見出し画像

【Z世代全集】市場を支配するZ世代のトレンド「20選」

※注)
総文字数20,000字を超える内容となっています。
大きく4項目( ”SDGs”、”ネオ・デジタルネイティブ”、”マーケティング”、”ライフスタイル”)で分けていますので、必要な箇所だけ飛び飛びで読む方法をオススメします。

または、大小見出しで見やすく編集した以下の同じ記事を参照下さい 🙇‍♂️

⬛️ なぜZ世代を知るべきなのか

『Z世代の姿を追い続けねばならない』

デジタルとリアルが融和した2021年には、彼らZ世代(もしくはそれ以降の世代)にしか見えない地平線が存在すると思われてならない。
Z世代は、ミレニアル世代がギリギリの汚濁度を保って引き渡してくれたデジタル界や地球環境問題に今までの世代にはない全く新しい心持ちで対峙している。

彼らのそんな姿を追うことは、「SDGsを目指す新世界」に必要なニューリテラシーを発見し啓発することに直結している。しかしながら、Z世代のその価値に気が付いている人は、果たしてどれほどいるのだろうか。
『なんとなく目新しい世代だ』と思う人が多くを占めているように感じてならないがため、Z世代についての特徴や傾向、SDGsと関わりのある事象をオーバービューとしてまとめた【Z世代エクスプロージョン】Vol.1、2を作成してきた。
こうした世代を一括りにする試みに否定的な意見を持つことも起こり得るだろう。しかし、前提として私がZ世代に焦点を絞ったコンテンツを作成するのは既述の通り「Z世代は、デジタルとリアルが融和し地球共同体的指標としてSDGsが掲げられている2021年を牽引し得る存在」なのであり、その動向を追うことで、他世代にとってのニューリテラシー発見と啓発に帰するためである。

スクリーンショット 2021-05-05 17.15.43

若者マーケティング機関SHIBUYA109 lab所長 長田麻衣氏のTweetを援用し端的に述べれば、このZ世代エクスプロージョンは「Z世代の真価を理解する試み」だ。
『なんとなく目新しい世代だ』との印象が多いように感じられると記したが、その意識を改めZ世代を多層的に認知することで、2021年以降の世界でなすべきことをより強く認識できるだろう。

本題に戻るが、今回のVol.3では、”SDGs”、”ネオ・デジタルネイティブ”、”マーケティング”、”ライフスタイル”の4観点からZ世代に関わる事象や特徴をまとめている。なお、私自身のアーカイブ集としての側面も兼ねていることから、今回はやや私的な領域もカバーされていることを事前に断っておく。
では早速、ミレニアル世代と比較しつつZ世代の外観を見ていくところから始めていく。

⬛️ Z世代の概要とその背景

スクリーンショット 2021-05-05 17.56.26

'90年代後半に生まれたZ世代は、世相や経済に絶大な影響を及ぼした歴史的出来事が度重なるタイミングに幼少を過ごした。
それは同時に、デジタルテクノロジーの発達が高まりを見せた時でもあり、ミレニアル以前の世代と比較すればかつてないほどデジタルデバイスへの親しみを持つ。これが”ネオ・デジタルネイティブ”と呼ばれる所以である。

(ミレニアル世代もデジタルネイティブと呼ばれることがあるが、正しくは先駆者的なニュアンスの強い”デジタル・パイオニア”である。これと区別するため、ここではネオ・デジタルネイティブと表している。)

スクリーンショット 2021-05-05 18.27.46

上図からは、2016年の調査時点でも高校生の97.6%がスマホを所有していることがわかる。また2020年MMD研究所の発表から「小学生の4割が早くもスマホを所有している」こともわかり、年々と若年層への完全な普及とスマホデビュー早期化が進んでいることがうかがえる。
スマホをデジタルへダイブするツールと捉えれば「スマホデビュー=デジタル参与」と位置付けることができ、リアルのみの生活から、デジタルが溶け込んだOMOOnline Marged with Offline)上での生活にシフトしているといえよう。

スクリーンショット 2021-05-05 18.09.19

株式会社プレストック代表取締役 田中あづみ氏監修記事の上図を参考にしても、Z世代がネオ・デジタルパイオニアであることがうかがえるだろう。
ここでさらに触れておきたいのは、Z世代はとりわけソーシャルメディアの使用に長け(ソーシャルネイティブ)、各媒体をインタレストやコミュニティなどと目的別に使い分けることができると特徴づけられている。

さらに、地球全体で持続可能な社会を展開できるよう2015年の国連サミットで加盟国が制定した取り決め"SDGs"についても触れておかなくてはならない。

画像5

グレタ・トゥーンベリ氏のようなZ世代アクティビストの存在や、昨年コロナ禍で盛り上がりを見せたBLM運動など、SDGsの17指標に連関し持続可能な社会を目指すソーシャルアクトを目の当たりにしている。(もしくはすでに参画している)
そうした側面から、Z世代はSDGsへの意識が一際高いことでも知られている。

ここまでで大まかなZ世代の特徴とその背景を見てきたが、
次項以降は”SDGs”、”ネオ・デジタルネイティブ”、”マーケティング”、”ライフスタイル”の4観点からオーバービューとして具体的な特徴を示していく。

🟥 SDGsとZ世代

📍持続可能な社会

SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)を耳にし、まずもって思い浮かぶものを挙げれば、環境保全や人種・性差の是正などだろうか。そうした目的のもと実施されるキャンペーンやデモ、SNSでの啓発などの"実質的な行動"はソーシャルアクトと呼ばれる。

そこへZ世代という要素をかけあわせれば、グレタ・トゥーンベリ氏 や ソーシャルメディアを中心として爆発的な広がりを見せたBlack Lives Matter運動、外国人実習生への人権侵害防止啓発など、彼らの存在なくしては語れないソーシャルアクトが数多く見られることだろう。

スクリーンショット 2021-05-07 0.44.14

日本経済新聞(2020年10月10日刊行)では、コロナ禍の給付金を寄付に向けた20代が最多だったことを報じており、また「多様な社会運動と労働組合に関する意識調査」ではZ世代の7割デジタル上での参画も含めたソーシャルアクトに参加したい』と意欲を示している。
国家や経済、人種など国境横断的に生じたさまざまな歴史的出来事を生まれながらに経験。デジタルの力で「意図せずとも情報に触れられる環境」にも助けられ、彼らZ世代は国境横断的かつ地球共同体的にソーシャルアクトへ向かう傾向にあるといえる。

