ここまで書いておいてフォローするつもりはないが、介護情報公表システムは介護事業所や施設等の情報はちゃんと記載されている。

しかし、残念ながら「ユーザ目線になっていない」という問題がある。

まず「最初にお読みください」の時点で分かりにくいことを白状している。これはチュートリアルが書かれているが、昨今のホームページで「最初にお読みください」なんて掲載しているところはほぼない。

特に現代人は時間をかかるとイライラしてしまうため、「最初にお読みください」が目に入った時点で時間がかかると判断して、次の情報サイトに移ってしまう。

仮に「最初にお読みください」を読んだとしても、それを介護事業所を探すためのアクションにすぐ移せる仕様でもない。さらにユーザが求めている「介護で困っているのでどうにかしてほしい」という課題解決の情報がすぐに出てこず、ポイントのずれた理念みたいな文章ばかりが目に付く。

しかも、中には都道府県別の地域包括支援センターのリンクをクリックすると「ご指定のページは見つかりませんでした」というページもある。

期待してアクセスしたわりに求めるものが見つからないのは、アクセスしたユーザにとってストレスであり、かつ落胆でもある。




基本的な話として、介護情報公表システムはSEO対策が不十分だと思う。つまり、検索エンジンを使ってすぐに上位に表示される仕組みが欠けている。言ってしまうと「ただ作っただけ」「ただ運用しているだけ」だ。

実際、介護に関する情報を検索しても、介護情報公表サービスよりも民間の介護情報サイトのほうが確実に表示される。何なら、各地域で運営しているホームページがヒットする場合もある。

そもそも「公表」という言葉が分かりにくい。おそらく一般の人たちは「公表って何?」という印象を抱いて、そこから介護情報を探そうとはしないだろう。

また、ちゃんとした情報は掲載しているが、そこに辿りつくまでに何度もクリックしなければいけないし、そこで表示された情報も一般的ではない。

具体的には割愛するが、施設情報として「どのような施設か」「料金はいくらか」「どのようなサービスが受けられるか」よりも、運営主体や建物の構造といったどうでもいい情報が表示されるのはどうかと思う。

また、パラメータ表示して見やすくしたいのは理解できるが、これは色々な施設を見ていることが前提であって、単独でパラメータを見ても、これも一般の人からすると検討材料になりにくい。

いくら有益な情報があっても、求める情報までのロードマップと伝え方を考えなければ、それは無益な情報になってしまう。

いい加減、介護情報公表システムは抜本的に変えたほうが良いと思う。




辛辣なことを言うと、現状のままならば、介護情報公表システムは廃止しても全く問題ないと思う。

1日数十件しかアクセスされない媒体に対してコストをかけるのは無駄である。特に介護事業所においては年1回数千円のお金をかけて掲載しているわけだから、広告費と考えると民間より安価であるが無駄と思ってしまう。

個人的には一気にたくさんの情報を掲載しすぎなので、もしリニューアルするならば、もっと必要最低限の情報からスタートしたほうが良いと思う。

また、ユーザに対しても色々な質問をしすぎることなく、段階的に情報を提供して、徐々に質問を絞っていくほうが良いだろう。そうすることによって介護で何を悩んでいるのかも見えてくるはずだ。

――― と、何だか批判的な記事となったが、別に介護情報公表システムがなくなればいいと言いたいわけではなく、せっかく運用するならばもっと社会とユーザ目線のシステムにしたらどうかと言いたいのだ。

そのためには、このシステムの「ターゲットは誰か?」と再度見直してみるのが先決だと思う。まぁ、こんな記事なんて余計なお世話だろうが。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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