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306号室

これは病院で夜間勤務のアルバイトをしているAさんが実際に体験した話。

その病院の敷地は三角形で、不思議な形をしていた。
病院で人が亡くなることはそう珍しい話ではないが、それにしても入院して間もない患者が立て続けに亡くなってしまうという不可解な部屋があった。
それが306号室である。

その部屋では誰も居ないのにナースコールが鳴ったり、何かが焦げたような臭いが立ち込めるという状況が続き、一年前のある日、ついに業者を呼ぶことになった。
業者は30分ほど作業をすると、「機械の異常はありませんでした。」と言ってそそくさと病室を後にし、「次からは絶対に呼ばないでください。」と言い残して帰っていった。
Aさん含め、その場で聞いていった看護師は顔を見合わせ絶句した。

その後も306号室に入院する患者は多く、亡くなる人も後を絶たない。
それに加え、この部屋で30分以上業務をしていた医師や看護師も次々と辞めていった。
Aさん自身も何度かこの病室で業務をしていたが、次第に重くなっていく肩や、まるで見えない何かに押さえつけられているかのような重圧に耐えることができず、30分も滞在していられなかった。

今では沢山の看護師の証言や訴えにより、306号室は入院患者を入れず、医師も看護師も誰も立ち入らない部屋になった。
それでも絶えず306号室からのナースコールは鳴り続け、電源を切っても尚止まることがない。

物音や悲鳴が聞こえることもあり、事情を知らない隣の病室の患者から「叫び声が聞こえて眠れない」という訴えが相次いでいる。

Aさんは306号室のことを自分で調べられる範囲で調べた。
上下の206号室や406、506、606号室は病室として使われている部屋が一つもなく、物置や書類保管室として使われていた。
縦の並びで考えると何故か三階だけが病室として使われていた。

そして、Aさん曰く306号室で一番最初に亡くなった方が不可解な現象の発端になったのではないかと。
その方は精神疾患を患っていた。
ある日いきなり自分の体に火をつけて焼身自殺をした。
どう書いたかは定かでないが、壁にはその方のものと思われる血で
【うらみつづける】
と書かれていたそうだ。
今は壁の文字はきれいに消されているが、ベッドの下の床は確かに今でも焦げ付いて黒くなっていた。

一連の出来事は果たしてこの方の恨みからなのかは定かではないが、相当強い念が306号に渦巻いているのだろう。

Aさんは今でもこの病院で夜間勤務をしている。

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