📍エシカル思考

以上のようなソーシャルアクトの根底にあるのが、エシカル思考と呼ばれる考えだ。

倫理を示す”エシカル”は「人として守るべき善、"道徳"」を意味する。
エシカル思考とは地域の活性化や雇用などから人・社会・環境に配慮した行動思考を指し、いわばSDGsの持続可能な社会を見据え"現代"で守られるべき善を意識した思考だ。
「エシカルに考え(エシカル思考)、社会の未来のためアクションを取る(ソーシャルアクト)」という思考〜行動フローがイメージできるように、エシカル思考はソーシャルアクトの土台であり、両者はSDGsそれ自体と「実行動を支える思考背景」という密な関わり方を呈している。

エシカル思考〜ソーシャルアクト〜SGDs

エシカルネイティブとも呼ばれるZ世代の特筆に値する事例を取り上げるならば、ユーグレナ初代CFO(最高未来責任者)となった現役大学生小澤 杏子氏の存在を真っ先に挙げておきたい。
また、一般社団法人炭素回収技術研究機構 代表理事・機構長の村木 風海 氏、草ストローの輸入販売を行う合同会社HAYAMIの代表社員 大久保 夏斗 氏、鹿廃棄問題解決に向かいオリジナルブランドDeervery(ディアベリー)を立ち上げた渡辺 洋平 氏。そして、SDGsを『誰一人取り残さない世界を作るゲーム』と語る国内最大級の中高生SDGs団体Sustainable Gameを率いる山口由人氏も欠かせない存在だ。

また余談だが、持続可能な社会を目指すエシカル思考を元とした”ヴィーガン市場”については、近年食品のみならずコスメや美容品などのヴィーガン・ビューティ、ファッションでのヴィーガン・ファッションなどが欧米Z世代を中心にじわじわと人気を高めている。動物性物質を用いないヴィーガンのみならず、残虐な動物実験を経ない製品であるクルエルティ・フリーも、エシカル思考が元となる事象であることも記しておく。

📍「LGBTQ+」への理解

今年3月、北海道の同性カップルらが「同性婚を認めないのは違憲」とし訴訟を起こした。札幌地裁では、「法の元の平等に反する」という決断が下され、法を司る日本のいち裁判所でようやく『同性間の婚姻は認められるべきだ』と判断されたのだ。
このように時代の流れとしても異性愛をはじめとするLGBTQ+への理解は深まりつつある。ジェンダー平等はSDGs5番目に制定された取り決めでもあり、そこへの知見を備えたZ世代は、今までの世代と比較すればかつてないほどにLGBTQ+に対しリベラル思考を持っている。

事実、Z世代の6人に1人がヘテロセクシャル以外のLGBTQ+を自認しており、かつそれを両親にアウティングできるZ世代が増加していることもわかっている。

④LGBTQ+寛容度急増

また、Z世代を含む20代に対し同性愛への寛容度を調査した「世界価値観調査:2017-2020」では、国内20代の場合には10点満点のうち自己評定平均8.58点を示している。この年齢区分で言えば、日本の若者層の同性愛受け入れの姿勢はかなり前向きであることがうかがえる。

ただし、"寛容さ"という表現からLGBTQ+全般への理解を示すものだとは断定できず、未だ蔓延る「ヘテロセクシャル一等のジェンダーヒエラルキー」を感じざるを得ない。このことは一般社団法人fair代表理事 松岡宗嗣氏の「LGBT理解増進法案」に対するコメントからも窺え得る。

かなりミクロな事例ではあるが、
Xジェンダー(男女二元論に収めないセクシャリティ。そうしたニュアンスではアセクシャルやオブジェクタムセクシュアル、フィクトセクシャル等もXジェンダーに包含される)の一途を辿るファーリーについても言及しておきたい。

画像7

ファーリーとは日本でいうところの”ケモナー”だが、個人的なイメージとして当方は二次元色が強くイコールではない。
ファーソナ(ファーリーの人格)を使い分けることで自身のアイデンティティとは異なるセクシャリティ/人格を表出することができ、上図で挙げたファーリーオーナーであるGrinsomeは、ファーソナとしてAozoraとSleepy、Grinの3つの人格を持つ。(詳しくはGrinsomeのこちらのTikTok動画を参照されたい)

特筆すべきは、ファーリーコミュニティメンバーの多くがZ世代だということだ。出例したGrinsomeも、22歳の現役大学生ファーリー・インフルエンサーである。冒頭でミクロな事例と断ったが、ここから、既述したZ世代のLGBTQ+理解と多様性思考の深淵を垣間見ることができよう。

📍Z世代の「働き方」

持続可能が強調されるSDGsでは、消費行動やLGBTQ+、貧富格差是正、教育普及などにのみ注目されがちだ。
しかし、SDGsの第8項目「働き方と経済成長」にあるように、経済の持続可能性を高めるためにも個々人の"働き方"にも触れられている。

コロナ禍拡大と比例し拡大されていったDX(デジタルトランスフォーメーション)施策により、今や東京圏内でのリモートワーク実施率は28%にまで上る。また同時期には、大学をはじめとする教育機関でもリモート授業が実際されており、Z世代がリモートネイティブと呼ばれる所以となっている。

スクリーンショット 2021-05-07 0.00.35

そうした急激に転化した"ニューノーマル"に対しても、存外Z世代をはじめとする若者層(と女性)はポジティブな思考を持つ傾向にある、と SIGNING Covid-19 Social Impact Report から分かっている。

そこでは、社会が若者たちに強いたニューノーマルが大きなトリガーとなっている。つまり、ニューノーマルが人々に与えた寂寞とした将来への不安と、既存労働スタイルの慣習に従うことへの危惧である。
この反動によってリモートワークや副業など、既存慣習を脱した"ニューノーマル企業"の登場に希望を寄せることに繋がった。結果、Z世代が就職先に求める条件として「リモートワーク可能」「副業可能」「多様性の理解」「上下の軋轢のなさ」などを優先的に挙げる傾向が生じた。
また、クリエイティブ支援やEC機能、ロジスティクスプラットフォームの発達により一層起業のハードルも下がり、後述するZ世代のDIYメンタリティーを刺激。従来の「パッションに溢れた起業」から「働き方の1つとしての起業」と選択も増加し、自由な働き方ステレオタイプに囚われた終身雇用スタイルはZ世代を境に完全に崩壊すると断言できるだろう。

🟥 ネオ・デジタルネイティブとしてのZ世代

📍ソーシャルメディアとZ世代の関わり

続いて、本記事2つ目の項目である”ネオ・デジタルネイティブ”を主軸にオーバービューを進めていきたい。
冒頭でZ世代の概観を見た時「スマホデビューの早さ=デジタル参与の早さ」と解釈したように、Z世代がデジタル界へダイブするスピードに比例しテクノロジーへのかつてない"自然な親しみ"を持っていることが彼らネオ・デジタルネイティブの大きな特徴だ。

