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【読書メモ】政治的に無価値なキミたちへ

Kindle Unlimited で読めたので読んでみました。勢いのあった某ハッシュタグのタイミングと言い、主義や差別、政治、生存権、刑罰など普段目を背けたくなるような話題に対して、筆者の言葉は絶えず辛辣です。しかし、個人的には納得・理解できるものが多かったです。

政治的に無価値とはどういうことなのか、自分自身多くのことをまだまだ知らなかった上に、既存の考え方も改めさせられた一冊でした。仕方がないと嘆いてばかりではいけないという言葉が響きました。

ざっくりまとめ

個人的に印象に残ったところ。引用多すぎてかなり抜粋しました。

・4つのイデオロギー(リバタリアン、リベラル、保守主義、共同体主義)があることを理解する。イデオロギーに正解はなく、これらのせめぎあいで世界はつくられていく
・日本が自由や人権、教育などに対してお金を使わない一方で、個人で必要となる費用の高さ(学費や弁護人依頼、供託金など)が随所で目につく
・日本は保守のイデオロギーの割合が多く、いろいろな制度や価値観において先進国の中でも特異な国となってしまっている(ように見える)
・日本では1票が与える政治への影響力が極めて低い、故に1票の政治的価値が低い
・理念を築き自分の政治的意思を多くの人に伝えて活動する必要がある
・大学に行く最大の意義は「世界を変える」こと、理念こそ世界を変えていく最大の武器

感想・メモ

日本は保守主義が多い傾向がある。自分はリベラルだった。政治的に中立な立場は存在せず4つのイデオロギーのどれが正解とかはない。常にどの国どの社会どの時代でもせめぎあっている。

日本の高等教育・大学教育へのお金の使わなさ(例えば奨学金予算)、教育を受ける側の費用の高さはかなり衝撃的だった。そうなっていることは知っていたが、グラフで表示されると改めて酷さがわかる。健康で文化的な生活を送る上で教育が最も重要であることは完全に同意。ただ、これを見て大学へ行く意味がないとは思わないで欲しいと感じた。

日本学生支援機構の「奨学金」とは、国際社会においては「奨学金」とは読んではいけないもの(給付ではなく貸与であるため)。先進国では学費を安くするだけではなく、学生に奨学金を支払っている国もある。これは学生が本来の取り組むべき学業に専念できるようにするため。

教育予算額は対GDP比率が先進国の中でもかなり低くく、その割に学費が高い。これはお金がない人は教育を満足に受けられないことを示している。高校・大学で多額の費用が必要であるというところから、そのまま低い賃金水準の労働者が増えてしまう悪循環ができてしまっている。

日本の最低賃金は、先進国の中でも極めて劣悪な水準にあり、サービス残業についてもまだまだ根強く残っている。有給休暇の消化率の低さも世界でトップクラス。海外では有給休暇とは別に病気休暇制度が普及しているが、日本では病気や怪我の場合に有給休暇を充てることが多い。また、フランスで夏休みは人権として確立している。労働の本質は苦痛(laborerとworkerとplayerの違いが興味深い)。

失業に対する配慮も先進国の中でかなり遅れをとっている。日本では失業が死に直結していて常に労働をしなければいけない社会であるため、サービス残業や低賃金などが横行している。日本の労働はひとつ闇を見つけたら、その奥にもっと深い闇がある。労働者の生活環境と労働環境を向上させるためのILO条約189のうち、日本はわずか48しか批准していないシャラップ事件は特にひどい(というより情けないという感情の方が強い)。

資本主義国家における自由とは人権ではなく商品であり、自由を買う必要がある。日本では社会主義=良くないというイメージがあるが、先進国では資本主義と社会主義はせめぎ合っている。人権はその時代によって意味が拡張されてきた。失業への認識と同じように、貧困に対する認識も非常に厳しいものがある(政府は貧困層を救うべきかどうかに「救うべき」と回答した率はわずか15%で対象国の中で最低)。政治的事項とすべきものが徹底的に個人事項に置き換えられてしまっている。SNSを見ていると個人を攻撃している場面をみることがあるが、こういうところも関係していそうな気がする。

