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幸福の“黄色入り”ユニフォーム 【阪神タイガース優勝記念特集】

2023年9月14日、我らが阪神タイガースが実に18年ぶりとなるアレ a.k.a.リーグ優勝を果たした。

前回優勝時は小学3年だった私としては、ライブ感のある体験として阪神のリーグ優勝を見届けたのはこれが初めてと言ってもいいため、非常に感慨深い次第だ(皆さんは小1・小3の頃の“記憶”って言えるまともな記憶ありますか?僕はあまりありません)。

そんな話はさておくとして、ユニフォームの話だ。
このnoteにはそれしかないので。

阪神の歴代ユニフォームは、大きく「白黒ユニフォーム」と「黄色入りユニフォーム」に分けることができることをご存知の方も多いだろう。
そして、阪神には「ユニフォームに黄色が入っていると優勝できない」という都市伝説があることもまた有名である。

今回の優勝を語るにあたり、まずはこの都市伝説の真偽を改めて精査していきたい。


タイガースは白黒ユニに夢を見るか?

阪神が2リーグ制以降にリーグ優勝を果たした、1962年、1964年、1985年、2003年、2005年のユニフォームを見てみよう。

確かに、黄色は入っていない

…だろうか?
確かに、ユニフォームシャツやパンツ、キャップのデザインに黄色は使われていない。
しかし、61-65年モデルをよく見れば、ストッキングにガッツリ黄色の2本ラインが入っていることが分かる。

さらに言えば、そもそも袖の虎マークがある時点で「黄色が入っていない阪神ユニ」などというものは存在し得ないのだ、
などという言い分は流石に屁理屈じみているとしても、「ユニフォームに黄色が入っていると優勝できない」という言説は果たして正しいだろうか。

また、1リーグ制時代に目を向けても同じことが言える。

黄色が入っていることがはっきり判る画像を見つけるのは流石に困難なため(ほとんど白黒画像しかないので)、
詳細は週刊ベースボールの『ベースボール百科』にてイラストを手掛けられていることでもお馴染みのイワヰマサタカさんのYouTubeを参照して頂くとして、

ここからも判る通り、タイガースはユニフォームに黄色が入っていても普通に優勝しているのだ。

あえて言うとすれば、着目すべきはキャップ。
それもツバとマークの色だ。

ここまでもうお気づきかもしれないが、
阪神の歴代優勝ユニフォームに共通している点として挙げられるのが、
「帽子及び帽子マークに黄色が入っていないこと」である。

まあ結局黄色が入っているか入っていないかの話に変わりはなく、

×「ユニフォームに黄色が入っていると優勝できない」
○「“帽子に黄色が入っているユニフォーム”で優勝したことがない」

というニュアンスの違いでしかないのだが、こういう機微こそが重要なのだ、ということはこれを読んでおられる方ならご理解頂けるだろう。

阪神タイガースは、ユニフォームに黄色が入っていると優勝できないのではなく、「帽子に黄色が入っているユニフォーム」で優勝したことがないチーム“だった”のだ。

そう、今年までは。

幸福の“黄色入り”ユニフォーム

現在使用されているタイガースのユニフォームは、
ホームビジター共に帽子のツバが黄色、
ロゴや文字は黄色で縁取られ、
ラインにも黄色が使用されているという、
純然たる「黄色入りのユニフォーム」である。

もう今更言うまでもないが、私はこのユニフォームを「黄色入りユニフォームの中で歴代最高傑作」と評している。
平たく言えば「大好きなユニフォーム」だ。

しかし、やはり“黄色帽子のジンクス”が頭から離れることはなく、以前投稿した『これぞ理想のユニフォーム!〜阪神編〜』でも、断腸の思いで白黒ユニフォーム系統のデザインを「理想」として提示したくらいである。

ところが今年、そんなジンクスに囚われ無駄にネガティブになるオタクを尻目に、ぶっちぎりの優勝を果たした我等がタイガース。
しかも、よりによって「球団史上最速」「リーグ全球団に勝ち越し」といった称号付きでの圧倒的な優勝であった。

球団史上初の、「帽子に黄色が入っているユニフォーム」でのリーグ優勝
全人類の頭を長年悩ませてきたジンクスを見事に打ち破った、まさに歴史的快挙であると言っても過言ではない。

特に、私のように「なんだかんだ黄色入りユニフォームが好き」なファンにとっては、夢にまで見た光景だ。

改めて振り返る“黄色帽子のジンクス”