※注)
ここでのソーシャルメディアとは、メッセージ機能や不特定多数とのコミュニケーション、画像や音声、EC、動画配信などの複合的なメディア機能をも兼ね揃えた主要SNSに限定されず、上述したいずれかの機能に特化したYoutubeやClubhouse、TikTok、Tinderなどをも包含したメディアを指す。

デジタル・パイオニアと呼ばれるミレニアル世代も先駆者的にデジタル環境に親しみつつ育ってきたことに変わりはない。しかし、彼らの時点では現在爆発的な広がりを見せている主要SNS(LINE, Twitter, Facebook, Instagarm, TikTok)の飛躍は、FacebookとTwitterを除けばほとんど確認されない。
1981~1995年の間に誕生したミレニアル世代の中央値年齢層(2021年時点で満34歳)が社会進出を果たした頃を想定すると、その近辺2011年のSNS利用状況は以下のようになっている。

2011年_SNSリヨ状況

当時Facebookは好調にユーザー数を増やしていたものの、2020年時点のHootsuiteのレポートでは国内の利用率は30%と報告され10年間でわずか9ポイントの増加幅に収まっている。また10代のZ世代間でのFacebook利用率は全体以上の落ち込みを見せ30%を下回る調査も確認できる。2006年に誕生したTwitterは、国民性とマッチし現在もZ世代を含めかなりの利用率を誇るが、2017年データ(月間アクティブユーザー数4500万)以降更新の発表は見られない。InstagramやLINEに至っては登場は2010年からだった。

以上のようなデータから、ひとえに"デジタルネイティブ"といっても、Z世代とミレニアル世代とではソーシャルメディアの普及状況とメインプラットフォームに大きな違いがあることがわかる。
新たに登場したInstagramやTikTok、既存のプラットフォームを指してもYoutubeの"Youtubeショート"やTwitterの"Space"など新たな機能が日々アップデートされており、「より複雑なメディアリテラシー」を備えていると窺えるZ世代こそ、"ネオ"の冠を付すに相応しいと判断できる。

📍ソーシャルメディアのオートレコメンド機能

Z世代は隣り合った世代ミレニアルとはかけ離れた位置にいるデジタルネイティブであることが分かった。
ググるよりも"タグる"(Instagramのハッシュタグで検索すること)傾向にあったり、SNS上での他者とのコミュニケーションに大きな抵抗感を持たない点、複数アカウントを駆使し興味関心と所属コミュニティごとにアカウントを使い分ける点などが挙げられるようにソーシャルメディアを縦横無尽に駆使する。
そのと背景してはZ世代がソーシャルネイティブであることに尽きるのだが、加えSNSの「レコメンド機能の発達」と彼らの「集中力の欠如」が挙げられる。後者については別項で後述するため、ここではレコメンド機能について触れていく。

画像12

まずあなたは、Instagramのストーリーズやイムラインに並ぶ投稿、そこへのコメントがどのような順で並べられているかご存知だろうか?
タイムラインを遡って確認してみれば早いが、投稿時間を上から順に見ていくと「必ずしも時系列に並べられているわけではない」ことに気がつくだろう。(それはコメント欄も同様である)
これらは、あなたが日頃Instagram上で頻繁に閲覧したりいいね・コメントを付与するユーザー・投稿コンテンツの傾向をもとに、最もあなたが関心をもつであろう順に配置されている。(フィードのみでいえばTwitterもそうであるが、こちらは"コンテンツ設定"から任意に変更が可能だ)

Amazonや楽天市場、Youtube、Netflix、Spotifyでも回遊履歴によって「あなたへのおすすめ」が表示されるように、こうしたレコメンド機能はなにもInstagramに限ったことではない。ましてや、10~20代に絶大な人気を誇るTikTokではFYPFor Your Page)がメインフィード欄となっており、現れる投稿全てがレコメンド機能に基づいている。
ミレニアルが悩まされた"LINE疲れ"などといったプレッシャーは感じにくい世代ではあるものの、ソーシャルメディアの巧みなオートレコメンドによって泥沼にいるかのように回遊を続けてしまう。

スクリーンショット 2021-05-08 19.28.42

令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書概要」を参考にしても、10〜20代の利用時間が突出していることがわかるだろう。以下の「10代女性のSNS利用実態(memedays)」を見ても、女性に限定されてはいるが利用目的の2位には『暇つぶし』がランクインしている。

スクリーンショット 2021-05-08 19.36.27

一方、1位『情報収集』や3位『推しの応援』とその他のユニークな結果もみられ、
とりわけ"推し"(推しメンバーを表す"推しメン"がさらに短縮化された表現)については2010年代頃のミレニアルへの調査ではあまり見られない利用目的でもあり特筆に値する。
(推しとZ世代の関わりをまとめた記事は、筆者執筆の以下2記事を参照されたい)

ソーシャルメディの利用は、ソーシャルアクトに包含されるクリックティビズム(“参加”や“支援する”などのアイコンをクリックし、デスクトップ/モバイル上からデジタル経由で参与すること)にも繋がり、参加のハードルを一段と下げてくれる側面もある。またソーシャルメディア上のコンテンツにエンゲージメントを付与し自身の意見を醸成されたりと、数多くのメリットがあることも理解しておくべきだろう。

📍Z世代の"AI読み"

国立情報学研究所の新井紀子教授の見解によれば、中高生を含む近年の日本人には"AI読み"の傾向が際立っているという。

AI読みは、文章の"機能語"(『……のうち』『……の時』『……以外』など)をスキップしてしまうAI(人工知能; Google 音声検索やアレクサなどにみる)特有の読み方だ。上記記事では以下のような例題を設置していたが、中高校生の回答率が3割以下と極めて低く機能語の認識不足を指摘せざるを得ない材料となっている。

画像掲載_AI読み

もとより現代人の多くが所持するスマートフォンは文字媒体の表示に優れているとは言えず、もっぱら動画・静止画の視認性が高い。加え、脳に伝わる情報の約90%は視覚的情報で、写真や動画などのビジュアル情報はテキスト情報よりも約6万倍早い処理速度を誇るという背景も相まり、上記の設問への正答率が低かった中高生にInstagarmやTikTokなどの写真・動画中心のソーシャルメディアが人気なのも一定の相関関係があると窺える。

