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私が浴衣を作る理由

こんにちは。
染屋4代目の平本ゆりです。

今日は「私が浴衣を作る理由」について書いてみたいと思います。
そもそも、創業から100年近く自社商品が1つもなかった染色工場です。
初めてのプロダクトになぜ浴衣なんてニッチなものを選んで作ったのか、これは私の経歴を知っている友人知人からよく質問されます。

”浴衣(和装)は時代と逆行している” ”着る人少ないし売れないよ”と、
私を心配する友人からは口を揃えて言われた言葉です。
私は元々、都内のデザイン事務所に勤めていたので、周りの人間も必然的にアートディレクターやデザイナーが多いので、みんなマーケティングや市場の動き・関心に敏感な人たち。色々と考慮した上で心配して言ってくれている言葉なのも重々理解していました。

どうして、周りの反対を押し切って初めてのプロダクトに浴衣をわざわざ選んだのか、そんな話を書いてみたいと思います。

−良いアイデアとは多方面から見て、様々な問題をクリアしている必要がある−

この言葉は、私がグラフィックデザイン事務所に勤めていた時に社長から言われた言葉です。
例えば、クライアントから出された課題(仕事の依頼)に対して、ある1つの課題しか解決できていないデザインは、クライアントに提案しません。あらゆる企業が様々な問題をデザインの力で解決するために依頼してくれているので、企業側から出された懸念点など問題はできる限り全てを解決できる方法をデザインで探ります。

見た目がどんなにカッコ良くても、クライアントの要望が解決できていないデザインは良いデザインとは言えないのです。

例え、かっこいいデザインをしても、課題を何もクリアできていないデザインは、いつか飽きられ、古びて見えてしまうのです。
その反面で、全ての課題を解決したデザインは飽きる事なく、強く、永く愛されるデザインになります
私のいたデザイン事務所は、デザインしたものが業界売り上げNO1になる事で有名でした。事務所にいた時はその様な経験をできた事がとても貴重でした。そんな経験をしていたので、自分の物差しだけで考えず、様々な視点から自社商品は何を初めに作るべきかを考えました。
長く、強く、愛される商品を作りたいし、作るべきだと。

<自社商品を作る上での課題>
”自分たちの強みってそう言えば、何?”

うちの工場の強み…
正直、初めは本当に分かりませんでした。
デザイン事務所では、様々な企業の問題解決ができたという自負があったので、自分の実家も同じ様に問題解決ができるはずだと意気込んでいましたが、自分の身内の話になるとまるで違って見えてきます。

創業から100年なのに、何が強みかわからない…

私自身、染色技術についてまだ何も理解できていない頃だったので、それも有りなかなかブランディングに手こずりました。

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