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舌先でなぞる歯列


薄明かりの中何度も何度もついばむようにキスをされた。
それから段々激しく口内を犯される。
蕩けてぽわぽわとしてくる。
キスとは麻薬なのだろうか。
柔らかい舌先が交われば異世界へとトリップ。
もうなんでもいいや。どうにでもなれ。

なんでキスってこんなに気持ちいいんだろう。
嗚呼 とても中毒性が高い。


乱れたスーツ姿で言われた。

「君って歯並びすごく綺麗だよね。舌でなぞってて、つーって、すごい綺麗なのがわかる。虫歯もないの?」

なんだかあまり色気のない話だ。
けど何かを褒められるのはやっぱり嬉しい。
私の歯は幸い矯正しなくてもそれなりの歯並びだ。
コンプレックスであるガミースマイルのせいで歯並びが目立つのか度々人に歯並びと歯の綺麗さは褒められる。

「たしかに歯並びはいい方って言われるかな?虫歯もないけどそれは親に磨くように言われて育ったからかな?」

「羨ましいね。歯を舌でなぞってるときやっぱり歯並びいいと気持ちいいよ」

「そうなの?」


そういえば何十年前になるのか、当時小学校は給食後になると歯磨きを徹底していた。
8020運動などと言って歌が流れ始め、手洗い場には歯ブラシボックスが設置されており、そこには各々の歯ブラシがフックにぶら下がっており、給食の後には歯ブラシで毎日歯を磨くのが日課であった。

当時は何も考えず自分の与えられた番号のフックにかけられた歯ブラシで歯を磨いていた。

不埒な思考も知るようになった今では、歯ブラシがそのように置かれている環境ってなかなか危ないのでは?と思う。
変質者や変態の格好の餌食じゃないのか?
セキュリティの向上で外からの変質者は入れないと思うが、身内にいないとは言い切れないだろうし。

なんて、そんなことを思い出させるのもキス。
口付けとは不思議な行為。

そんなこと考えていれば
現実に引き戻された。

また覆い被さられ、唇を奪われた。
目の前には優しそうな笑顔。
どうやら私はこれ弱いらしい。
だから私は仕返しに
何倍も首元の匂いを嗅いでやった。

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