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人事のためのキャリアコンサル_003:転職エージェントから事業会社の人事へのキャリアチェンジ

「人事のためのキャリアコンサル」とは、"人事"プロフェッショナルの方々のキャリア支援を目的に、架空の人事経験者のプロフィールを元に、「もし私だったらこんなアドバイスをする」をまとめたコンテンツです。


キャリアサマリ:

  • 28歳、男性

  • 日本語ネイティブ、英語ビジネス上級レベル

  • 新卒で大手人材紹介会社でRA職(3年)
    → ブティック系人材紹介会社2社で両面型コンサルタント(合計3年)

  • 現在年収1,000万円、希望年収1,000万円以上

課題:

  • 転職エージェントから人事にキャリアチェンジをする場合、どのような可能性があるか?

  • 人事としてファーストキャリアはどのような観点で選ぶべきか?

  • 年収をキープすることは可能か?

キャリアアドバイス:

転職エージェントから人事にキャリアチェンジをする場合、どのような可能性があるか?

国内には「転職エージェント(有料職業紹介事業所)」は19,355事業所(※)あります。(※)厚生労働省 平成 28 年度職業紹介事業報告書の集計結果より

近年「ダイレクトソーシング」や「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれるスキルが注目されてきており、実際に「ダイレクトソーシング経験 尚可」が募集要件に含まれている「採用担当/リクルーター」のJob Descriptionをいただく機会が増えてきています。

各企業の組織構造や役割分担などによっても異なりますが、転職エージェントは、スカウトサービス、Linkedin等のSNS、リファーラル(人からの紹介)、採用イベントの企画・運営、ネットワーキングイベントの参加などを駆使して、日々クライアントからの要望にマッチする候補者を探し続けています。これが「ダイレクトソーシング」です。転職エージェントとして実績を挙げた方が、ご自身の経験を活かして事業会社の採用担当にキャリアチェンジするケースは、事業会社側からのニーズの高まりもあってか最近は特にお見掛けします。

中途採用の原則は「経験者」を求めていること、また、企業からの「ダイレクトソーシング」ニーズの高まりから、転職エージェントの経験をお持ちである方を「採用担当/リクルーター」として採用するニーズが高まっています。

人事としてファーストキャリアはどのような観点で選ぶべきか?

現在転職エージェントをしている方から相談を頂くと、以下のように様々なニーズがあります。

  • 「採用のスペシャリストとしてキャリアアップしていきたい」

  • 「まずは強みを活かして採用担当として入社し、その後は人事領域の経験を広げていきたい」

  • 「強みである採用に加えて、それ以外の人事領域をカバーするポジションで働きたい」

  • 「採用以外の人事領域をカバーするポジションで働きたい」

  • 「採用をした後までをカバーをする業務(人材育成、リテンション等)に携わりたい」

  • 「数字を追う営業という仕事から離れたい」「安定した固定給を確保したい」「採用に限らず、営業としてキャリアアップしていきたい」等

次の職場に求めていること、思い描くキャリアは人それぞれですし、最終的に実現できるかどうかは、個々人の意思の強さや努力によるところが最も大きいと、私は思っています。一方で、思い描くキャリアが、転職先で実現できるかどうかの「難易度」は会社によってまちまちで、入社前に推測できる要素/ヒントはあります。ファーストキャリアを選ぶ上で、私は以下の4つのポイントを事前に調べることをお勧めしています。

  1. 人事・採用チームの人数

  2. チームの組織構造/レポートライン

  3. 採用業務の職域

  4. 社内でのキャリアパス

これらは私個人のキャリアからの経験というよりも、クライアント企業からのヒアリングや転職希望者の退職背景など、今までお話を伺わせていただいた方々からの情報から、私が個人的にまとめたものです。

1.人事・採用チームの人数

  • 人事部には何名いるのか?

  • 採用チームには何名いるのか?

  • 他の人事チームにはそれぞれ何名いるのか?

2.チームの組織構造/レポートライン

  • 採用チーム以外に、どのような人事ファンクションのチームがあるか?

