見出し画像

Onlineで日本語を教える|#7 仕事で日本語を使いたい!を応援する

 こんにちは!オンラインで日本語を教えている、こゆきと申します。

 今日はレッスンを受けてくださっている受講者の方のレベルや目的についてお話ししたいと思います。私の場合、ビジネス日本語(という名前が適切かどうかわかりませんが)を勉強したいという方がかなり多く、それらの学習者さんと行っているレッスンの一例もご紹介しようと思います。
 


学習者さんは漢字文化圏の方が多い(私の場合)

 私が登録しているプラットフォームは2つあります。そのうち、アジア発祥のプラットフォームについては、漢字圏の学習者さんがほとんどです。いまのところ、こちらのプラットフォーム経由の方が多いため、前提として私のケースはやや偏った状態かもしれないことをお伝えしておかなければいけません。

 日本語学習が盛んな地域ですが、ゼロから始める方もいらっしゃいます。
現在受講している方はほとんどが大人の方です。ご年齢は詳しくお聞きしていませんが、みなさん30代〜70代くらいの方です。
 これも私の場合ですが、現役世代は女性が多く、ご年配の方は男性の方が多いです。現役世代の場合、同性から習いたいというご希望がもしかしてあるのでしょうか。これははっきりとした理由はわかりません。

受講者のレベル別割合

 JLPT N1合格済みの方が圧倒的に多いです。JLPT(日本語能力試験)は、読む・聞く、の2技能を測る試験であり、会話や作文はテストされませんのでN1レベルといっても実際の運用能力には幅があります。CFER(外国語の学習、教授、評価 のためのヨーロッパ共通参照枠)に照らすと、だいたいB2(中級上、英語だと英検準1級レベル相当)になるようです。実際に多くの方が会話ができない、苦手だ、と感じていらっしゃるようで、それを改善したいとレッスンを受けてくださる方が多いです。
 
 会話が得意で、話す時にはこちらもほとんど手加減しなくてよいのに、テキストメッセージになると、かなりたどたどしくなってしまい、ずいぶん印象が変わってしまう人もいます。また、書くと上級者らしいまとまった書き方ができるのに、話すのが苦手でこちらの質問を聞き取るのも困難、という方もいます。それでも履歴書などでN1合格、と書くとみんな同じように思われるのだろうなと思います。日本人の英語も同じかもしれません。
 体験レッスン前にメッセージのやりとりをしますが、N1合格済みです、とお聞きしても実際にお会いするまで会話力については予想がつきにくいことが多いです。

 今回は、これまでに受講してくださったすべての方(98名)のレベルを円グラフにしてみました。JLPT未受験の方については、JLPTとCFERレベルの比較や学習中の文法項目などから、私がレベル分けしましたので実際にN5~N4の合格者というわけではありません。N3以上はほとんどが受験経験のある方でしたので合格実績に基づいてレベル分けしました。

N1合格者が圧倒的に多いです!私のレッスンの受講者さんの場合 (2023年12月末時点) 

受講目的の割合


 これも、プラットフォームの利用者層や、やはり講師のプロフィールは影響するのかなと思いました。私の場合、会社員経験があるので実際に仕事で使う日本語や習慣などについてもご紹介できます、と書いています。また、接客業や管理職経験があり、接客マナーについて教える立場であったことも、経歴欄に書いてあります。お話ししてみると、意外にも(?)受講する前にプロフィールを全部読んでいない方が多いので、関係ない可能性もあります。

 JLPTやその他の試験準備のためだけに受講している方は、私の場合は少ないです。ビジネス・会話目的で受講している方の中に、受験を検討または準備している方がいますが、今回のグラフには反映できていません。主要目的だけでグラフ作成しました。また、ビジネス目的には、面接準備も含みます。

ビジネス日本語を勉強したい方が多く、N2レベルの方も含まれます
ビジネス・会話に分類した中にもJLPTなどの受験を検討している方がいます

 N1合格済みの方は、仕事で実際に使う、または使う予定があるので勉強したい、という方が多く、お話ししていると一番の心配は敬語と職場でのマナー、という感じです。同僚や取引先の日本人に、自分が失礼だと思われていないか心配している方もいます。また、日本語ができることで、自分の上司と取引先の日本人の会議や交渉に同席して通訳や翻訳を頼まれる、という方も多く、これはかなりの負担だろうと思うのですが、仕事の場面で使われる日本語を敬語に限らず幅広く勉強したいというリクエストも多いです。
 
 職場でのマナーについては、現場ごとに異なることもあるのでこれが正解という伝え方はできませんが、どんなことが心配かを具体的に質問してくださる方も多いので、個別に丁寧にお答えするようにしています。例えば、受けとった名刺の扱い方や、深夜に出社しないと回答できない問い合わせをされた時の答え方😨など、実際に働いている中で疑問に思うことを質問くださる方もいらっしゃいます。また、面接準備をしている方からは、オンライン面接で注意することや、内定を断るメールの書き方を相談されたこともあります。

 こういったご質問をいただくと、ただ単に言葉を使えるようになるだけでなく、日本の会社の中で、または日本人と働く時に知っておきたい考え方や常識とされていることに対し、学習者のみなさんが真剣に学びたいと考えていることを感じます。どちらかの「常識」を一方的に押し付けることはフェアじゃないと思いますが、どうしても変わらない(変えないまたは変わりたくない)人や仕組みはあるので、知らないと損をすることはあるだろうと思います。知っていた方がご本人が損したり傷ついたりすることが減るのなら、それはできるだけお手伝いしたいなと思います。