📍Z世代に特化されたソーシャルメディア

ソーシャルメディアに対してかなりの可処分時間を持つZ世代に対して、
「彼ら専用のソーシャルメディア」が生まれてももはやさして驚くことではないだろう。
事実、中国トップインターネットメディアの一つである36Krから登場したZ世代に絶大な人気誇る感情知能型SNSアプリSoulは、2019年に日本にも上陸。Tinderのようなマッチング機能を備え、"いいね"を実装しないフランス初のティーンのためのSNSアプリYubo、Q&A形式でInstagramストーリーズのような仕様が目立つF3などなど、さまざまなZ世代向けソーシャルメディアが登場している。また近日巨額なシード資金を調達したTikTok型インターフェースのマッチングアプリSnackも若者向けの開発方指針を抱き続けている。

今回触れるのは、多くのZ世代ユーザーを抱えかつ国産ソーシャルメディアでもあるYay!パラレルだ。

スクリーンショット 2021-05-08 20.45.19

では先日のプレスリリースで登録ユーザー数3000万人を突破、Z世代を含む20代ユーザーが85%を占めていると発表があったばかりだ。「国内最大級の雑談通話アプリ」を謳い、興味関心から成る"サークル機能"を活用でよりクローズな関係性を構築できる。
個人間のチャット機能も実装されているが、ガイドラインに反すトラブルを避けるべく年齢差によってはチャットができないよう厳格な監視体制が敷かれている。他ユーザーからの通報を複数回に渡って受けガイドラインに違反した場合はプロフィールが"ゴミ虫くん"に変更されるなど、その徹底ぶりがうかがえる。

スクリーンショット 2021-05-08 20.40.26

パラレルでも同様に25歳以下の若年ユーザーが70%を占めており、コロナ禍で急激なユーザー数増加を達成している。
メインコンセプトとして『友達とオンラインのたまり場をつくろう』を掲げていて、Zoom飲み会のように「決まった時間に集まる」オンラインに拘束されたスタンスではなくまさしくこのプラットフォームが"たまり場"、つまり「いつ集まってもいいし、集まっても何もしなくてもいい、したければすればいい」場所なのだ。
基本的なチャット・通話機能実装はもちろんのこと、画面共有やミニゲームなど"何かする時”のための機能が充実してる点が特徴といえる。通話が開始されたタイミングやオンライン状況の把握など、効果的に"たまり場”へ向かえるための補助線も見逃せない。

🟥 マーケティングとZ世代

📍Z世代に向けた製品

高いソーシャルメディアへのリテラシーと可処分時間、爆発的な拡散力を備えたZ世代だが、とりわけ国内では人口層として多くはなく消費力も未だ乏しい。それにも関わらず、彼らは多数のブランド・市場から熱烈なアプローチを受けている。

上述したソーシャルメディア市場のほか、アパレルやコスメ、ガジェット、ブティックなど、その市場展開は数知れない。加え、Z世代自身が事業者となり自身の世代(=Z世代)に向けた製品を開発するケースも見られらる。
ここでは、2020年から現在までに確認できたZ世代をターゲットとした製品を紹介する。

【メイク】NARS|ファンデーション

スクリーンショット 2021-05-09 18.20.56

若年期のため油分の分泌が多く、モバイル端末のブルーライトを浴びることの多いZ世代に向け昨年10月にプレローンチされた化粧品ブランドNARSのファンデーション。
SDGs的価値の訴求(クルエルティフリーや環境汚染物質排出を抑えた開発など)ではなく、Z世代の特質を捉えた機能的価値側面の強い製品だ。

【ファッション】LIT DEPARTMENT|D2Cブランド

スクリーンショット 2021-05-09 19.20.17

1997年生まれのZ世代YouTuber古川優香氏が立ち上げたD2Cファッションブランド。SGDsへの理解などからクロスバイ(メンズ/レディースなど性別を気にしない購買)を一般的に捉えるZ世代をターゲットとし、ユニセックスなラインナップを展開している。

【デイリーアイテム】大王製紙|生理用ナプキン

スクリーンショット 2021-05-09 19.11.26

生理用ナプキン「エリス(elis)」は、 Z世代を含む10~20代前半の女性が好む香りを東北大学 坂井教授の指導のもと開発。またトレンドにも敏感な世代傾向にも考慮し、パッケージカラーにも可愛らしさがプラスされている。

【美容】パナソニック|電動シェーバー

スクリーンショット 2021-05-09 18.23.39

『やっているけど、そう見えない自然さ』を見せる10代Z世代に向けた、ちょっとしたうぶ毛やヒゲ、すね毛を剃ることのできる電動シェーバー。
従来の長方形のごつごつとした印象の電動シェーバーとは一線を画すデザインで、母親や友人など身近な存在のUGC(口コミ)経由さえるマーケティング施策も注目に値する。

【ガジェット】NEC|ノートパソコン

スクリーンショット 2021-05-09 18.30.04

綿密なZ世代のペルソナ構築を踏まえた、Z世代と共同開発されたノートパソコン。モバイルファーストが説かれる昨今、とりわけモバイル利用の多いZ世代に向け"スマホライク"を意識した特徴を備える。

【自動車】東風ホンダ|新型「ライフ」

スクリーンショット 2021-05-09 18.36.51

ホンダの中国合弁会社 東風ホンダが「武漢オートショー2020」で公開した新型「ライフ」。
キュートなスタイリングや使い勝手、乗り心地の良さを特徴として備え、中国のZ世代が求める価値観を強く反映した製品だ。

【アプリ】ふくおかフィナンシャルグループ|デジタルバンクアプリ

スクリーンショット 2021-05-09 18.52.40

目下開発中である、Z世代を含むデジタルネイティブのためのデジタルバンクアプリ「みんなの銀行」。
著しい"銀行離れ"がおき、デジタルバンク利用が飛躍的に伸長する現状に鑑み、とりわけデジタルへ親みのあるミレニアル・Z世代をターゲットに『お金の世界のSNS』を目指している。2021年5月下旬ローンチ予定だ。

さて、ここまで7つの製品(一部国外)を紹介したが、これらはあくまで一例にしか過ぎない。グローバルで見てみればZ世代をターゲットとした製品は山ほど存在する。
イギリスのZ世代をターゲットにしたスポーツ飲料ブランドSWEYや、大学を卒業し就業まもないZ世代のため、クレジットカード申請や保険、給料交渉などのライフスタイルプランニングを集約し『大人であることを1カ所で定義する場所』を目指すアメリカのスタートアップRealworldは、2021年5月にモバイルアプリをローンチ予定だ。また仏ラグジュアリーファッションブランドBa&shは、Z世代向けにスタイリッシュなスニーカーを製品リストに追加している。

📍Z世代の消費行動

中国伝媒大学文化産業管理学院党総支の朱敏副書記はこちらの記事で、市場横断的に消費ターゲットとされ『市場を支配する』とまでいわれるZ世代の価値と威力を次のように形容している。

(Z世代の文化消費の価値と威力がもたらすのは)... 内需を刺激し、経済の質の高い発展をサポートできるだけでなく、ハイクオリティの文化的製品の世界進出を推進する ...

