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“女子から嫌われる女子”と語り合ったら、互いの良さを尊重しようと思えた

あざとい、ぶりっ子、空気読まない、ズル賢い……みなさんの周りに、そんなイメージのある方はいるだろうか。

今回は、そんな方の思いを知るために、また私の思いをぶちまけるために、妬まれ系(?)女子のM香(仮名)とのやり取りを、インタビュー形式でお送りしたいと思う。
※こちらは私とその知人のビデオ通話での内容を抜粋・編集し、許可を得て掲載したものです。心の拠り所にしつつ、ほどほどにお楽しみください。

M香:とある企業に電話営業として勤務している。内向的な性格ゆえか私生活では人と接することが苦手で、友達はほとんどおらず、同性に好かれていないと感じているとのこと。また恋人がいない期間は1年半らしい。横比良とは互いの地元愛知県の私大で出会った。横比良の仮面浪人後も、なんだかんだとやりとりを続けている。

横比良:エロとナンセンスだけが友達。

まずは2人の距離感から

M香「まず聞きたいんだけどさ、よこっちはあたしのこと好き?」

横比良「いや、嫌い。良い子なのは頭で理解してるんだけどね……苦手というかごめん、どうしても好きになれない」

M香「面と向かって言えるのすごくない。ツンデレなん?」

横比良「なんだろう……『足の爪の匂いを嗅いじゃう』みたいに、ついついそちらの動向が気になってしまうだけで、やっぱり基本的には無理かな」

M香「でも連絡はしてくれるんだよねー」

横比良「愚痴の吐け口に丁度いいんだ。引かれても疎遠になっても平気だから」

M香「声が据わってるからこれはガチ」


何が“無理”なんだろう……?

M香「でも無理ってどういうこと? 雰囲気とかが合わないの?」

横比良「それはどうだろう……個人的に受け付けないってのはあるけど、根本的な理由じゃないんだよな」

M香の容貌は“垢抜けており、普通に可愛い”
ファッション等含め量産型とも呼べるが、恵まれていることには違いない。都会の私大生っぽさそのもの。

M香「受け付けられるように、よこっちも色々冒険して見た目とか気を配ればいいのに」

横比良「ダマラッシャイ。私は性に合わないことはしない! 毎日(しかも現職場でも)パーカーとジーンズしか着ないのも、自分が落ち着けるようにしているだけ。コンタクトも上手くできんかったし」

M香「ひねくれてるわー。メガネで目元や鼻の印象をごまかしてるんだっけ。服もそうだけど、それがかえって変なこだわりに見られて、周りから浮くよ?」

横比良「浮くも何も、誰とも関わらないんだからもはや人の目が気にならない。友達もおらんし」

M香「そうそう友達! 友達ってなかなかできないよね〜」

横比良「(急に共感してきたぞ……!)」


女友達との付き合い方がわからない

横比良「いやいや、あんた仲良い子いるでしょ。いっつも6人グループの」

M香「あたしのアカウント見てくれてんだー!」

横比良「は、え、違うしっ、他の子が気になるだけだから……!」

M香「グループでいてもさ、その中でさらに集団で分かれたりするでしょ? そういう時に“自分は誰と話したらいいかな”とかめっちゃ気にしちゃう

横比良「そもそもの集団に入れてんだからいいじゃん、派閥つくるなよ」

M香「みんなで飲んでると、自分に話が振られるときない? “何話せばいいんだろう”とか“これ言ったら可笑しいかな”とか考えちゃう。コミュ障なんだよね。こういう2人きりの場だと全然平気なんだけど」

横比良「気にせずに打ち解けあえるのが友達なんじゃないの。グループの子は本当に友達なの……!?」

M香「それぞれの子と、みんな同じくらい親しいわけじゃないでしょ? 〇〇ちゃんとはどう接して、△△ちゃんとは何から話そうとか、いちいち振る舞い方を考えずにいられない

横比良「いざひとりひとりと向き合ってみると、知人以上友達未満の存在が多いと気づいたわけか」

M香「なんか、何も考えずに気軽に遊びに誘える相手が欲しい。人との距離の詰め方、忘れちゃった〜

横比良「ほう……」


友達はいない、でも彼氏はいる

横比良「でも彼氏いたじゃん」

M香「そうそれ! 異性は平気なんだよ」

横比良「は? リア充ふざけんな似非ぼっち」

M香「あ、キレた。しかもリア充て笑 社会人になってこんな台詞聞けるとは思わなかった」

横比良「私の心身は14歳で成長止まってんだよ。虚しくなるので続けて」

M香「仲良くなりたい男の人相手だとさ、彼女になりたいっていうゴールが最初から決まってるじゃん。だからどうやって近づこうとか意識的に考えられる!

