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広島カープ2023年新ユニフォーム 〜デザイン云々以前の問題〜

2022年10月15日、カープが新ユニフォームを発表した。

新井貴浩氏の監督就任、苫小牧中央高・斉藤優汰投手のドラフト1位指名公言など、チーム再建の気運も着実に高まり、その象徴としてユニフォームを一新する可能性にも注目が集まっていた中、満を辞しての発表となった。

実に14年ぶりとなるユニフォーム変更。
元々が完成度の高いデザイン性を誇っていただけに、新デザインに対するハードルはかなり高いと思われるが、果たしてどのような出来になったのだろうか。

既にタイトルでネタバレしているようなものだが、私個人の主観をふんだんに織り交ぜながらカープの新ユニフォームを紐解いていくこととする。

↑こちらも合わせて読んでいただければ、より楽しんでもらえると思うのでぜひ。

新ユニフォーム概要

まずは、新ユニフォームの概要をおさえておこう。

引用:スポーツ報知

主な変更点は以下の通り。

①ホーム・ビジターともにロゴや番号、ネームのサイズを縮小
②立襟を廃止
③各部の赤の色味を変更
④ビジターユニのロゴ・文字を白から赤に変更、フォントを刷新
⑤ホームのシャツの背面に「赤い繁吹」をイメージした赤いラインが採用

第一印象としては、変わった感はそこまで強くない。
ベースのデザインは変わっていないし、デザイン一新・刷新というよりは、あくまでマイナーチェンジの域と見ていいだろう。

ホーム・ビジターそれぞれにコンセプトが設定されているようで、ホームが「シンプル+印象的 歴史と熱意をアクセントに」、ビジターが「『赤』×『赤』 赤が織りなす新たな表情」ということらしい。

正直言って、イマイチよく分からない。
何か言ってるようで何も言っていないような気がする。

①ロゴや番号、ネームのサイズを縮小

いくつかの記事によれば、「シンプル+印象的」というコンセプトのもとに、というニュアンスで胸ロゴや番号のサイズを縮小することが紹介されているが、私に言わせればこれは完全なこじつけだ。

ロゴサイズ縮小の理由は、ズバリ「軽量化」で間違いない。

昨今の新ユニフォーム発表では選手の「生地が軽くて動きやすそう」的なコメントがテンプレ化しているが、実際生地がどんどん軽くなっているのは事実。
プロアスリートが着用するウェアである以上、機能性の向上は必然である。

しかし、野球のユニフォームにはロゴや文字を刺繍で施すという、他のスポーツではまず見られない特殊性がある。
NPBでは12球団中5球団が刺繍から昇華プリントへ移行しているが、広島は刺繍を維持している7球団に属する。

ユニフォームの生地が薄く軽くなる一方で、そこにある程度の重量を有する刺繍ロゴを施すとなると、ロゴ部分がブラブラとぶら下がるような形になってしまい、機能的にも見栄え的も良いものとは言えなくなる。

ただ、だからと言って昇華プリントに甘んずるというのは広島球団的に好ましい選択ではなく、あくまでも今後も刺繍を維持する方向性を採るつもりなのだろう。

だからこそ、ロゴや文字のサイズを小さくすることで、刺繍仕様の継続と軽量化の両立を目指したに違いない。

プロ球団には刺繍ロゴのユニフォームに拘ってもらいたいという考えである身として、この判断は全面的に支持したいと思う。

デザイン的な面で言えば今までのサイズ感の方が重厚感があって良かったのだが、昇華プリントを良しとしない姿勢の方にまずは拍手を送りたい

同様の試行錯誤は他球団でも行われており、日本ハムなどはそれについて触れた記事もあるので、ぜひ参考に。

②立襟を廃止

立襟に関しては「これぞ理想のユニフォーム!〜広島編〜」でも触れたことのある話題であり、個人的にはこの変更は今回の新ユニフォームの中で数少ないナイスな要素だと思う。

この時点で思ったより記事が長くなりそうな予感がしているので、簡単にセルフ引用のみで済ませておくこととする。

これ(立襟)は日本プロ野球では主に30〜40年代に採用されていた仕様。
主に60〜70年代あたりの雰囲気を志向するのが主流である「ネオ・クラシック」の流れの中では、やや古過ぎる感じがしなくもない。
現行のユニフォームで取り入れられているのは12球団中広島のみですし、
(中略)
普通に丸首の仕様にした方が、スッキリと今風な「ネオ・クラシック」の雰囲気になるのではないでしょうか。

これぞ理想のユニフォーム! 〜広島編〜

③赤の色味が変更?