思えば、ここ数年のタイガースの戦いに感じるもどかしさは、常に黄色帽子と共にあった。

今季も散々ネタとして掘り返された、もはや簡単に振り返ることすら憂鬱な「Vやねん!」の2008年。
球団史に残る強打を誇りながら、圧倒的な投手力を有する中日とのほこたて対決に0.1ゲーム差で後塵を拝した2010年。
外国人選手全員がタイトルホルダーながら、終盤の優勝争いで力尽きた2014年(CS突破こそ果たしたが…)。
破竹の勢いで勝ちを重ねた前半戦から一転、ものの見事に息切れし、リーグ最多勝ながらゲーム差0でヤクルトに優勝を拐われた2021年。

これらは全て、黄色帽子を採用していたシーズンの出来事である。

辛いです…

ここ10年でBクラスに落ちたのはたったの2回。
5回も2位に入りながら、それでも優勝はなし。CS突破も1度のみ。
このようなもどかしさばかりが募る戦いぶりの側には、いつも黄色帽子がいたのだ。

元を質せば、2リーグ制以降初のリーグ最下位に沈んだ1978年当時に採用されていたユニフォームは黄色入り。
また、暗黒時代以来17年ぶりの最下位を経験した2018年は、2015-17年に復活していた白黒ユニフォームから再び黄色入りユニフォームに戻した最初のシーズン。

これほどまでに強烈な効果を発揮していた“黄色帽子のジンクス”。
今年も今年で、勝ちまくった春から一転、やや勢いに陰りが見え始めた夏頃にDeNAや広島に首位を明け渡した時には、「ああ結局…」などと過剰にネガティブになったりしたファンも多かったのではないだろうか。

繰り返しになるが、今回のアレはそういう雰囲気を見事に丸ごと打ち破った歴史的快挙なのだ。

再就任に伴って、岡田監督の発案によりビジター用帽子もホーム用と同様に黄色のツバへとマイナーチェンジして挑んだ2023年シーズン。

岡田監督は前回政権時の2007年に、およそ30年ぶりに黄色入りユニフォームを復活させた張本人でもあるのだが、それだけ黄色入りユニフォームに愛着を持っていることの証左と言える。

かつての岡田青年が阪神に入団した1980年当時のユニフォームにも似ているとされる現行ユニフォームで掴み取ったアレは、
まさに「タイガース愛の勝利」と言っても過言ではないはずだ。

因みに、今年まで優勝経験がなく、前述したようにことごとくあと一歩で勝ちきれない印象の強い“黄色帽子”だが、
“黄色帽子”と“黒色帽子”とを採用していた期間の通算勝率で比較すると両者にさほど差はなく、“黄色帽子”が採用された1974年以降に限ればむしろ4分ほどの差をつけて“黄色帽子”が上回る、という検証結果も存在する(2020年12月時点)。

百年後の虎へ

90年近い歴史を誇るリーグ最古参の球団ながら、今回の優勝で(2リーグ制以降に限れば)ようやく優勝回数が片手で数えられなくなった程度の我等がタイガース。
日本一も僅か1度、リーグ連覇の経験すらない我等がタイガース。

1985年の日本一達成の直後からは惨憺たる暗黒時代が長く続き、
2003・2005年のリーグ優勝の陰では「33-4」なるネタを球史に刻んだ。

確かに白黒ユニフォームは、“リーグ優勝を目指すこと”に関しては縁起が良いユニフォームである。
しかし、それと同時に暗黒や33-4の象徴にもなりかねず、胸を張って「栄光のユニフォーム」と言えるものではない。

つまり、阪神にはいわゆる「黄金時代」と、その輝きを象徴する「栄光のユニフォーム」が未だ存在しないのだ。
かつて「空白の1日」を経て巨人から阪神へ移籍してきた小林繁が語ったという、「阪神には、歴史はあっても伝統がない」という言葉がここへ来てなお鋭く突き刺さる。

ここ10年間ほど、フロントと現場が未だかつてないほどの一体感でチームを整えてきたことで、2年前の春季キャンプ総括で近本光司が語った通り、現在のタイガースは黄金時代到来の気運がこれまで以上に高まっている。

その取り組みが見事に結実し、現在のユニフォームが阪神にとって念願の「栄光のユニフォーム」となること、そして、それが次の100年へと歩みを進める新たなタイガースの伝統の象徴として燦然と輝き続けることを心から願う。

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