敬語の難しさ

 ビジネスで使う日本語を学びたいという多くの方が、やはり敬語について心配をされています。私の個人的な感覚だと、そう言いつつも実際に会話してみると、ご本人がご心配されるよりずっと上手です。大学の日本語学科で勉強した、という方も多いのでかなり体系的にしっかり学んだんだなということがよくわかります。何が心配なのか、と思うくらいスムーズな方もいるのですが、多くの場合、実際に日本人を相手に使ったことがない、ということも不安の原因になっているように思います。また、緊張を強いられる場面で咄嗟につかわなくてはいけない、というシチュエーションも不安を増大させるのかもしれません。

 この場合は謙譲語を使いますか?尊敬語ですか?という質問をいただくこともあります。謙譲語・尊敬語、という言葉も知っていて、おそらくそれぞれを勉強として覚えたのだなと思うのですが、確かにその知識のままだと使う時混乱しそうですね。今どっちを使いますか?から始めないといけないし、謙譲語ですね、ということは言うの謙譲語だから、おっしゃるじゃなくてえっと「申し上げる」ですね、でもますをつけたいから「る」をとって、申し上げます、ですね、と頭の中でやっていると、それは確かに大変だろうと思います。敬語については、その動作は誰がするのかも混乱しやすいようで、申し上げる、ということは誰が言いますか?と聞くと、途端にわからなくなる方もいます。

 日本語ネイティブの新社会人も、バイトや周りの大人の影響で間違って覚えてしまう敬語がありますね。揺らいでいる表現もありますし、敬語は本当に難しいと思います。私も、会社員時代に教える側だったとはいえ、自分が間違っていないか常に確認したり調べたりしていました。本当は間違っていた言い方に気づいたこともあります。そうはいっても、もうひとつ難しいことは、正しい敬語といっても、相手がそれを正しいと思っていなければ(または知らなければ)、あの人は失礼な言い方をする、と感じてしまうかもしれないことです。

 世間ではこう言いますが、本当は違います、という知識をもとに正しさを突き通すことで、相手に失礼な言い方をする人と認識されてしまうのでは本末転倒です。高い会話力を持つ学習者の方には、文法的にはAが正しいとされているが、Bを使う人もいますよ、とお伝えすることもあります。こういう、いつも正解がひとつじゃない、というところも難しいのだと思います。

敬語のレッスン

 敬語は書く時にももちろん必要ですが、面接の準備や仕事の現場で使うことを想定すると、会話で使う敬語を練習したいというリクエストが多いです。特定のテキストを使わない方のために、私は敬語トレーニングのための教材を作っています。複数の教材や辞書、文化庁の資料などを参照し、学習者さんからよくご質問を受ける項目を整理して作成しました。今もまだ改訂しながら使っているので、もう少しまとまったら共有できるものはご紹介したいと思います。

 この練習では、いわゆるクッション言葉(おそれいりますが、など)も使って、実際に話す時のように頭の中で文章を最後まで作って練習しています。単語レベルならすぐわかる、という方でも、文章を言い切れないことがあります。例えば、申し上げます、だけぽそっと言えても、仕事では活用しにくいので、申し上げにくいのですが〜です、とか、恐れ入りますが確認してからご連絡申し上げます、など、実際に使うことがあるフレーズをそのまま何度も口に出して練習したりしています。頭で毎回作文しなくても、こういう時はこの言い方がある、みたいに覚えてしまうと楽なことがあるので、学習者さんのリクエストによりますが、場面設定や敬語ではない文章だけ見てもらい、すぐに口から敬語で話す練習をしたりしています。

 いつも敬語を練習していると、かならずセットで問題になるのが待遇表現と受け身の表現です。いただく、とか、れる・られる、とか、ほんっとうに難しいです。学習者さんは、誰が誰に?の部分を見失ってしまうので、これも必要ならN1の方には簡単かもしれないところまで戻って復習したりします。

まとめ

 集客方法や登録しているプラットフォームによって、学習者の方のレベルや目的などは大きく変わるのではないかと思います。どんな人に教えたいか、自分の経験やスキルが活かせるのはどの領域かによって、それに適した集客方法を実施することも大事だなと思いました。
 
 また、敬語の教え方やサポートの仕方はまだまだ奥が深くて、私は自分にとっても伸び代しかない、と考えるようにしていますが💦、効果的な練習方法やテキストも探していきたいと思っています。また、敬語をしっかり練習すると、面接の練習でも受けごたえがスムーズになることを実感しました。

 「使える」の前に「使ったことがある」があるので、知識として知っているならどんどん試してください、とお伝えしています。知っている・読める、でも話せない言葉がたくさんある方も多く、敬語は特に練習相手が見つかりにくいことから苦手意識が残りやすいようです。私のレッスンでは何をどう間違っても心配しなくていいからどんどん話してくださいね、と応援しています。
 
 これからも少しでもお役に立てるよう、頑張りたいと思います。
 最後まで読んでくださって、ありがとうございます。今これから始める、または今も迷いながら進んでいるみなさんと、小さなつながりが持てると嬉しいです。ご経験を積んでいらっしゃる諸先輩方におかれましては、どうか温かい目で見守ってくださると幸いです。

 それでは、また🫡

過去記事をマガジンにまとめました📚


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?