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春の宵

今日は一日、雨が降っていて、とても静かな日曜日でした。
夜になって、雨は上がりました。

今日も りこちゃんとこざる達は いつものように
皆で一緒に 楽しく夕飯を食べました。
そして のんびりと 食後のお茶を飲んでいます。

「では読みます。」
こざるちゃんが そう言って、立ち上がって一礼します。
今夜は こざるちゃんが詩を朗読します。


「春宵感懐
中原中也

雨が、あがって、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあったかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息が、
なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、掴めない。
誰にも、それは、語れない。

誰にも、それは、語れない
ことだけれども、それこそが、
いのちだろうじゃないですか、
けれども、それは、示かせない……

かくて、人間、ひとりびとり、
こころで感じて、顔見合せれば
にっこり笑うというほどの
ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがって、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあったかい、風が吹く。」

朗読が終わって、こざるちゃんが一礼します。
皆が 拍手します。

「あー、とってもいいねー。」
「うん、ちょうど今夜にぴったりだよ。」
皆、うんうん頷きます。

「りこちゃんの本棚から借りたんだよ。」
りこちゃんも嬉しそうに頷きます。
たくさんの昔の本が りこちゃんの本棚にはあります。

戦後の食うや食わずの時に子ども時代を過ごした りこちゃんは
読書が大好きで、隣の駅の貸本屋さんによく通っていたそうです。
お金を節約する為に歩いて通っていたと言っていました。
他に娯楽もありませんから、そんな子どもは特に珍しくもなかったのだと思います。

「ひなあられの 残り、まだあるよー。」
「柿の種もあるよー。」


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
次々と草木が芽吹いて、花が咲き始めて、春なんですよね。
よい毎日でありますように (^_^)


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