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GRⅲxを買った。なんでもない日々を額縁に入れたくなった。

みんなGRを買い始めた。

主語が大きいのは良くないというが、本当にみんな買っているのだ。
少なくとも私の周りのカメラ友人たちはみんな。

そんなに良いものかと思う一方、とはいえ使いこなせないだろうという思いもあった。
少し前にPixel7を購入して、そのカメラ性能の高さに満足してしまっていたこともある。


今から6年前の夏、私は初めて自分でカメラを購入した。
手に入れたのはFUJIFILMのX100F。
それまでは祖父の形見であったCanonの5DMark2という一眼レフカメラを持ってはいたが、初心者の私にとっては宝の持ち腐れもいいところで、そのうえ一眼レフカメラはとにかく携帯性に欠ける。

そんな中で手に入れたX100Fは最高の相棒だった。
どこにでも持ち出せるポータビリティ、インテリアとして成り立つほどのデザイン性の高さ、そしてそのコンパクトさからは想像もつかない写りの良さ。
高価ではあったが、私と私にかかわる人たちを美しく切り取ってくれる、唯一無二のツールだった。
X100Fを通じて知り合った友人たちは数知れない。
私にとってX100Fは、撮影機を超えた価値のある存在だった。


コロナ禍に突入したころ、カメラを持ち出す機会はすっかりとなくなり、今となってはカメラに対する熱はもはや風前の灯火。
ただ、ともに過ごしてきたX100Fを手放す気もない。
たとえ動かなくなったとしても、この相棒は手元に置いておくのだろう。

そう思っていた。

そんな中、私の観測範囲でさまざまな人が口をそろえて言い始めた。
「GRはいいぞ」

最初のうちは「まあ数人の好みに刺さっただけだろ」と思っていたが、身の回りで購入していく人が増えるにつれてさすがに気になってくる。そんなにいいのか。

みんながGRを推すポイントのひとつに「ポケットにGRさえ入れておけば、だいたいのシーンは事足りる」という点があるらしい。

実は、荷物をなるべく少なくしたいと思っていた私にとって、X100Fは少しずつフィットしなくなっていた。
コンパクトではあるが、ポケットに入るようなサイズではないため、X100Fを持ち出すときは何かしら鞄に入れる、もしくは首から下げる必要があったのだ。

そんな私とX100Fの間に生まれたスキマに、GRの存在はそっと寄り添うように佇む。
買うか、買わざるべきか……。


そんな悩みに対して見て見ぬふりをしながら過ごしていた年の瀬、Twitterを眺めていると塩谷舞さんが「今年買ってよかったもの」をツイートしていた。


「あ、買おう」
このツイートを見て、なぜか直感的にそう思った。

インフルエンサーの投稿を見てカメラを買うなんてすごくミーハーで恥ずかしいことと思ってしまうし、何か他のそれらしい理由で取り繕おうかとも思ったけれど、嘘をつくのはよそう。実際に突き動かされてしまったのだからもう仕方がない。

気付くと私の部屋には、X100Fの魂を受け継いだGRⅲxが佇んでいた。


ここまで語っておいて、私はカメラのことについて何も知らない。
正直「それっぽい写真が撮れればいい」程度だけれど、それでもこのカメラと出会えてよかったと思う。

それは、2022年になって飼い始めた2匹の保護猫がいることも大きく起因する。

夏が始まる頃、2匹の保護猫を我が家に迎え入れた。
人生で初めてのペットだった。
幼い頃は喘息やアレルギーのせいでペットを飼うことができず、デフォルメされた猫のぬいぐるみなどでガマンしていた私にとって、こんなに愛らしい生き物はない。
スマホのカメラロールが猫で埋まるのに、そう時間はかからなかった。

猫たちが飼い主に慣れてきた頃、スマホを向けても逃げないようになってきたこともあり"ちゃんとした写真"が撮りたくなってきた。
そこでGRである。

何の気なしに撮れるのに、なんだか情緒を感じてしまう。
いわゆる「エモい」という要素に近いが、愛くるしい我が子があまりにも素敵な一枚として記録されているのを見ると、本人(猫)たちを直接目に入れているのとはまた違う尊さが湧き出てくるのだ。

かわいい。親バカである。


少しずつ旅行が許されてきた雰囲気のある昨今、外出の機会も増えていくかもしれない。
あるいはそんな世の中の雰囲気に身の危険を感じて、より外出を避ける人もいるかもしれない。

その是非を私が判断することは到底できないが、どちらにおいてもGRはそっと佇みながら隣にいる私の人生を記録してくれる。

額縁に入れる写真が必ずしも観光名所の思い出とは限らないし、自宅でたまたま撮影した写真が玄関に飾られることだってあるかもしれない。
どんな場面の写真であれ、きっとそれはGRが描いてくれた一瞬なんだろうと思う。

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