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『展望台』制作裏話

短編小説『展望台』が完成するまでの制作過程を、舞台となった愛媛県を交えながら紹介します。
ストーリーに触れる内容があるので、先に本編を読んでいただくのがおすすめです。

3000文字弱のショートストーリーです。

設定

この作品を書くきっかけは、私が参加している「ショートショート創作サロン」第2期の最終課題「モデルを決めて作品を書く」でした。

モデルとして指定された方が愛媛在住と知って、舞台を愛媛県に決定。主人公の設定もモデルを意識して借金背負ってもらい実家に帰らせました。笑

制作と推敲

過去に何度も訪れた大好きな愛媛の風景、街並み、温和な人柄、愛媛へ向かう道中、様々な経験を思い出しながら、思いつくままに楽しく書くことができました。

まずは書きたいことを一通り最後まで書き通したところで、文字数4,000字ほど。読み返すと、やや冗長な印象でした。
いろいろ細かい設定を盛り込みたくなるクセがあるなぁというのが自己分析です。

例えば、主人公が銀天街に行った目的。
実は銀天街から少し入った路地に鍋焼きうどん専門店があります。

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主人公はそこの鍋焼きうどんが食べたかったんですが、時間が遅くてその日の営業は終了していました。
気分は完全にうどんだったため、仕方なく引き返して銀天街の一角にあるはなまるうどんに向かいます。
高校時代の同級生の女性と会うのもこの辺りで、2人ははなまるうどんで食べながら近状を語り合います。

もう一つ、ここのレジで主人公が彼女に対して「自立した女性だ」と感じる行動を起こしています。その後の住宅ローンを一人で返済している流れにも少し絡めていました。

(ちなみに、はなまるうどんのかけ小+コロッケは個人的神コンビ)

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推敲の際、これらのうどんに関する一連の描写がけっこう幅を取っていたので、必要かどうか見直すことにしました。
試しにごっそり削ってみると意外とスッキリして読みやすくなったため、そのまま削除。
Evernoteにバックアップは取ってあります。いつか別の作品で使うかもしれません。

借金の理由は、当初の投資失敗案から先輩の起業融資失敗に変更。
投資そのものに対して悪い印象を持たれたくなかったので誤解を避けるためでしたが、主人公の認識の甘さと愚かさが出たので結果的に良かったと思っています。

さらに削られる設定

とにかく周りがみんな幸せに見えてしまう病の主人公なので、それを際立たせるための登場人物は色々考えました。

電車に乗り合わせた乗客を設定するために、横河原線の普段の乗客数、何両編成か、単線か複線か、沿線に何があるか(病院が多い)なども調べました。
横河原の駅舎がいつの間にか改装されていてショック!

その他、重信川の河川敷での風景、帰宅途中の描写、過去のトラウマで主人公が野菜嫌いな設定、などなど。

それらを全部盛り込んでいたら話が膨らみすぎるし時間も足りないので、結果的にはほぼボツ。
生き残ったのは銀天街を歩く高校生くらいですね。笑

生き残り

一方で、迷った挙句に消さなかった所もあります。

うどんを削除した勢いもあって、朝食メニューなんてものすごくどうでもいいんじゃないかと思えて迷ったんですが、息子が帰省した実家感というか、来客とはちょっと違うニュアンスが惜しくて残しました。

結果的に良かったです。褒められた!

その主人公が残した朝食は両親の昼食の一部になるのですが、そこは省略しました。

タイトル

実は今回、なかなかタイトルが決まりませんでした。
冒頭で与島PAのメロンパンの歌が登場することから、とりあえず仮題『メロンパン』で書き進めていました。
しまなみ海道を眺めて写真を撮るラストシーンも初期にほぼ固まっていたので、その間のストーリーを埋めていく中でそのうちピンとくるキーワードがあるだろうと楽観していました。
ところが、いよいよ結末が見えてきた段階になってもまだタイトルが浮かばず、仮題『メロンパン』のまま初稿完成。

私「課題を書き終えて、これから推敲です。タイトルが思い付かなくて、このままだと仮題の『メロンパン』になってしまいます(汗)」
師「おぉ、いいですね!メロンパンという題名も素敵だと思います。でも納得できるタイトルが見つかるといいですね!」

(優しいサロンオーナー兼ライター部部長)

推敲中も、色々考えました。『借金』『実家』『瀬戸大橋』『しまなみ海道』『瀬戸内海』『うどん』。。。まぁうどんは描写自体落としちゃったのですが。
本当に『メロンパン』で発表しかねなかったです。笑

結局、冒頭と最後で主人公が立つ共通の場所である『展望台』をタイトルにしました。
「これだ!」って程ではないですが、ちょうどのところに落ち着いた感じです。
タイトルを『展望台』にするなら、もう少し眺めと将来を絡めるとか、展望台というキーワードを生かす流れを入れられたら良かったなぁと後から少し思ったりもします。でもこれが今の私でした。

最後に

今治市は2回訪れています。そのうち1回は、開通したばかりのしまなみ海道を使って陸路で本州まで渡って尾道でラーメン食べてきました。自動車専用道と一般道を乗ったり降りたり繰り返した記憶があるので、当時はまだ未完成だったかもしれません。

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いよてつ高島屋の屋上にある観覧車には今治市ゆるキャラのバリィさん。

今回この作品のためだけに取材で愛媛に飛んでいきたい気持ち満載でした。
急に予定は立てられないので記憶と写真を頼りに書いたのですが、「愛媛の方ですか?」「四国出身ですか?」と作品の感想をいただいたのはすごく嬉しかったです!
美しい瀬戸内海、楽しい愛媛にまた訪れる機会がありますように。

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