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ハラスメントと気遣い

昨日は日本から来た監査法人の人たちと飲み会だった。
インドネシアのスラバヤで最もおいしい日本食レストランに連れて行った。と言ってもお客さんを連れて行けるレベルの日本メシ屋は3軒くらいしかない。

先方は3人だった。その内ひとりは確か昨年も来ていて、もう少しカジュアルで来賓をもてなすようなところではないお店で飲んだ気がする。

先方も覚えていた。さすがに「あのちょっと汚い、お客さんを連れていくようなところではないお店で飲みましたよね」とは言わず、「どこか懐かしい味で美味しかった。」とお気遣い頂いた。

今回のお店は居酒屋ではあるが、内装にお金を掛けていて高級感があり、料理も刺身や海鮮をふんだんに使った創作料理など、値段も高級だ。

きれいな器に料理が上品に盛り付けられている。一品ずつ配膳される度にゲストの3人は携帯を取り出し写真を撮っていた。「皆さん、インスタされているのですか?」と聞いてみたが、だれもやっていないと言う。「一応撮っておこうかと思いまして…。」とのこと。

40代前半、40代半ば、50代前半の3人のビジネスパーソンが一斉に料理の写真を同じタイミングで撮っている。特に目的もなく。

まあ料理の写真を携帯で撮るのは珍しくはないけど、料理が配膳されると同時に一斉におじさん達が毎度毎度、写真を撮っている光景は「OLか!」と突っ込みたくなったが、ぐっとこらえた。

うちの本社から同行した30歳の若者が居た。同行者と言うのはゲストではなく、ゲストを案内してくる言わばホスト側だ。

彼はそこをわかっていなかった。お酒(当地の貴重品)を注ぐでもなく、話題をふるわけでもなく、テーブルの端にゲストの一人という顔で当然のように座っていた。

今、流行のドラマである「不適切にもほどがある!」の話題となりパワハラ、セクハラが過剰に警戒され、会社での会話に気を遣い過ぎて疲れるという話になった。

普段、このインドネシアではほとんど意識しないというか、そこまでインドネシア語で会話が続かないので、物理的な接触さえ気を付けていれば問題ない。日本の会社勤めは色々気を使って大変な様子。さっき「OLか!」と突っ込まずに良かった。立派なセクハラだ。

テーブルの端に座った気遣いのできない彼が「上司の方が相当気を遣って話掛けてくるのがわかります。」へらへら、と突然会話に参加してきた。

ハラスメントで訴えられるのを恐れ、上司が気を遣いすぎて、会社員としてのマナーも教えられなくなっているのだろう。

酒の酔いも手伝い、海外勤務の気楽さから「お前、上司に気を遣わせんじゃねえよ。」とあえてのパワハラをしてやった。彼は複雑な半笑い、ゲストの3人も聞こえなかったふりみたいな。

くだんのドラマによると「頑張って」というのもダメらしい。
上司の心からの励ましがハラスメントになるのなら、心からのダメ出しでハラスメント認定された方が気持ち良い。

まあ日本にいないから勝手な事を言っているが、日本だったら冗談にならない処遇を受けるのだろう。

イスラム教には西洋の基準からすればセクハラにあたる決まりが多くある。髪の毛を出すな、肌を見せるな、などなど。セクハラについては昭和生まれのおじさんの意識改革が鈍くなる国柄だ。

この調子で日本に帰ったらハラスメントで即刻アウトになりそうだ。

お酌されるのを待つより、手酌で飲む日本酒も悪くない。若者に無理やり飲ませる酒も美味しいのだが、手酌に優るものはない…のだろう。

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