単なる"情報拡散源"や"次なる消費者"と認識されているのではなく、「文化と経済の発展に寄与する起爆剤的存在」と見ることができるだろう。
ここでは、そうしたZ世代の消費行動とコンバージョンに至るまでのカスタマージャーニーに関連する特徴的な事象を紹介していく。

最初に挙げられる点としては、デジタルネイティブとしての側面が際立って見られる“ウェブルーミング”だろう。
EC上でのAR試着や至るメディアから得られる口コミなどから、ウェブ上で得られる製品情報は「リアルとは異なる密度の情報」を獲得できる。そうしたウェブベースでの知識を持って、実店舗で購入に至るスタイルがウェブルーミングだ。(反対に、「実店舗;リアル → オンライン;EC」の購入フローは"ショールーミング"と呼ばれる)
こうした、オンライン - オフライン間を自由に行き来しコンバージョンに至るオムニショッパーこそがZ世代の消費の実態だ。

画像24

また、既述のエシカル思考と関わりのある領域だが、"REコマース"もZ世代の特徴的な消費行動の1つだ。
メルカリの利用が目立つ近年、一度購入したユーズド品を再販・買取したりレンタルで借り入れるサービス全般を指すREコマース市場はコロナ禍を経てさらなる高まりを見せている。とりわけ製品の持続可能な消費にも繋がることから、SDGsに関心を寄せ節約志向の傾向にあるZ世代・ミレニアル世代を中心としている。

そして最後に挙げるのは、"CXCustomer Experience)"の充足だ。
全世代的に、販売店の店員と1度も顔を合わさずデジタル上で製品のリサーチから購入にまで至るのはさほど珍しいことではあるまい。しかしそれがゆえに、返品手続きや商品交換など製品購入後のトラブルサポートをもデジタル上でストレスレスに完了させられるかは、顧客満足度を引き揚げるのに欠かせないキーポイントとなる。
(...とある銀行口座を開設した筆者は、申請書類に不備がありその旨を郵送で伝えられた時、衝撃と伴にとてつもない煩雑さを覚えた...)

画像25

ある種ECが「オウンドメディア化・アーンドメディア化」されている昨今、製品提供元のカスタマーサポートの対応状況はECサイト上の口コミやSNSでサーチすれば簡単に把握できる情報だ。それがソーシャルネイティブであるZ世代の手にかかれば、いとも簡単に購入後のCXのあるようが暴かれるだろう。
2020年5月総務省による「家計消費状況調査」ではネットショッピングの項目で全世帯の過半数が利用していることがわかっている。この状況から、この時代にオンラインショッピングを展開するのならZ世代はもちろん全世代のCX充足は欠かせないポイントと言える。

📍Z世代の調査媒体

デジタルへのかつてない親しみやSDGsに基づくエシカル思考など、
彼らを取り囲むテクノロジーや情勢指針によりかつてない変容を遂げた全く新しい世代、Z世代。

その特徴がゆえに、彼ら専用に開発されたソーシャルメディアやブランドのメインターゲットとされることも少なくはなく、自ずとそのトレンドや消費傾向を調査するシンクタンクやメディアが多数現れることとなった。
ここではそうしたZ世代をテーマとしたリサーチャーをまとめている。

【リサーチ】Z総研

スクリーンショット 2021-05-13 0.29.08

国内初の「Z世代」を研究対象としたシンクタンク組織。
株式会社N.D.Promotionや株式会社ホワイトジョークなどの連携によって組まれた組織で、主にPR TIMESでのプレスリリースやnote、SNSで調査内容を発信。

【リサーチ】株式会社dot

スクリーンショット 2021-05-13 0.36.46

1996年生まれの現役Z世代が代表を務めるイノベーションチーム。
オウンドメディアとして"Z世代会議"を運営し、Z世代の声や意見をブランドへ反映させる施策も実施。グラフィックレコーディングが特徴の可愛らしいリサーチコンテンツからは、まさしくZ世代らしさを感じる。

【リサーチ】YNGpot.™

画像28

YNGpot.™(ヤングポット)はデジタルネイティブのマーケティング専門チーム。noteやプレスリリースにてZ世代を含むデジタルネイティブのトレンドや消費動向を導き出し、マーケティングソリューションの提案まで実施している。

【エンタメ系メディア】めっちゃKawaii TV

画像29

BuzzFeed Japan運営のTwitter番組(現在最新番組は3ヶ月前となっている)。Periscopeを活用し配信しており主にメイクやファッションコンテンツが主で、MCにはりゅうちぇる氏とAKB48 横山由依氏を起用。

【エンタメ系メディア】超十代チャンネル

画像30

Youtubeチャンネルにて『今をときめく10代達が様々な企画に挑戦しながら楽しい動画を配信』している。超十代MEDIAではファッションや恋愛、メイク、イベント情報などをティーン(10代)でコンテンツ化。

【エンタメ系メディア】CultureZ

スクリーンショット 2021-05-13 0.52.40

『半径2メートルの"おもしろい"を集めよう』をコンセプトとした文化放送制作のテレビ番組。パパラピース土佐兄弟などTikTok・Youtubeを起点に活動するクリエイター、インフルエンサーをパーソナリティに迎えている。

【エンタメ系メディア】GirlyBeautySociety

画像32

Z世代ターゲットにした美容番組。今年5月よりオリジナル美容動画プラットフォーム公式Youtubeチャンネルにて公開される。プレスリリース上では"ティーンリーダー"と表現されていたが、ティーン美容界のトライブリーダー的存在である横田真悠氏を起用している。

🟥 ライフスタイルとZ世代

現代は、オンラインとオフラインの直線的な関係性(O2O)から双方の境界が融和した相互補完的な"OMO"(Online Marged with Offline)へと変化している。

それがゆえに、とりわけネオ・デジタルネイティブZ世代には特徴的な傾向が見られることは時代背景や消費行動の変容からも頷けることだろう。
ここではZ世代のライフスタイルに注目し、その情緒的側面を見ていきたいと思う。

📍「リアルとデジタル」「個と他」の二面性

スクリーンショット 2021-05-13 16.53.10

TikTok For Business「Z世代白書」を引き合いに出すと、"個性"と”世間体”双方への配慮は、他世代に比べるといずれも10ポイント以上高い数値が確認できる。つまり彼らZ世代は、どちらも抜きにして考えることが難しく『自分ヨシ、世間ヨシ』の、三方良しならぬ”二方良し”の思考なのではと考えられる。

