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熊本シティFM番組「ラジオリンカーン」が予想以上の面白さであることについて。

人生は思ってもいないところに曲がり角がある。

昨年末に会社を辞めてから、ずっといろいろ曲がってきたような気がするが、今回もまた大きな曲がり角だった。


1ヶ月半ほど前。

自転車で「マンハッタンのカフェ」と名付けた、眠気防止に訪れる熊本の街の中のスタバへ急いでいたときのこと。
とあるセブンイレブンの前で電動車イスを操る地域の先輩に出会った。この先輩は夜の街の先輩であり、幼稚園・小学校・中学校の先輩でもある。

ココで出会ったのも何かのご縁、というわけで失業中の僕はこの1ヶ月半ほどのあいだにその先輩とお酒をご一緒し、会議をご一緒し、という日々を続けてきた。
そんなある日、先輩がひとこと、
「来週、ラジオに出て」。

先輩との学年の差は1年
しかしその1年にこそ無量大数の重みがある、というのは地方の町の中学生あるあるである。

まじ?と思っていたら、出演当日午後にメールが。
「マーケティングプランナーからみた熊本中心市街地・ウォーカブルな都市づくりに基づく自転車という乗り物の位置付け、車椅子とベビーカーについてば、話して」
多少語尾は違うが、そんな感じのメール。

マーケティング?ウォーカブル?自転車?車椅子?ベビーカー?
いきなりの具体オーダー。
一年の無量大数の重さは計り知れない。
というかその話の行き着く先が、とうとうたる海の向こう側が大きな滝になって落ちているみたいに遠くて見通せない。

なにしろラジオで声を出すことじたい、高校生のときに声だけ出演した文化放送「青春キャンパス」スタッフのとき以来のこと。

もうね、頭とっちらかるわけですよ。

熊本のコミュニティFMの番組だから構成台本とかはない。
そんなマイクの前で話すとは、NAVIもなく大海に漕ぎだすようなもん。

最初にゆっときますけど、アドリブは利きません。
そんな宣言をしつつとにかく本番に臨むことになった。


……と。


最初書いた原稿ではこのまま出演顛末記を書いていたのだが、
気が変わった。内容を変更する。

この「ラジオリンカーン」という番組について、熊本市以外の人に説明したい。
放送しているのは熊本シティFM。
熊本市ほか関係者が出資したコミュニティFMである。

熊本地震の時には持ち前の身軽さを生かして、停電中に手作業で復旧し放送を再開。たしかホンダの携帯用発電機を使ったはず。
余震が続くなか通常番組をすべて停止し24時間生放送の災害ラジオを17日間も続けるなど、ホントに気骨あるFMなのだ。
特に避難所で気落ちしている大人たちを元気付けるため、熊本市内のすべての小学校の校歌をラジオで流すなど、地に足のついた災害復旧ラジオぶりを発揮した。

そのあたりのエピソードはこちらに。
https://core.ac.uk/download/pdf/228688796.pdf


そんな熊本シティFMには、公共のための番組がいくつもある。
例えば熊本に住む外国からの方に対する情報提供番組「The Kuma Post https://fm791.jp/program/105 」とか、
今回取り上げる「ラジオリンカーン https://fm791.jp/program/156 」とか。

この「ラジオリンカーン」は車イスユーザーの長江浩史さんと浅川浩二さん、合いの手を入れ流れを作る高知穂さくらさんの3人がメインパーソナリティ。
そこにたまにゲストが絡む。
この長江さんが冒頭の先輩である。

放送の雰囲気はこうだ。
昔バリバリで、今は車椅子ユーザーとしてむしろパワーアップした長江さん。
アップしたのは生きるエネルギーだけではなく、哲学的な諦観と希望の心の深さだ(きっと)。

対するはクリエイティブの知将である浅川さん。
最年長さんとして長江さんのパワーを受け止める。

この50代60代の暴走気味の2人に、すっと入るのが合いの手が上手お姉さんが高知穂さん。
出演の3人の中では最も若いのに、仕切りがすごい。
おじさん2人を飼いならしている感さえある。

そんなこの番組には、福祉系の方や、街を住みやすくするために弱者の視点から街の構造や意識を変えたいというアイディアを持つ人が登場する。

ともすれば固く、真面目な、コレクトネス系になりがちなテーマなのに、人生の深みを覗いてしまったおじさん2人の暴走気味の会話を楽しく聞いているうちに、僕の中に知らなかった世界が広がる。

この番組の先々週の放送をスタジオ内で見学させてもらった。
その週はスポーツサイクル店で働き始めたBMXの妙手であるテンマくん(20歳くらい)がゲスト参加。

ちゃっかりお店のPRをしつつ、街とサイクルライダーの関係を良くするための初歩的なマナーの説明などを語る。

その合間に挟まれる50代60代のおじさんの、世の中を知り尽くしたゆえの深みのある軽い話w。


この井戸端会議感。
もっともっと聴きたくなる、そんな感じ。
昔のトーク系ラジオにはよくあったよ。

制作費削減のために自局制作ではなく、東京などから俗に「缶詰」と呼ばれる、制作会社や局が制作したアイドル系タレントの「トーク」番組(多くは若い構成作家が書いた台本に沿って話している)が増えて、こんな同席感あるコンテンツが今のラジオには減ってしまった。

こんな田舎の(失礼)、こんなに制作費がなさそうな(失礼)、金魚鉢(副調整室)もないようなスタジオ(失礼)からの発信の、こんな番組に出会えるとは。

特に社会的にハンディと見られがちな車椅子ユーザーである長江さんの、包容力ある語りがとてもよくて。往年の新野新か、上岡龍太郎か、あるいはオールナイトニッポンの松山千春か中島みゆきか、山崎ハコかと、そんな時代を思い出してしまった。

参考事例 山崎ハコ「さらば良き時代」
https://www.youtube.com/watch?v=BYWi6Xz79g8

山崎ハコさんのオールナイトニッポン聞いた後はいつもズーンとしていたが、まあ皆さん雰囲気だけでも。

参考事例 新野新と笑福亭鶴瓶「ぬかるみの世界 第1回」
https://www.youtube.com/watch?v=kF_C2njNDCY

「ぬかるみの世界」は衝撃だった。
熊本の高校生時代、熊本の遠隔地から大阪のこの番組を眠い目をこすりながら聞いて、翌月曜日の朝眠たげな顔をしている同級生が1、2人クラスにいたものだ。

それはともかく、先々週のスタジオ見学が終わった時に「眞藤くん、来週よろしく」と唐突に言われたのであった。

さて。
ラジオリンカーンの放送日は火曜日。
時間は20時からの1時間。
今日もこのあと放送だ。
電波による可聴エリアは熊本都市圏。だが世界にはインターネットがある。
後追い聴取はできないがリアルタイムならPCやスマホなどでできる。
僕は出ないが今日の放送も楽しみでしかたない。

熊本シティFM のリアルタイムインターネットサイマル放送はこちらhttps://www.jcbasimul.com/?radio=fm791

なお、僕が出演した時の顛末はきっと次回のnoteに。

書ければ、書く。

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