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手描き京友禅の羽田登喜です。私の仕事、祇園祭、そして京都について。

自然と人と文化が共存できる社会へ

こんにちは。
手描き友禅の技法で主にきものを制作しています
羽田登喜と申します。

我が家は三代続く手描き京友禅の工房です。
祖父が金沢で加賀友禅を学び、その後憧れの地である京都で京友禅を
修行し、そのまま京都で独立して手描き京友禅の工房を構えました。
京都では従来、一枚のきものを分業で作り上げますが、
祖父は、京都で自分らしさを発揮するために加賀友禅の特徴である
一貫作業でやっていこうと決めました。

友禅色射しのための筆と片羽   
色を分けて使います


スケッチをし、デザインを考え、草稿を描き、
下絵、糊置き、色挿し、伏せ、地染め、蒸し、水元など
全ての工程を自分で。

地染め用の刷毛

分業でなされているそれぞれの工程の
腕の良い職人さんがたくさんおられる京都で
切磋琢磨し、努力を重ねた祖父の思いを受け継いで
父、そして私も一貫作業で仕事をしています。

色刺しのための染料

私たちの仕事や、工芸全般にかかわることだと思いますが
季節、四季の移り変わり、が凄く大切です。

工房での作業

昔からきものの文様の特徴は
その季節に合うものを描くことです。
そして季節を少し先取りするのが
お洒落であり、着る人のセンスの見せ所でもあります。
このまま地球の温暖化が進んでいくと
もしかしたら四季がなくなってしまうんじゃないか?
と恐くなります。

白生地を測る

きものは
10月から5月までは袷  (あわせ:胴裏、八掛がついたもの)
6月と9月は単  (ひとえ:裏地がついていないもの)
7月と8月は絽  (ろ:透け感のある涼しい生地のもの)
を着ます。

羽田登喜作「春の譜」

一年中、薄い絽を着なくてはならないくらい
暑い季節ばかりになってしまったら。
咲くべき時にその季節の花が咲かなくなってしまったら。
四季と寄り添い、四季を愛でる文化が無くなってしまいます。

糊糸目の中に色挿し

地球の環境を守る活動は、
我々の文化を守ることに繋がると思っていますし、
またそういうことを啓蒙していかなければと思い、
KYOTO Sustainable Networkの一員として
動き始めています。

昭和56年に117年ぶりに再興した蟷螂山

京都の夏といえば祇園祭から始まります。
今年はコロナ禍を経て、2年ぶりに山鉾巡行をされます。
我が家にとって祇園祭といえば、巡行を見に行ったり
宵山に夜店をのぞいたりという楽しみ方だったのが
祖父が蟷螂山の全懸装品を制作したことから
蟷螂山さんとのご縁が出来ました。
蟷螂山は、元治の大火(1864年)でその大部分を消失してしまいましたが1981年に117年ぶりに再興されました。
蟷螂山の町内が染色に携わっている方々が
多く住まわれているところだったので
他の山鉾の懸装品のほとんどが織物で作られていますが
染色の懸装品を、ということで祖父に制作を依頼されました。
祖父はとても名誉に思い
家族みんなで大変喜んでいたのをよく覚えています。
私は小学五年生でした。

前懸「瑞祥鶴浴之図ずいしょうかくよくのず」
胴懸「瑞苑孔雀之図ずいえんくじゃくのず

祇園祭は今後もずっとずっと続いていくお祭りなので
祖父と父は、百年、千年という時間の中で
染め上げた色が変わらずに長持ちするように
染料の研究、白生地の研究を重ねました。
白生地は市内の白生地屋さんや
白生地の産地にもご協力いただきました。

昨年、蟷螂山復興40年を記念して羽田家三代としてデザインした授与品

祇園祭の懸装品は、全てに謂れが有り
動く美術館と言われています。
その中でも、一から新調して
その山の為に1人の作家がデザインから制作までを手掛けた懸装品で
フル装備されているのは蟷螂山ただ一つなので
とても見応えがあると思います。

京都の魅力とは、当たり前のように
良いものが身近にあるところだと思っています。
京都のいけずとか
京都の人は難しいとおっしゃいますけど
それも全て自分にも他人にも厳しいがゆえというのか、
冷たいように見えて、知ってしまったら物凄く内面が熱い人達じゃないかと。

京都の人ってとても美意識が高いと思います。
当たり前のようにお寺があったり
当たり前のように美術品、工芸品を見ながら
生きてきていると思うので
すごく目の肥えた人たちがおられる場所だからこそ
これだけ美術、工芸の作家が生きる歓びがある。
うちの家が着物を作ってるというのは
我に返った時に面白いなと思うんです。
だってそれでご飯食べているわけです。
そういう家がたくさんあるというのは
凄い町だと思います。
しかも有名な作家がいっぱいおられる。
このKyoto Sustainable Netoworkもそうですけど
すごい面白い人たちがいっぱい。
古い物が残っているのではなく、
新しいものを作り出せる人がたくさんいることこそが
京都の1番の魅力だと思います。

自然と人と文化が共存できる社会へ
KYOTO Sustainable Network





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