DXが勢いを増す昨今、Z世代はデジタルを「リアルの代替」とは捉えずあくまでリアルに寄せた”ニア・リアル”と捉える傾向にあるようだ。
その一方で、ソーシャルメディア上の容赦ないコメントや炎上のさま、瞬く間に大人気TikTokerへと成長したユーザーのさまを目にし、『個性を露にし時代の寵児となる可能性があること』と『世間体への配慮を欠き干されてしまうこと』というデジタル社会の端的なありようを現実界と異なるものとして捉えているようにも思われる。

📍個を効果的に表出する"スタンス思考"

自他の狭間に身を置くZ世代。そんな彼らが見出した二方良しの表現方法こそが、この"スタンス思考"だと考えている。電通若者研究部の調査によれば"かっこいい"の基準は「明確なスタンスを備えているかどうか」が指標になるというが、そのかっこよさの有無が”推し”(推しメン)にできるかどうかと関わっている。

スクリーンショット 2021-05-13 20.02.33

【ネオ・デジタルネイティブとしてのZ世代】でも登場した”推し”だが、
独自のスタンスを備えた"かっこいい推し”へは、憧憬のみならず尊敬の念をも醸成するだろう。(『推しが尊い』という表現が見られるのも、手の届かない存在への憧れのみならず、いち人間としての敬意をファンが抱いていることに起因している)
そうした「明白な意見=スタンス」を持つ対象を推すことで、ファンは推しの持つアイデンティティを自身のスタンスとして間接的に仮設することが可能となる。つまり、環境保全活動にコミットする姿勢を示す”かっこいい”対象を推すことで、自身にも環境保全活動へのエンゲージメントを醸成させることができ間接的に「スタンスを持ったかっこいい自分」を世間に示すことができる。

個性も世間体も重視するZ世代の二面的な承認欲求を、"推し"という存在で一挙に満たすことができ、この一連の着想をZ世代の"スタンス思考"と考えている。

📍メンタルヘルスを支え、エンタメをも生み出す"チル"カルチャー 

コロナ禍による孤立、経済難などが、人々の間でメンタルケアの重要性を際立たせている。
emolmuuteなどジャーナリングを通じたメンタルケアアプリ登場のほか、既述したYay!は「特定非営利活動法人あなたのいばしょ」と連携し主要ユーザーZ世代のみならず、あらゆるメンタルケアが必要なユーザーへの門扉を開放している。コロナ禍以前でも、令和元年版自殺対策白書を見ればその逼迫さが窺える。Z世代を包含する10~39歳の死因順位1位は自殺であり、15~34歳の死因順位1位が自殺となっているのはG7の中でも日本のみだ。この状況は国際的に見ても国内のメンタルヘルス普及状況に憂いを感じざるを得ない。

画像35

本項では、そうしたメンタルヘルスと深い関わりを持つZ世代発のカルチャー"チル"に触れていきたい。
ゆったりする、落ち着く雰囲気などを形容する"チルい"は、英単語 chill out に由来し若者の間でスラング的に使用され、今やリラクゼージョンドリンクの広告文にまで起用されている。説明するまでもなくメンタルヘルスと「チル=ゆったりして落ち着くこと」の関係性は自明で、心を落ち着かせることそれ自体がメンタルケアに直結する。

画像36

シーシャCBDはその際たる製品ではないだろうか。
長時間ゆったりと香りや味わいを楽しめる水タバコ、シーシャはZ世代も間でチルの代名詞的存在とさえいえよう。また、電子タバコのリキッドや舌下摂取、飲食物に使用できるCBD(大麻から合法成分のみを抽出したオイル)もリラクゼーションアイテムの1つとして近年名を馳せている。
さらには、モクテル(ノンアルコールカクテル)、夜ピク(夜のピクニック...作家 恩田陸氏の作品名ではない...)など、どこか"エモさ"を孕んだチル体験も話題を呼んでいる。
ここから、チルはメンタルヘルスに寄与するのみならず「Z世代のエモいエンターテイメント」としても機能していることが窺えるだろう。

なお直近のメンタルヘルスに関する調査には大久保敏弘・NIRA 総合研究 開発機構(2021)「第 4 回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」が挙げられるが、2020年3月〜2021年4月の全世代的なメンタルヘルス状況は改善傾向にあるとの報告がされている。

📍ポストジャンル性

あなたは、1日あたりどれぐらいの時間音楽を聴いているだろう。
そしてその音楽は、どんなジャンルだろうか?

Z世代の女性を挙げれば、彼女らの約97%は1日に最低5つの音楽ジャンルを聴いていることがわかっている。音楽ストリーミングサービス(SpotifyやApple Music)の普及とそのレコメンド機能が直接的な要因だろうが、楽曲の構成にも関わりがあるといえる。注意深く近年の楽曲に耳を傾けてみれば分かるが、とりわけマッシュアップやEDM調では最初のイントロ数秒だけでジャンルを判断できない「ジャンル横断的な楽曲構成」が増えていることに気が付くはずだ。

スクリーンショット 2021-05-13 23.22.58

i-D で記述されていたZ世代を代表するアーティストでもあるビリーの言葉にあるように、彼女らにとって"ジャンル分け"はもはや「過去の遺物」にさえなりつつある。
ここまで音楽ジャンルを深堀していけば、Z世代のジャンル横断的なさまは単なるストリーミングサービスのオートレコメンドのみならず、ジェンダー二元論やライフスタイルなどの既存概念打破へと邁進する"ポストジャンル性"という一つのZ世代の特性を見出すことができるだろう。

このポストジャンル性には、TikTokも深く寄与していると考えられる。

スクリーンショット 2021-05-13 23.43.49

TikTokユーザー988人から回答を得た当調査では、『新たな音楽を発見するプラットフォームはどこか?』という問いに対しSpotifyとわずか6ポイントの差でTikTokが2位にランクインした。短尺動画を媒介としたソーシャルメディアであるにも関わらず、だ。
ユーザーの多くを若年層が占め完全レコメンドで動画を視聴するTikTokでは、そもそもリリース時代やボーカルの有無、BPMなどジャンルを介さない非セクショナリズム的な音楽との出会い方となり、Z世代は「意図してポスト・ジャンル性を選択する」というより寧ろ自然にその形に寄っているのではないかと考えられる。さらにそこへ、SGDsの"非セクショナリズム思考"が流れ込み、音楽におけるポスト・ジャンル性が全般的な既成概念を打ち壊す促進剤として機能していると窺える。

📍D&Iへと繋がる"DIYメンタリティ"

