見出し画像

「対話」が切り拓く人と組織の未来

現代のように正解のない世界でチームの進むべき方向をどのように見出していけばよいか? この課題への答えを「対話」に見出している 江頭 春可 さん、GAVIさん、石黒 太一 さんのご意見を紹介します。

1.ナラティブを重ね合わせる/江頭 春可さん

江頭さんは、「ナラティブ=それぞれが自身の体験の中でつくりあげた自分が主人公の物語」と定義していらっしゃいます。
私は、この「ナラティブ」を、これまでの人生経験から生まれた《自己と世界の関係についての物語》と理解しました。

江頭さんは次のようにおっしゃっています。

ビジネスの中では、非合理を排除する力が強く働きます。そのため、なかなか個人的な背景が語られ表出することがありません。しかし、その背景にはそれぞれのナラティブがあり、その文脈をすり合わせていかないと共に目的に向かうことができません。そこで、フラットな対話のできる場作りや、語ったことを客観的に眺めて建設的に話し合える観察の時間を取ることで、非合理の中から共通の合理を見つけ、そのあとの道筋(そのチームの物語)を共創していきます。〔出典:『組織とナラティブ』/太字部分は江頭さんが太字化〕

「非合理の中から共通の合理を見つけ、そのあとの道筋(そのチームの物語)を共創」すること。それは、正解のない世界での未来の創り方として理想的な形だと考えます。


2.インタープレイが決め手/GAVIさん


GAVIさんは、ジャズ奏者同士のインタープレイを以下のように定義なさった上で、組織内でもメンバー同士のインタープレイが創造の源となると指摘していらっしゃいます。

(インタープレイは)あるプレーヤーのインプロヴィゼーション(即興演奏)によって 他プレーヤーが触発されて 同じようにインプロヴィゼーションを返すことで 個人間で競合・共鳴・調和を繰り返しながら お互いのパフォーマンスを高め合うことで 組織としての最高のパフォーマンスに結び付ける感性〔出典:『ジャズで学ぶVUCA時代の組織論/太字部分はGAVIさんが太字化/(  )内は楠瀬補足〕

「個人間で競合・共鳴・調和を繰り返しながら」という視点は江頭さんがおっしゃる「フラットな対話」と重なるものであると、私は理解しています。

《個人間で競合・共鳴・調和を繰り返すフラットな対話》が成立するためにはある条件が必要であることを教えてくださるのが、心理的安全性についての 石黒 太一 さんの論考です。


3.心理的安全性を築く/石黒太一さん

石黒さんは、次のようなチームの現実を提起していらっしゃいます。

チームメンバーがお互いに気を使って遠慮しながら会話している環境と、お互いを尊重しつつも本音で会話できる環境とでは、あなたはどちらを選びたいですか。前者は大きな衝突もなく、空気を読みながらある意味では心地が良いこともあります。後者は耳の痛いこともド直球で伝えられますので、時としてザワッとすることもあります
〔出典:『心理的安全性が高いとどうなるか』/太字部分は、楠瀬が太字化〕

その上で、石黒さんは、次のように続けていらっしゃいます。

本音で会話できている環境は心理的安全性が高いと言われる一つの状態です。人が人に指摘をしたり、自分と考えの違う場合に自分の意見を伝えるということは心地がよいものではありません。しかし、チームで活動する上で見て見ぬふりをしたり、なあなあでやっていると決して高い成果が出るとは思えません。〔出典:『心理的安全性が高いとどうなるか』/太字部分は、楠瀬が太字化〕
手段や方法が少し違うだけで目指すべきところは同じという場合に、互いに考えていることを腹を割って話をすれば、次なる打ち手が見つかります。このコミュニケーションができるかどうかが重要です。〔出典:『心理的安全性が高いとどうなるか』/太字部分は、楠瀬が太字化〕

さらに、心理的安全性が高いと少数意見が表出しやすいのでイノベーションが促進されるともおっしゃっています。

心理的安全性が高いとイノベーションが生まれやすいとも言われます。物事を決めたり議論するときに、多数意見によって決まっていくことがあります。少数意見は数が少ないということで選ばれないというのが多数決というものです。しかし、イノベーションというのは、まだ私たちが気づいていないニーズやアイデアが形になっていくことがあります。そのヒントが少数意見の中にあるのです。〔出典:『心理的安全性が高いとどうなるか』/太字部分は、楠瀬が太字化〕

以上、3人の方のご意見を紹介してきましたが、正解のない時代の人と組織のあり方を考える上で示唆にとんだご意見であり、私は学ぶところがとても大きいものがありました。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


『「対話」が切り拓く人と組織の未来』おわり




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?