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映画『怪物』を見て


カンヌ国際映画祭『脚本賞』『クィアパルム』受賞『怪物』見てきた。

普段月に2〜3本は映画を見るのですが、特に印象に残ったものだけは投稿したくなる。

以前感想を残したのはアカデミー賞を取った『Coda あいのうた』以来。

今回は、すごく大好きな坂元裕二さん是枝幸和さんの二人タッグに坂本龍一さんの音楽と聞いて見る前からワクワクが本当に止まらなかった。

ちょっと前に大好きな監督と脚本家さんがダッグを組んだ映画がもう1本あったんだけど本当にその映画が残念すぎたからこそ、改めてすごい作品を作る作り手がコラボすることの難しさを感じたばかりだったので、感動が2倍にも3倍にもなった。

坂元裕二さんの素晴らしさは、緻密なストーリー構成と、作品の中で生み出される"言葉"だ。主演の安藤サクラさんがこの作品のオファーを受けた時に緻密すぎる坂元さんの脚本を見て一度断りたいと思ったと言っていることが、坂元裕二さんの作品ならではの圧倒的なリアリティーと世界観を作り出していると感じた。

今回の怪物の中で、出てきた言葉で印象的だったのは「誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない」という田中裕子さんの言葉だ。

この作品自体3部構成のような作品展開になっているのだが、誰からみた視点かによって全く違うストーリーが感じられる構成になっている。

こと小説などで、長々とこの作品を描くのならば現実味はあるが、映画という限られた時間の中で、ストーリーがテンポよく進みながら解像度の高いストーリー展開ができるのは坂元さんの作品ならではだと思った。

一方で是枝さんの作品はドキュメンタリーや『家族』がメインテーマとなっている作品が多い。それも、世にいう完璧な家族ではなく、どこか欠けているように見えてしっかりとその破片をお互いに埋め合っているような、少し胸が痛くなるけどマイノリティな人々が肯定されるような作品が多いと感じる。

きっとどんなに完璧そうに見える人にもその欠けた部分があって、是枝さんの作品を見ると、その心の穴を、古い傷のように痛ませながら癒してくれるような体験がある。

何よりも俳優陣の演技の素晴らしさ、脚本の素晴らしさ、監督の素晴らしさがうまく融合した現代の日本の最高峰を詰め込んだ作品だったと思う。

そして、この作品は、現代の日本そのものを象徴しており、日常の中に現れる"怪物"を癒してくれる作品なのではないかと思う。

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