各部の赤色の色味を変更したようであるが、こればかりは日光やナイター照明の下でどう見えるかというのが重要なので、見た目に関しては現時点では如何とも言い難い。

ただし、「デザインする側がどこの部分をどういう意図でどんな色味に変えたつもりなのか」という部分に関しては、十分に追求する余地がある。

公式サイトでは、
・ホームのロゴ=「これまでより深い赤色」
・ビジターユニのシャツ=ピンクレッド系の「深みのある赤」
・ビジターのロゴ=「鮮やかな赤」
・ビジターユニ=「これまでと違った表情の『赤』」
などと、ご覧の通りいろいろな表現を使って説明しているが…

一体どれが「カープの赤」なのだろう。
帽子やアンダーシャツ、ストッキングの色味は据え置きなのだろうか。

出来れば、2020年に楽天がマジェスティックからミズノへサプライヤー変更したタイミングで、クリムゾンレッドの色味を全面的に見直しチームカラーを再定義したように、「カープの赤はこの赤!」とカラーコンセプトを設定し、球団のブランディングに繋げてもらいたいのだが…

一体どれが「カープの赤」なのだろう。

特に気になっているのは「ピンクレッド系」と説明されているビジターユニのシャツ。

ユニフォームランキング2022」の記事でも言及している通り、広島のユニフォームがイケてたのは、何と言っても洗練された赤と白との鮮烈なコントラストに紺の差し色アクセント、という素晴らしい配色バランスがあってこそだった。

カープ女子なるムーブメントも、この赤の色味があったからこそ起こったものなのではないかと思う。

それを何だかよく分からないニュアンスカラー的な色味に変えてしまうのは完全に愚策。
「ピンクレッド系にも見える」って何だ。
カープの赤はどこからどう見ても「ザ・赤」と言えるような赤であるべきだろう。

せめて、「こういう色でこういう意味があります」というしっかりとしたカラーコンセプトを提示した上でのことであればまだ納得する余地はあるのだが、どこの馬の骨とも分からない色が自ら名乗ることもなくユニフォームのメインカラー面しているのだから、そんなものを支持する気にはなれない。

④ビジターユニのロゴ・文字を白から赤に変更

おそらく、これが今回の変更で1番のトピック。
新ユニフォームについての批判的な意見も大部分がこれに関してのものだと思われる。

新しいユニフォームが発表された際、否定的な声を牽制する意見として「そのうち慣れるでしょ」的なコメントが散見される場合があり、今回もご多分に漏れずそのようなコメントをチラホラ見かけるが、これに関しては明白に「そういう問題じゃない」と言える。

この「深みのある赤」×「鮮やかな赤」によるNPB史上でもトップクラスを狙えるであろう視認性の悪さは、慣れ不慣れとかではなく「不備」「不具合」「バグ」と言っても差し支えないだろう。

チーム名も選手名も背番号も何も判読できないとなると、それはもうスポーツチームのユニフォームとしての致命的欠陥だと言わざるを得ない。

もはやデザイン云々以前の問題だ。

ロゴのサイズを縮小したことについて、一応「褒めポイント」として紹介したつもりであったが、ビジターユニに限っては配色のせいもあって悪い方向へ転んでしまっている。
ただでさえ見辛い配色なのに、文字のサイズが小さいのだから。

ただ、刺繍仕様でありかつユニフォームシャツの色と色味の異なる光沢感のある素材を使っていることから、もしかすると日光やナイターの下で見る分にはそこまで見にくいってこともないことはないかもしれない、と言えなくもない、が…