横比良「へー男は平気なんだ、ほーーん」

横比良「じゃあ好きじゃない男の人とはどうやって接するの???」

M香「わざわざ関わらなくてよくない?

横比良「…………」


男女によって態度が変わる
それってあざといと思われてるのでは……?

横比良「女の子相手でもさ、同じ趣味で楽しみたいとか、どこどこに一緒に行ける人を見つけたいとか、そういった目的はないの?」

M香「うーん…………それを伝える方法がよくわかんない。すれ違う人に“〇〇に興味ないですか”って訊いて回るの? って感じ」

横比良「そんな極端な。でもこっちは、なんでM香が嫌われるのか、ちょっと掴めた気がする」

M香「なに?」

横比良「男性と接するのは平気で女性との接し方はわからない、ってのがタチ悪いかな

M香「でもしょうがなくない?」

横比良「それだと、気に入った男の人ばかりに媚を売っているとか、男女で態度を変えている……つまりあざとい、って思われてるかもしれない」

M香「そんなつもりないしっ! ヘンケンだよー」

横比良「こういうのは、他人がどう感じるかが全てだから……」

M香「もともとフラットな状態での人付き合いが苦手なだけなんだけど。陰キャなのかもあたし。インドアだし、オタクだし」

横比良「そんだけ垢抜けといてよう言うわ。まず陰キャが営業に就けるわけないだろ」

M香「それも偏見だよ!」


面接も仕事も、必要なコミュニケーションは得意

横比良「少なくともM香は陰キャとは違う。就活の面接でもポンポン通って、いくつも内定貰いやがって」

横比良はアルバイトですら書類・面接落ちするような人間なので、M香のような就活エリートに羨望や嫉妬といった思うものが大いにある。新卒一括採用の場では勝負ができないと判断し、主に実力を鑑みてくれる今の職場へと飛び込んだ。社長、ディレクター、上司には感謝しかありません。

M香「あれは言うことが決まってるから。身だしなみとか振る舞いとか整えていけば通るよ」

M香「それに仕事だって、伝えることも必要なコミュニケーションもはっきりしてるから、ただやるだけでいいでしょ。普段のコミュ障とは関係ないって」

横比良「それが普通にできる奴はコミュ障じゃないって。そもそもコミュ障って俗語で使うのやめてほしいわ。第一に特別支援教育における言語性コミュニケーション障害とは〜(記事の趣旨と逸れるので割愛)」


陰キャ、コミュ障……わざわざ自称する人はニセモノ

M香「でもあたしインドアだしゲーム好きだし、やっぱり陰キャのコミュ障だって〜」

横比良「君、それなら訊くけどね……」

横比良「他クラスの友達の所へ行くフリをして空き教室に行って弁当を食べたことがあるか? 体育の時にペアを組めと言われて、毎回あぶれて先生と組むことすらできず“どこかに入れてもらえ”と全員の前で追い討ちをかけられたことがあるか? 文化祭の準備で軽作業をしているフリをしながら50分やり過ごす苦痛を味わったことがあるか? その文化祭当日を毎年欠席した経験があるか? 一度も声を発さずに学校を終えたことがあるか? 周りが当然のように行く成人式に“そもそも行くかどうか“で悩んだことがあるか? そしてその後にある中高の同窓会が開かれたことを2年後に知ったなんて経験があるか? その同窓会の出席率が8割くらいで“自分だけじゃないんだ”と負の安心感を得たことがあるか? 昔の知り合いに会うたびに“ほんと変わんないね”と悪い意味で笑われているか? 自分みたいなのが子どもで申し訳ないな……と親に罪悪感を感じたことがあるか?

M香「喋り慣れてる……これ、初めて話した内容じゃなさそう」

横比良「そもそも本当の陰キャは、自分から陰キャですなんて言わない

横比良「“わたしって天然ってよく言われるんです〜”と言う子が養殖女子なのと一緒」

M香「なんだか私怨が混ざってる……」

横比良「そりゃそうよ。本人たちはこの際開き直ろうとか、ありのままの特性として受け入れよう、とかしているのにそれを安易なラベリングに使ってる姿勢が気に入らん。陰キャのフリすんなこっちくんな空気読め


