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あなたは効率を追求する病院で診療を受けたいですか?数字で管理する弊害

従業員を評価するにせよ、フィードバックを与えるにせよ、できるだけ具体的な数字を用いて(定量的に)おこなう方が、説得性が高く効果的だと考えがちです。
例えば病院で「効率性」を測るのであれば、1日に診療できる患者の数かもしれません。あるいは営業で「行動力」を評価したいのであれば、提案件数が求められるかもしれません。

しかし、定量的な評価はかえって視野を狭めて検討ちがいの結果を招いてしまうこともあるのです。


病院で本当の「効率性」は測れるか?

冒頭の病院のように、1日に50人の患者を診療できれば「A」評価が与えられ、40人だったらら「B」評価だとします。これはだれがから見ても「効率性」に関する客観的で絶対的な数字です。それにより予約で患者が待たされることも少なくなり、病院の経営も改善するでしょう。

しかし、すべての患者が必ずしもすばやい診療を望んでいるとは限りません。自分の病気が一体どんな病状なのか心配で、専門家である医師に適切なアドバイスや相談を受けたいと望んでいる患者もいるのです。患者の話しに耳を傾けようが傾けまいが、診察結果や治療方針に影響ないかもしれませんが、患者が欲しているのは「効率性」ではなく、「安心感」なのです。

そして患者の「安心感」は、定量化(数値化)できないのです。

提案件数だけで営業マンの成績は測れない

同様に、営業マンの提案件数を評価対象とすることも、一見すれば合理的な方法に感じます。提案件数が増えれば成約数も増えるからです。しかし大事なのは成約率の方かもしれません。10件提案して3件の成約数なら、5件提案して3件受注できた方が効果的です。

では、「成約数」を評価対象にすればいいのではないかと思うかもしれませんが、もっと大事なのはその成約した中身なのです。中身とは、必ずしも受注金額のことだけではありません。今後のリピーターにつながるか、あるいは友人を紹介してくれるかといったことにも及びます。そしてそれら顧客の「満足度」も、単純に定量化(数値化)することはできないのです。

1940年代にアメリカの成人男性の性行動を調べた「キンゼイ・レポート」という調査がありました。その際、調査に協力した男性がこんな不満を述べていました。「こっちが何を言っても担当者は私の目をじっと見つめてこういうのです。『週に何回ほどなさっているのですか?』」。大事なのは数字じゃないのです。

ザッポスの通話時間は無制限

みなさんはアメリカにあるザッポスという靴の通信販売の会社をご存じでしょうか。あのアマゾンが敵対的に価格競争を仕掛けてもどうしても勝つことができず、最後は負けを認め、12億ドルという破格の値段で買収した企業です。

通常、顧客から注文を受けるコールセンターは、どれだけ早く注文までの処理時間をこなせるかが評価の基準です。しかしザッポスには応答マニュアルもなければ、通話時間の制約もありません。顧客のたわいもない世間話に耳を傾けたり、あるときは、子どもの靴を買う役目だった夫を亡くしたばかりの未亡人に親身に寄り添い話しを聴き、そのときの通話時間はなんと8時間でした。なぜならコールセンターの仕事は、ただ単に電話に出てオーダーをとること、苦情を受けることではありません。彼らの仕事は「顧客に幸せを届けること」だからです。

数値で評価するのではなく、頭で判断する

数値化することが決して悪いことだと言っているわけではありません。数値は客観的で絶対的なものです。公平に評価するのであれば、数値はもっとも説得力のあるものかもしれません。
しかし、すべてを数値に置き換えて評価するのは考えものです。なぜなら定量化(数値化)できない指標もあるからです。あなたがもし部下を持つ上司であれば、部下を数値で評価するのではなく、よく観察し、頭をつかって判断すべきなのです。


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