同性婚に関する法案が国会に提出されたことすらないのは、OECD加盟国の中で日本、韓国、トルコの3カ国だけ。まだまだ審議中の国も多いが、大半は何かしら国で動きがある。マリタルレイプは「夫婦間におけるレイプや強制猥褻行為」のことであり、OECD加盟国の大半が原則違法行為となっている。しかし、日本は処罰対象になっておらず、本当に性犯罪が少ないと言えるかどうかが疑問である。フランスがPACSという新しいパートナーシップの仕組みを導入している(日本語約は「民事連帯契約」で異性・同性問わず成人2名が共同生活を送るための契約制度)。興味深いことにフランスの結婚制度は複雑であり、年々既存の結構制度を利用する率は減っているのに対して、PACSを利用する率は上がってきている。近い内フランスから結婚という概念が消えてなくなるかもしれない。

母体保護法は労働基準法や売春防止法とともにLaw full of loopholes(抜け穴の多い法律)になってしまっている。日本では中絶の扱いは「原則違法だが例外的に違法にならない」という形になっているが、中絶が違法になっている国はどちらかというと少ない。ただしアメリカではプロチョイス派プロライフ派という世論の対立がある。

アニマルライツは「動物にも尊厳があり、基本的検権利を保証すべき」というイデオロギーでヒトによる動物の搾取を許容しない。一方で、アニマルウェルフェアは「あくまでヒトの生活にとって必要最低限のレベルに抑えるべき」というイデオロギーで動物福祉と訳される。欧米ではこの2つが思想的に対立して論争になっている。

国際人権規約にも明記されている推定無罪のルールがある。これは本来裁判官が守るべきルール(無罪である余地があるのであれば有罪にしてはいけない)だが、民間人(マスコミやメディアも含めて)も理解するべきルール。昨今の報道やSNSを見ているとなかなか難しい。

絶望の国の節を読んでからlecture11を読むこと。

1票の価値自分たちには参政権が与えられているが、その正体は投票用紙。衆議院議員1人を豪うために必要なのは、およそ8〜9万票なので一人ひとりの1票は8万分の1に過ぎない。一方で10万人あたりの下院議員数を見ると、例えばフィンランドが100.0としたときに日本はわずか9.7になってしまう。世界的に見ても人口に対する政治家の数が非常に少ない。なので、日本では1票が政治に与える影範囲がとても狭くイデオロギーが限られてしまう。だからといって投票することに意味がないわけではない。日本が政治的に動きが遅く、保守的で変わらない要因で一番大きいと感じた。なんとなく知ってはいたが政治家の数がかなり少ない。日本の政治家に対する信頼・信用はあまり高くないイメージ。

仮にもっと政治家が日本にいたら様々な施策や制度に対してもっと議論が進むだろうし、より多く社会への改善や取り組みが行われるはず。しかし供託金の高さや保守的なイデオロギー中心の世界であるため、参入障壁が高い。日本は果たして自分自身が政治的行動を起こすほどの価値がある国なのかどうか。今一度考えてみる。

終身旅行者というコンセプトがある。

国籍登録国・・・パスポートの価値が高い国(先進国)
住所登録国・・・税金の比較的安い国
経済活動国・・・収入をメインで得る国(法人税率の低い国)
資産運用国・・・カネを運用する国(キャピタルゲイン課税率の低い国)
消費活動国・・・自分が体験したいものが豊富にある国

ぼくらが選択すべきや政治家や政党ではなく生き方なのではないか?国民や国家の意味が改めて問われていると感じた。

大学生は知識と時間を十分に持っている社会集団であるゆえ、政治運動に積極的に参加して欲しい。社会・世界をより良くすることで自分たち自身にとって得るものもとても多いはず。大学へ行く意義とは「世界を変える」こと。経済的社会的事情によって、「大学へ行ける人」と「大学に行けない人」の区別を生み出しては行けない。理念を持ち共感できる人たちと世界を変えていく

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