さて、話を戻そうか

M香「じゃああたしは陰キャだから友達がいない、ってことではないの?」

横比良「個人的な意見だけど、他人に興味がなさそう。自分大好きマンて印象、それで避けられてるのかも」

M香「え、なんで。どこが?」

横比良「グループ内での振る舞いでも、パッと見は人の目を意識して気遣いしてるように見えるけど、実際『自分がどう見られてるか』を気にしてるように思った

M香「……なるほど、自覚はなかった」

横比良「恋愛の話も聞いたけど、そこでも『好きな人を自分が追いかけたい』って自己本位な感じがしちゃった。そういや男友達はいないの?」

M香「だから友達となると、接し方がわかんないんだって」

横比良「好きな人と全く同じようにやればいいのに。ひょっとして、男女の友情は成立しない派?」

M香「だって、その気にさせたら相手に申し訳ないもん」

横比良「…………(こんな台詞、生で聞けると思わなかった)」

M香「あ、そういうことが実際にあったわけじゃないよ!? 経験則とかじゃないから!」

横比良「これは空気読めてへんわ」


互いの良さを尊重しようと思えた

横比良「つまりM香は、あざとい・自己中・空気読まない、という嫌われ女子の素質を持っているということですな」

M香「そこまで直接堂々と言える性格の悪さがすごい」

M香「……でも自己中ってのはめっちゃ響いた」

横比良「お、響いたっていうのは……?」

M香「あたし進学も就職も、あと褒めてくれた外見もそうだけど“人から自分がどう見られるか”をすごい気にしてた

M香「自己中なのに、逆に自分の気持ちを無視してたってマジで馬鹿だわ」

横比良「自分が思ってるほど、他人は自分に興味がないからねえ。人類みな自意識過剰よ」

横比良「あ、自分の気持ちを無視してたってことは……元々は持ってるってこと?」

M香「普通にやりたい勉強とか好きな仕事とかができればいいよねって話で」

横比良「それは今とはだいぶ違うの?」

M香「無理やりN(大学名)に入らないで、プログラムやデザインの専門学校行ってWebデザイナーになりたかった」

横比良「Webデザイナー……M香の口からは初めて聞いたわ。今は独学で何でもできるし、副業とかも進んでるよ」

ちなみに横比良もスクリプト業務の手伝いをしたことがあるが、細かいところはちんぷんかんぷんだった。

M香「そうだね。ちょっとずつ勉強を始めて、いずれは転職したい。その気持ちと向き合うのが、少し遅れちゃったけどね」

M香「だから大学も仕事も、好きなようにできてるよこっちは本当に羨ましい。そのくせ本人はなろう系主人公みたいに飄々と生きてるから、こっちの心臓に悪い

横比良「そんな風に思われてたか……仕事が楽しい、みたいなアピールははっきりと出しているつもりだったんだけど」

横比良「お互い、今ある幸せを噛み締めなきゃね……」

M香「人間の欲深さ、ないものねだりよね

横比良「ないものねだり、隣の芝生は青い……ままならないもんさねえ」

M香「ほんまそれ笑」

横比良「なんかさ……尊重できればいいよね。相手のことも、自分自身のことも

M香「うん、尊重しよ。尊重!」


あとがき:彼女の思いを聞いて

オフィシャルの場では有名大学から大企業に進み、プライベートでは女子として外見を磨き、恋人をつくりと、器用に卒なく生きるM香を羨ましく思い、そして大いに憎んでいた。

だからこそ彼女が悩んでいることが一層皮肉のように聞こえ、私をはじめとする周囲の者に疎まれていたのかもしれない。

しかし一歩踏み込んでみると、彼女も同じような感情をこちらへ抱いており、だからこそ“好きなことしてるくせに飄々と生きてるから、こっちの心臓に悪い”という言葉が印象的だった。

みな自分と他者を比較し、自らの持たざることを嘆いている。持てる者が不幸になることを願うのではなく、自分自身の良さも目を向けることで互いを尊重できれば良い、という結論に至ることができたように思う。





余談……にしていいものか迷ったが、彼女はなんと去年からネット上への動画投稿を始めていた。規模もそこそこと聞いたので、仕事のことや美容のことでも発信しているのかと思って見てみた。

蓋を開けてみると、OLの日常風景を謳いつつも、気合の入った巻き髪を揺らしながら自慢の顔を出し、質問返しと称しながら自分のことを語っている動画が多かった。今はそれで月十数万程度得ているらしい。私が何文字書けば、それに追いつくのだろう……。


っていうか! やっぱり自分からチヤホヤされに行ってんじゃんか〜〜!!
やっぱ無理、嫉妬! 胃が痛い! 吐きそう……! 尊重なんてできん!!


ありがとうございます、おいしいチーズを買います。