各球団のグッズショップを覗くと、ボディと同色のロゴをあしらうことで「普段使いしやすい」ようにしたユニフォーム風ベースボールシャツが売っていたりするが、この変更はレプリカやオーセンティックのユニフォームをそのよう形で売れるようにするためのものなのではないだろうか。

「これまで以上に球場を赤く染める」という表現も、解釈によっては「ファン向けに作りました」という意味に捉えることもできてしまう。

果たして、ユニフォームとは誰のための、何のためのものなのか。

やはり、デザイン云々以前の問題だ。

⑤「赤い繁吹」をイメージした赤いライン

悪い冗談かと思った。一体何のつもりなのか。

「赤い繁吹(しぶき)」って何だ。血溜まりでも踏んづけたのか。

『チェン○ーマン』を観たノリか何かか。永久機関が完成しちまったのか。

だからビジターユニは真っ赤に染まったのか。

このnoteでも幾度となく繰り返してきた話だが、ユニフォームはフリーのキャンバスではないのだ。

空いてるところに何か書き足せばいいというものではない。

余白を埋めればそれで何かになるというものではない。

個人的に、今回の変更ではっきり「怒り」を感じたのがこのライン。
本当に意味が分からない。

「赤い繁吹」ってマジで何やねん

その他気になったポイント

  • ビジターユニのラケットラインの形
    ビジターユニにあしらわれているラケットラインの形がすごく気持ち悪い。 胸元のカーブする部分がカクッとなってるのがとても嫌
    しかも、よ〜く見てみると、ユニフォームの前立て部分自体は従来通りのカーブを描いているのに、ラケットラインだけが変な形になっているのだ。なんじゃこりゃ。
    「深みのある赤」×「鮮やかな赤」が意外と見えにくくないとして、「赤い繁吹」が案外気にならないとして、このユニフォームに見慣れたとして、だとしても私はこのラケットラインの変さを糾弾し続けることだろう。

  • ビジターのみ背番号フォント変更
    なぜビジターのみなのかが疑問。
    個人的にはかねてから「高校野球型」の汎用フォントからオリジナルのフォントへ変更することを提言していたが、半分叶って半分叶わないというとても中途半端な形になった。
    また、従来の「高校野球型」こそが70年代から続く伝統の様式なのだ、という意見も見聞きした。そう考えると安易に背番号フォントを変えること自体望ましいことではなかったのかもしれない。

  • ホームユニに赤ステッチ
    よく見ると、ホームユニのボタン付けとボタン穴の縫い付け、その他ステッチが赤色になっている。
    ボタン糸に関しては中日の色違いボタンのように目立ってしまうなら「余計なことしたな」と言いたくなるところだが、今のところかなり寄らないと目立たない感じなので、そこまで目くじら立てるほどのことではないかなと思う。

最後に

元々、カープのユニフォームに対して非常に高く評価していたこともあって、あまりの落差にかなりキツい物言いになってしまった部分もあるが、正直言って概ね賛同してもらえるのではないかと思うので、個人の感想で云々みたいなことはあえて言わないでおく。

デザイン自体がめちゃくちゃにダサいかと言われればそういう訳ではないのだが(実際、本論では「ダサい」という言葉を一度も使用していない)、前モデルが誇っていた至高のバランス感覚が一瞬にして全て崩壊してしまったという印象だ。

それに、途中でも言及した通り、好みか否か、見慣れる見慣れないという問題以前に、プロ野球の試合用ユニフォームとして使用する上で「不備」「不具合」「不都合」「バグ」があり過ぎるのではないか、という話になる。

新ユニフォーム発表から実際に試合で使用するまでに(あるいは使用し始めてからしばらくして)再度一部仕様を見直す、という事例は過去にもいくつかあるので、せめて開幕までに何かしらのバグ修正アプデが入ることを期待するしかない。

個人的には実際に選手がコレを着てプレーするところを見てみたい気持ちはあるので、キャンプをバグチェックの場にしてもらえたらパーフェクトだ。

ひとまずはこのままで、ぜひこのユニフォームが日光の下で、あるいはナイター照明に照らされた時にどのように見えるのかを見てたい。

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