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自分に厳しく他人に優しい上司は部下をダメにする

自分には厳しいが、部下に優しい上司は、部下にとってはまるで理想の上司のように思われます。しかし部下を甘やかすことは、必ずしも部下にとって良い結果とはならないようです。実際、理想の上司というのは、どういう上司なのでしょう。

(1)自分にも厳しく他人にも厳しい。(2)自分には厳しいが他人には優しい。(3)自分には優しいが他人には厳しい。この3つのうち、どのパターンがもっとも好ましのでしょう。


モデルの行動が価値基準に影響を与えるか

コロンビア大学の教授であった心理学者のウォルター・ミッシェルは、子供たちが高い価値基準を持ち、目標に向かって努力するのは、手本となる大人の行動に影響を受けるのではないかと考え、ある実験を行いました。

彼は小学生を集め、一種の子供向けボーリングゲームに参加してもらいました。ゲームで高いスコアを取るとチップがもらえ、そのチップはゲーム終了後に、キレイに包装された部屋のよく見える場所に並ばれた賞品と引き換えることができることになっていました。

ゲームは、研究者が用意したモデル役となる成人の女性と子供が1度に1投ずつ交替でプレイすることになっており、モデル役の女性は前述のように3つのパターンを演じてもらうことになっていました。

3つのシナリオ

「厳しい基準」のシナリオでは、モデルは自分自身にも厳しく、子供に対しても同様に厳しく接しました。点数が高いときには、「これならチップを1つもらってもいいわね」と自分をほめる言葉を述べたましたが、逆にあまり高い点数ではないときは、「あまり良いスコアではないわね。これでチップはもらえないわ」と、自分に対して批判を口にしました。
彼女は、子供の成績に対してもまったく同様に扱い、スコアが高いときには褒め、低いときには批判的な態度をとりました。

「モデルに厳しく、子供に甘い」シナリオでは、モデルは自分自身に対しては厳しかったのですが、子供には寛容で、仮に子供が低い点数を出してしまった場合でも、ご褒美を与えるように仕向けました。

「モデルに甘く、子供には厳しい」シナリオでは、モデルの女性は自分自身には寛容で、低い点数でもチップを受け取り、反対に子供には、最高点のときにだけご褒美を与えさせる厳しい基準を課しました。

その後、今度はモデル役の女性は参加せず、子供ひとりだけでゲームをプレイしてもらうことにしました。その際に、子供たちがどのようにチップをもらうための自己基準を設けるか、こっそり観察したのです。

一貫性のある厳しい基準が努力を促す

すると、自分自身にも子供にも厳しかったモデルから学んだ子供は、もっとも厳しい基準を採用しました。モデルが不在でも子供たちは一度として逸脱せずに、その厳しい基準を自分に課し、目標に向け努力していました。
反対に、自分に甘くするよう促された子供たちは、子供だけになったときも、甘い基準を設ける傾向がみられました。
そして、自分自身には甘いのに、子供には厳しい基準を押し付けてくるモデルから学んだグループは、およそ半数が教えられたとおりの厳しい基準を守り続けたのに対し、残りの半数は、モデルが自分自身に甘くしたのと同じ甘い基準になってしまいました。

子供にいくら厳しい基準を設けても、モデルが一貫性のない甘い基準を設けていれば、やがてモデルと同じ甘い基準になってしまうといういうことです。また自分自身に厳しい基準を設けたからといって、子供に甘い基準を設ければ、子供がすすんで厳しい基準を課すことはないということです。

職場であっても同じ

この研究は子供を対象としたものではありますが、大人であっても似た結果になるのではないかと想像されます。甘い上司のもとでは甘い部下が育ち、自分には甘いのに部下には厳しい一貫性のない上司のもとでは、上司のいる前では懸命な姿をみせても、目の届かないところにいけば、甘くなってしまうということです。

上司は部下の手本となるように自分自身に厳しくあるのと同時に、部下に対しても毅然と部下が高い基準をもって目標を達成できるように促すことが大事なのです。


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