「Z世代と音楽ジャンル」というスコープでみれば、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の普及も相まり”ジャンル”という既存概念が崩壊しつつあることに触れた。
ここで取り上げる"DIYメンタリティ"のDIYは 『Do It Yourself』を意味し、「既存の方法に囚われず自分で道を切り開く開拓精神」と言い換えられる。

Spotify for Brands CULTURE NEXT 2020 によれば、開拓精神ともいえるZ世代のDIYメンタリティは、特に”就業”に関わる点で際立っている。
コロナ禍で主要都市をはじめ各地で取り入れられたリモートワークやオンライン授業は、既存の働き方・学び方の変革に大きく寄与した一方、YoutubeやCourseraなどの動画配信プラットフォームを活用すれば「オンライン上でも既存の物事の多くを完結できること」も明るみにした。(ネットの高校ともいわれるN高もこのコロナ禍でさらなる注目と有意性を獲得している)

画像39

またアメリカのみならず国内でも大学奨学金の返済問題は多々議題に上ることからも、負債を背負ってまでネット上で済ませられる大学に通うことには当然疑問が付される。さらに、BASEやShopifyのECプラットフォーム、AdobeやPhotoshopなどデザインアプリケーションも多様に展開されており、ECとSNSを駆使すれば起業ハードルがかなり低くなる背景も相まって、『大学を卒業し企業に就職』という既存レールが崩れつつある。
Spotify CULTURE NEXT 2020 を読み解いた細川元氏の記事にもあるように、2019年TD Ameritradeの調査では米国在住のZ世代89%が高校卒業後、4年生大学以外の進路を検討している。

このことからも、単なる部屋のデコレーションや日曜大工のDIYに収まらずライフスケールでも『Do It Yourself』を実践できるアントレプレナーシップは、Z世代の魅力的な特徴の1つだといえよう。
ただしこのDIYメンタリティは、必ずしも全Z世代に当てはまるものではない。「お茶ベンチャー」という領域で活躍する株式会社TeaRoom代表取締役社長の岩本涼氏や、落語クリエイティブチームZ落語を率いる桂枝之進氏など、かつてないユニークさでアントレプレナーシップを発揮するZ世代の活躍も見ることができるが、DIYメンタリティは起業というかたちでのみ現れるわけではないことはしたためておきたい。
以下では、活動家ナオミ・クラインのVogueでの言葉を援用している。

Z世代にとってはインターセクショナリティ(交差性)が全てです。
── 彼らにとって重要なのは、点を繋ぎ合わせて問題の根源を見つけることであり、だからこそ、恐れること無く根底から物事を変えていくことができるのです。

少々込み入った話になるため”インターセクショナリティ”について詳しく知りたい方は下記を参照されたいが、クライン氏の言葉を借り結論を急ぐと、「(Z世代が)恐れること無く根底から物事を変えていくこと = DIYメンタリティ」が帰す点が「(Z世代の全てである)インターセクショナリティ」なのだと言える。
これはDIYメンタリティに限らず、ジェンダー二元論の超越や反人種主義、合理的配慮への理解などのSDGsに対し、Z世代がなし得ている理解に繋がる。

📍Z世代の思う”ホンモノ”

ユニークな施策を打ち出し続ける国内タクシー会社をご存知だろうか?
TikTokで"三和交通"と検索してみれば『これがタクシー会社か!』と驚くことだろうが、同時に、三和交通株式会社の社風や雰囲気、ありのままの姿を感じられはしないだろうか。

スクリーンショット 2021-05-14 18.16.39

日刊SPA! でのインタビュー記事で、TikTok動画に登場する三和交通 取締役部長 溝口孝英氏は次のように語っている。

ダンスも完璧じゃなくていい
僕たちも撮影は、常にぶっつけ本番ですが、多少のミスはご愛嬌。
楽しんでいる動画ほど再生回数が伸びるんです。
...
ダンスもメタボ腹もあくまで等身大

実はこうした”ありのまま感”はTikTok For Business「Z世代白書」でも触れられていて、Z世代のおよそ半数が『日常に近く、失敗を含んだ自然なコンテンツは信頼できる』と反応を示しているのがわかる。(25歳以降と比べると15ポイントほども差が開いてる)

スクリーンショット 2021-05-14 19.34.57

この不完全さの観点からTikTokは、「Instagramの”映え文化”」と対比的に捉えることができる。もちろんTikTok上でもきらびやかな様などいわゆる"ハレ"の場面を切り取ったコンテンツは見られるが、多くが馬鹿げたあるあるやお笑い、ハウツーネタ、ダンス、リップシンクなどのmemeであり、日常に即したありのままの姿が顕著だ。

Z世代の関心がナチュ盛り(ナチュラルに盛れるメイク)やチルなど"映え"から移り変わり、かつてInstagramを風靡していたする「クロップされ完成された美」とは反対に「自然で不完全なさま」にこそ信頼がおけると判断している。
UGC(User Generated Content; 口コミなどユーザーから生み出されるリアルな声)やオピニオンリーダーに強く影響を受けるZ世代の特徴からも、脚色なく自然に発露されたコンテンツをこそ「信頼できる“ホンモノ”の事実」と認識できる。先日 bitz SPA! フレッシュ に掲載された「わずか9ヶ月でYoutubeチャンネル登録者数10万人を突破した10~20代に人気の "えみ姉" 」の記事でも、『あまり飾らない「近所のお姉ちゃん」的存在を目指しています』と語っていることからも、やはりその"自然さ"にはZ世代が惹かれるものを潜めている。

Z世代の思う”ホンモノ”

TikTokのみならずTwitchやYotube、Anchor、Clubhouse、LINEライブ、イチナナなどを介せば、誰でも動画・音声のコンテンツ作成・配信が可能だ。
サイバー・バズ インフルエンサーサービス局マネージャー海野 萌氏の見解でもSNSで好まれる嗜好傾向が"人柄重視型"にシフトしていることがうかがえ、上述した媒体でもクリエイターの等身大の姿が現れている。“推し”を選ぶのにもこの人柄重視志向が高まっており、等身大の姿で語られる「ありのままのコンテンツ」こそがZ世代にとっての"ホンモノ"だといえよう。

📍Z世代が心を許せる”最も身近な存在”

ライター太田奈緒子氏がFRaUに寄せた記事には、太田氏の高校1年生の息子が語るリアルなZ世代高校生のさまが描かれている。友人との不和を避け、できるだけ穏便な関係を維持する姿は、以下のような記事・報道を知らずとも十分窺え得ることだろう。

