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退職願と退職届、それを受理するということについて人事の視点で考える

■ いつ仕事を辞めるかは、個人で決めてもいい?


働くことは個人の自由である。
どこで働くかを選ぶことも、個人の自由である。
何の仕事をするかを選ぶことも、個人の自由である。
今の仕事を辞めるかを決めることも、個人の自由である。

では、「いつ仕事を辞めるか」を決めることも個人の自由なのだろうか?

結論から言えば、「いつ仕事を辞めるか」も個人の自由で決めて良い。

ただし、そこには一定の法律を遵守したうえで、かつ社会人としての倫理観を捨てることができることが前提である。

なんだかトゲのある物言いであるが、何かしらの理由で今いる職場を辞めようかと考えている人のなかには、辞めることに浮足立って、個人的な主張をしてくることが少なくない。

「それだと職場が困る」と雇用する側である職場が言ったとしても、法律は労働者を守り、一方で企業には適切さを求める。そのような仕組みの社会なので、結局のところ労働者側の主張が優勢になってしまう。
となると、仕事をいつ辞めるかと決めることも、総合的に見ればその当人の自由・・・という見解になってしまう。

別におかしいとは思っていない。国に唾を吐いても仕方がないし、今のところ「そういうものだ」と思うしかないのだ。


■ 退職願と退職届


どんな立場の人であれ、雇用されている職場を辞めるということは可能でああるわけだが、とは言え、まずは職場へ退職の意思を示すことが必要だ。

そこで一般的には「退職願」を出すだろう。退職願は「このくらいの時期に仕事を辞めようと思っているのですが」という意思表示である。
一方、「退職届」というももあるが、これは相談的な意味合いではなく、強い意志をもった退職に向けた意思表示である。

ちなみに、人事も担っている立場として言わせていただくと、退職願も退職届も実質的には大きな違いはないと思っている。

もちろん、意思表示のレベルとして扱いも異なるのは分かるが、結局のところ退職する意思を示しているわけだから、最終的に引き留めることもできないと分かっているため、そういう意味でこの2つに大きな違いはないという認識をもっている。

なお、個人的にはこれまで退職希望日を伸ばす交渉もしたこともない。そういう意味からも退職願と退職届に違いを気にしたことはない。


■ 何をもって「受理した」とするのか?


どんな形にせよ、退職の意向を示された職場が「そうかぁ、分かりました」「これまでありがとうね、辞めるまでよろしくね」などと言えば、あとは円満に退職までの話し合いをしたり、退職手続きを進めることになる。

しかし、普通の職場はシフトや担当を割り振って成立させている。それを見直しすることになるため、その準備や手配にそれなりに時間を要する。そのような心情から多少の困った顔をしつつも、当人の希望する退職日を逆算した体制づくりを検討することになる。

とは言え、これから当人の現状の役割や立ち位置によっては、今後の検討にかなりな時間を要する事もある。ここであまり時間がかかり過ぎると、人によっては「退職願(退職届)を職場が受理したのに、辞めさせてもらえない!」などと揉めるケースがあると耳にする。

これはどちらの立場も理解できる。・・・が、ここで少しポイントのズレたことを言わせていただくと、退職願(退職届)を「受理した」という証明は難しい。

退職願(退職届)は何をもって職場が「受理した」とするのか?
職場が「退職について分かりました」と言ったら受理したとするのか、退職願(退職届)を職場が受け取れば受理したのか、文書的な取り交わしをもって受理したことになるのか分からない。

もちろん定義や解釈はあるが、これも結局は労働者の意向が優勢になる。
そもそも退職の意向を職場は阻害することはできない。となると、退職時期を定めてきた人に対して「受理できません」と職場は言えないし、そのような態度もできないことになるはずだ。

言ってしまえば、労働者側が「受理した」と言えば、職場が「受理した」という話になってしまう。だからこそ、私はこの手の話を持ち出される前に、とっとと今後の算段を立てるようにしている。


■ 退職願(退職届)の受理を主張する人への対応


ときどき、退職願(退職届)を出してきた職員から、受理したか否かについて次のような主張を受けることがある。

「先日、退職願を出しましたが、職場が受け取ったのだから受理したってことですよね。だから✕月✕日で辞めますからね!」

・・・といった具合だ。
そのような場合、私は「はい、あの日に受理しましたよ。残りの勤務もよろしくお願いしますね」と言って終わる。

下手に「受理したという意味ではない」と言ったりすると、この手の人は今度は「労働基準監督署に行く!」「訴える!!」などと言いかねないからだ。あるいは、まだ働いている職員に職場の悪口を言いまわることもある。

何だか心配しすぎと思われるかもしれないが、実際に辞める間際になって職場の悪口を言いまわっていた人がいた。そして、その人の言い回しによって特に関係ない1名の職員が不安を抱いて辞めたこともあった。

保守的に見られるかもしれないが、このような経験もあって、この手の主張をする人への対策としては、受理したかうんぬんを言ってきたら、期日通りに辞めてもらったほうが吉であると思っている。


――― と、何だか愚痴っぽい話になってしまったが、別に退職時にあーだこーだと言ってくる人に文句を言いたいわけではない。
辞める人は色々と考えて退職の意向を提示しているわけだし、それなりの理由があって慣れた職場を離れる人だっている。

一方、退職願を受理したかどうかといった突っ込みどころをもって、今まで積もってきた不満をぶつけたいという気持ちもあるのかもしれない。
実際そういう人はいたし、それまで真面目に勤務してきた人や明るく振る舞っていた人が「自分はもっと給料をもらえたはずだから、辞める前にその分を貰いたい」といった主張をされたこともある。

別にそのような言動をされても、反論することもせずに1つ1つ説明して終わる。アドバイザーの労務士さんを交えては話し合いをすることもある。
辞める時に「こういうことを言う人だったんだ」と落胆することはあれど、それも事業を続けていくなかであることだと割り切っている。

それでも、一緒に働いてきた仲間として、なるべく不満や不安などの炎を鎮火して、少しでも穏やかな気持ちで辞めてもらいたいと思っている。

これから退職しようと考える人がいたならば、なるべく職場と敵対することなく、穏やかな気持ちで職場を離れられることができることを祈っている。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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