  • 採用チームと、その他の人事チームで、レポートラインが異なるか?

  • レポートラインは、採用マネージャーか、人事マネージャーか?

3.採用業務の職域

  • 採用チームでは、それぞれのスタッフがどのような役割を担っているか?

  • 自分が担当をするポジションは、採用プロセスの中のどこからどこまでをカバーするか?

4.社内でのキャリアパス

  • 人事責任者や上司が、そのポジションにどのようなキャリアパスを想定しているか?

  • ジョブローテーション制度があるか?

  • ジョブポスティング(社内公募)制度があるか?

  • 過去に社内異動の実績はあるか?

  • 離職率はどのくらいか?(オープンポジションが発生する頻度という観点)

「まずは強みを活かして採用担当として入社、その後は人事領域の経験を広げていきたい」というニーズの方を例に挙げてみましょう。その方が、以下のようなポジションに応募を検討している場合、思い描くキャリアを実現する「難易度」は高いでしょうか、低いでしょうか?


国内には採用担当は3名おり、うち1名の退職に伴うリプレイスメントのポジション(人事・採用チームの人数)。人事は、採用チームを含めて10名の組織で、本ポジションのレポートラインは、APAC Recruiting Manager(チームの組織構造/レポートライン)。3名の採用担当はそれぞれが担当の部門を持ち、Hiring Managerからの要件ヒアリング、JD作成、利用媒体・エージェント選定、ソーシング/スクリーニング、一次面接対応、オファー交渉、入社後のオンボーディングまで、採用プロセスを一貫して担当する(採用業務の職域)。社内には、ジョブローテーション制度や、ジョブポスティング制度はなく、退職率は非常に低い安定した職場環境。(社内でのキャリアパス


おそらくニーズを実現できる「難易度」は高いでしょう。逆に「採用のスペシャリストとしてキャリアアップしていきたい」という方にとっては、最適な職場だと思います。

そのため、「まずは強みを活かして採用担当として入社、その後は人事領域の経験を広げていきたい」というニーズの方に、上記のようなポジションをご紹介する際には、なるべく上記のポイントを伝えてご理解いただいたうえで、応募のご判断をしていただくようにします。

しかし、最終的には「入社してみないと分からない」、が答えです。誰にも分かりません。

どのシチュエーションにおける意思決定にも通じますが、事前に100%の情報を得た状態で意思決定ができる、ということはあり得ません。限られた情報の中で、現時点で自分が最適だと思う選択をするしかなく、意思決定が遅れれば機会そのものを逃してしまうことだってあります。

日々いろんな方の意思決定に寄り添っている転職エージェントの方ですら、自分自身のキャリアの意思決定ともなると、なかなか冷静な意思決定は難しいようです。事実からの推測ではなくて、願望からの思い込みになってしまっていることがあります。

逆に言えば、転職エージェントが介在する価値の一つは、単独では難しい冷静な意思決定をサポートするため、とも言えます。

年収をキープすることは可能か?

上述の通り、ダイレクトソーシングの経験を持つリクルーターのニーズは高まっているため、特に外資系企業であれば、メンバークラスでも1,000万円以上の求人は数多くあります。特に、エンジニア採用に強みを持つテックリクルーターという職種であれば、1,200-1,500万円くらいの求人もあります。

ただし、人材紹介会社と事業会社の人事では、給与体系が異なります。

人材紹介業は「営業職」で、売上に直結する仕事であるため、固定給<インセンティブの給与体系であることがほとんどです。(マーケティング力の強い大手人材会社は逆であることもしばしば)

一方で、事業会社の人事は、売上に間接的に寄与する仕事であるため、固定給がメインで、インセンティブの割合が少なかったり、そもそもインセンティブ制度がない、年俸制や業績賞与のみの給与体系の企業が多いです。

そのため、現在の給与の「インセンティブ」分を含めて、固定給としてキープしたいというニーズであれば、エントリーできるポジションは限られます。まずは、現職の固定給を維持することを最低限の目標とすることをおすすめします。

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