『人それぞれ』で処理する冷たい距離感
  ー 現代ビジネス
『親友はいらない』コスパが悪いから?傷つきたくないから?
  ー ABEMA TIMES

というのも、コロナ禍でおうち時間を強いられたネオ・デジタルネイティブが向かう先は手元のスマホディスプレイとなり、自ずとデジタル上での「孤立した交際」が助長されているからだ。そんな中、対面リアルで日常的にコミュニケーションを取れる存在は"家族"となる。

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが15~18歳の高校生400名に実施した「Z世代の家族に対する意識・実態調査」では、全体の91.5%がLINE、25.9%がInstagramでも家族と関わりを持っていることがわかる。さらには女子高生の約5人に1人が母親の存在を「親友・友達」としている。
およそ50%が両親と恋愛についての話をしていることからも、Z世代の家族との関わりが極めて親密であると言える。

📍Z世代の"身の丈消費"

世界最大規模の金融コングロマリットと言われるクレディ・スイスのグローバル投資年鑑によれば、ミレニアル・X世代・ブーマーの時代と比べてZ世代が投資で得られる収益は1/3ほどに縮小するという。
その警鐘を予期していたかのように、2021年の新社会人は前年代と比べ貯蓄する人の割合が5ポイント上昇、金額にしてみれば平均で5000円の貯蓄金額増加という結果だ。さらに、ミレニアル世代が社会人1年目から貯蓄を始めた割合が56.3%であったのに対しZ世代では76.6%と20ポイントもの上昇がみられる。(松井証券調べ)

スクリーンショット 2021-05-16 4.10.36

背景には、未曾有のコロナ禍で目の当たりにした個人・企業の資金難や被雇用労働の危うさが影を落としており、Z世代の労働者層が余剰金の多くを貯蓄・投資に回す傾向は国内のみでなく世界的に見られる傾向だとわかっている。

そうした貯蓄傾向に比例し、消費の仕方にも変化が生じる。
SMBC 20代の金銭感覚についての意識調査はミレニアルを含む20~29歳を対象としており、必ずしもZ世代のみに的を絞った内容ではないものの「『多少無理しても、良いものにお金をかけたい』という“背伸び消費”と対照的な“身の丈消費”を志向する人が多い」という結果が現れている。
しかしながら、国内Z世代で見てみれば貯蓄を投資に回す割合はまだまだ多くはない。コロナ禍で証券会社や仮想通貨運用会社で口座開設数が急増しているのは周知の事実だが、果たしてその中にZ世代はどれほどの割合を占めているのだろうか。SDGsの教育指針が功を成しているのはすでに窺えるが、次はそんな次世代を担う彼らに"お金の知識"を授けるべきではないかと声を上げたい。

📍先祖返りするZ世代のオールド・ニュートレンド

米国Z世代を始めとするユーザーが発となり、"Cheugy(チュージー)"という単語がTikTokを席巻しているのをご存知だろうか?
簡単に言えば、Cheugyは『トレンドを踏み外した人の様を形容する語』であり、Z世代がミレニアル以降の世代を批判的に形容する時に用いられる。(この単語自体が生まれたのは2013年だった

Y2K(Year of 2 Kilo; 2000年代)ファッションがその代名詞として上げられており、以下のY2Kトレンドを指南(?)しているInstagramアカウントを見れば、それがどのようなものか外観を掴めるだろう。

画像45

『かなりダサい...』と、ミレニアルやZ世代なら間違いなくそう一蹴すると思うだろうが、今TikTok上で言及されているY2Kはこうした上図の端的な事例だけでない。例えば襟付きシャツやマジメな印象を与えるカーディガンなど、今のZ世代にでも見られるようなファッションもがY2Kに包含されていることもあり、例えばジャヴァコーポレーションがZ世代主導で立ち上げた新ブランド「ロートレアモン・ブルーブラン」はY2Kファッションの雰囲気を意図して纏わせているようにさえ思われる。
このように、矛盾を孕みながらも過去のトレンドに関心を寄せる"先祖返り世代"ともよばれるのがZ世代であり、コロナ禍にはアナログレコードの販売総額急増アナログカメラのトレンド化コテージコアファラ・カットの再来、中国での韓服ブームなど、USや日本国のみならず、隣国でも(原因は異なれど)"レトロ回帰"が1つのトレンドとなっている。

スクリーンショット 2021-05-17 0.31.10

上述したいずれのアイテムもミレニアル世代以降の視点で見た”レトロ”ではあるが、Z世代からすれば「真新しさとともにノスタルジアもが重なって」写る。(アルファ世代ともなればもはや未知のモノとさえなり得る
このレトロ回帰の背景には、Z世代と家族との親密な関わりや個性の発露、ノスタルジアが生じさせるポジティブなエネルギーなど、今まで見てきたさまざまな要因が関わり合っている。
いずれにせよ、メロンソーダの回帰からも、今後もZ世代とレトロの関わりからは目が離せない。

⬛️ まとめ

この大集が、読者の、あなたにとっての"Z世代理解"を少しでも促してくれたなら非常に嬉しく思う。中国伝媒大学文化産業管理学院党総支の朱敏副書記のZ世代へのコメントを【📍Z世代の消費行動】に載せていたが、ここでも今一度再掲しておきたいと思う。

"...(Z世代の文化消費の価値と威力がもたらすのは)内需を刺激し、経済の質の高い発展をサポートできるだけでなく、ハイクオリティの文化的製品の世界進出を推進すること ... "

ー j -people.cnより抜粋

Z世代は世界を変える、市場を支配する、地球を救う...
そんな期待を各地で企業や市場をリードするトップランカー達が声を揃えて主張している。
Ackermann Marketing & PR 創設者Cathy Ackermannは、Z世代を『特定のオーディエンスに特定の情報を届け、アイデンティティをキュレートする存在』だと述べている。この根本的な彼らの思考スタンスこそがナオミ・クラインの言う『Z世代にとってはインターセクショナリティ(交差性)が全て』と根底で交わりを見せているのだろう。

ややポジティブな面ばかりが目立った記事のようにも感じられるが、もちろんZ世代の傾向として上げられる点にはネガティブなものもある。しかしながら、 SDGsへと向かう知識・姿勢を備えボーダレスな団結を示すZ世代のネガティブさに目を向けて何になるだろうか?そこでこそ、ミレニアルやX世代の出番であろう。
『Z世代は躍起になって物事に取り組むことができない特徴がある』との声が上がっているが(確かに傾向としてそれはあるが)もしそう認識している暇があれば、そんな現状を嘆いておらず彼らを指南する方法や共創手段を探ってみてはいかがだろうか?

なぜなら彼らは、「今までの世代とともに」この世界を大変革する力を潜めているのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?