見出し画像

介護職員が気兼ねなく「ひやりはっと」を報告できる”評価体制”づくり

想定できない事故が増加

介護現場では様々な事故が起こる。世間がイメージできるような事故もあれば、介護現場では「あるある」といった事故もある。介護のベテランであっても想定できない事故もある。
ここ数年においては、想定できない事故が増えている。その理由は事業所としての不備もあるが、社会の著しい変化が大きな要因として挙げられる。
高齢者とはいえ生活スタイルが多様化しているし、社会構造も日々変化している。介護サービスを受ける高齢者だけではなく、そのご家族の価値観や考え方も変わっているし、介護職員の仕事への向きあい方も変わっている。
事故というのは複合的な要素であることが多いので、これらの変化が混ざり想定できない事故が増えるのも自然である。

(社会変化を要因とした想定外の事故事例を紹介したいが、公開可能で分かりやすい事例がないため今回は割愛する。説得力に欠けて申し訳ない)

事故対策は急務、しかし・・・

とは言え、事故が起きるのを待っているわけにはいかないし、介護サービス事業を営んでいる立場として「社会の変化や時代の流れだから、この事故は想定できませんでした」なんてことは言い訳にしてはいけない。
全国の介護現場で起きた事故や自事業所のケースを検証し、事故が起きないように予防することが大切だ。想定できなかった事故も1つ1つ検証し、類似のケースに備えることも大切だ。

しかし、事故は気づかないうちに起こり、そして放置されたままのことが多い。事故として表在化しているケースは、氷山の一角と言われている。
苦情やクレームにも通じる話だが、たまに職員との何気ない会話の中で「それって事故じゃないの?」と発覚することもあり、慌てて検証することがある。事業運営の立場と一般職員では事故に対しての認識に誤差があるため、定期的な研修や都度の指導などによる啓蒙を繰り返すしかない。

「ひやりはっと」が安全な事業所を作る

一方、事故案件の発覚を少なくするため、事業所としては事故予防につながる大切な要素して「ひやりはっと」をいかに拾い上げるかが重要となる。「ひやりはっと」は事故に至らなかったけれど、危険事案として捉えるケースだ。この報告が多ければ多いほど、その事業所はリスク意識があると考えて良い。
このように言うと現場の介護職員は「危なかったけれど、問題なかったから報告しなくてもいいだろう」「報告すると自分の評価が下がるかも・・・」と思われるかもしれないが、とんでもない。「ひやりはっと」の報告が多い職員は、事業所にとってリスクを減らしてくれる大きな貢献者だ。報告書を書くのは面倒かもしれないが、どんどん報告するべきである。


「ひやりはっと」を評価する制度(企画中)

このような記事をまとめているのは、少し前から考えていることがあるからだ。それは事故予防に対しての職員の評価制度。具体的には「ひやりはっと」の報告数・対応内容・予防策の立案・その後の有効性といった、今後の事故予防につながる視点を評価するものだ。

現場の介護職員だけでなく、掃除専門のパート職員も事務員も対象である。評価基準は上記の項目をポイント化、半年や1年と期間を設け、職員個人の成果として見なす。
目に分かるインセンティブは必要だ。人事考課の要素として賞与の上乗せや昇給の目安にするかなど考えてる。職場内での競争になるかもしれないが、介護という仕事は人間関係やキャリアだけの曖昧な格差があるため、あくまで仕事として客観的な成果報酬に対しての競争があっても良いと思う。

シーン別としては利用者を介助を要する現場が中心となるだろうが、介護施設における洗濯室や事務室、休憩室、浴室、玄関や中通路といったあらゆる場所も含めている。というのも、事故及び事故につながる場面は、意外にも利用者がいない作業場でも起きるからだ。

少し話が脱線するが、私の身近で起きた介護施設の事例を紹介すると、そこで働いている職員がいつものように施設内の洗濯室でバスタオルを干していたところ、器具の劣化と濡れたバスタオルの重みにより、天井の吊り下げ式の物干し竿が落下したことがあった。職員の肩に当たったものの怪我には至らなかったが、これも多くの職員が「まさか」と思った想定外のケースだ。
この事例も職員との何気ない雑談によって発覚したことだった。職員としては何気ない日常の一部と思っていたが、運営視点からすると職場の安全のために再発防止に努めると考え、今後の事故予防と施設内のメンテナンス項目に加える意味から、「ひやりはっと」報告書を提出してもらった。

「そこまで見るの?」と思われるかもしれないが、このような積み重ねが大きな事故予防につながる。そして、その積み重ねをする立役者は管理者や経営者ではなく職員一人一人である。
日常のリスクに目を向ける習慣を身に付けるためには、その動機の1つとして評価制度があっても良いと思う。
管理職や経営者が口を酸っぱくして啓蒙することも大切だし、トップダウンで体制を作ることも必要だが、職員が気づきを報告するための「仕掛け」を作るのも上の役割ではないか。


最後に。

事故予防のための上記のような取り組みは、特に目新しい話ではない。すでに行っている事業所も結構ある。私もすぐに採用したかったが、その前に報告に上がったひやりはっとを放置せず、ちゃんと対策が機能しているか検証する体制を作ることに時間をかけていた。

その事例を振り返る体制もできつつあるので、ひやりはっとの報告体制を社内へ提案しようと思う。そこからがスタートだろう。リスク管理の必要性については共有されているので、評価指標の概案をまとめたら提案したい。
ひやりはっとの報告数とリスク低減やコスト削減効果といった総合的なメリットも提示したいが、これは少し時間がかかるだろう。ひとまず第一案を出すことでとっかかりを仕掛けたい。

インセンティブをどうするかに話が向いてしまいそうだが、この目的は介護現場や職場の見えないリスクを可能な限り表在化し、事故の不確実性を減らし、安全の確実性を高めることだ。副次的に職員の意欲を高める評価制度を作ることも視野に入れている。
すぐに全体的な体制にできるとも考えていないが、まずは理解が得られそうな他部署の管理者も巻き込んで徐々に構築していきたい。

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?