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祇園祭幕開け

 7月1日、祇園祭の幕開け。といっても我々下々の者(Under and under people)にとっては昨日と今日で何が変わるというわけではありません。四条烏丸界隈が少しばかり祇園祭仕様になるくらいです。

月鉾ちゃん



 しかし、同じ京都に住んでいても住む世界が違う人たちがいて、その人たちの中でも特別な人たちにとっては特別な神事があります。
 八坂神社では今日、前祭の山鉾巡行で先頭を行く長刀鉾のお稚児さんが「お千度の儀」に臨みました。

 私が四条烏丸のスタジオでこっそり英語学習アプリを起動させた午前10時頃、朱色の袴のお稚児さんが補佐役の禿さん二人と一緒に南楼門を通って本殿に入りました。
 八坂神社は四条通りに面した門が有名ですが、正門は南楼門です。これを知っておくと京都にやってきた人との会話の切り札に使えます。ある程度「へえ!」と驚いてくれます。
 京都新聞の記事によると、厳かな雰囲気のなか、お稚児さんを務めることを神前に報告したとありますが、この場合、神前「に」報告するのではなく、神前「で」(神様に)報告するというのが正しいと思う。神前「に」報告してもどうにもならない。こんなことを書くとまた恋人にそういう細かいこと言う人嫌い!と言われてしまう。この野郎、キスしてやるぞ。これ、太宰治のなんていう小説だったかと思って調べてみたら『人間失格』でした。「キスしてやろうか 太宰治」で検索したら出てきました。

 神前「で」神様「に」、「今年お稚児させてもらいますねん」と報告した後は、大きな和傘で雨をよけながら、長刀鉾保存会役員の皆様と一緒に本殿の周りを時計回りに三周して、恭しく手を合わせていたそうです。
 なぜ三周するのかはわかりませんが、これはきっと二周でも四周でもダメで、きっちり三周じゃないと許されないのです。たぶん。
 昨日の茅の輪くぐりも私は祇園梛神社でくぐって来たのですが、茅の輪はまず、くぐり抜けて左回りで元の場所へ戻り→右回り→左回り→最後に茅の輪をくぐり抜け、前に進み拝殿でお参りをします。これを無駄に何度も繰り返してはいけません。作法通り決められた回数にしておかないといけないのです。
 この前の日、餃子スープに胡麻油を垂らしすぎたのは、茅の輪くぐりでいうなら無駄に何周も回るのと同じ愚行であったのだな、と反省しながらお参りしました。写真撮りませんでしたけど、お参りのあとに食べた水無月、美味しかったです。

保育園の近くのお餅やさん
水無月も美味しいんやで
祇園梛神社の茅の輪くぐり



 それにしても、我々、Under and under people(UAUP)は遠くから眺めるだけですが、禿の二人はこの時、お稚児さんに対してジェラシーのようなものは無いのだろうか。神前「で」報告する際、「ちょっと待て、やっぱり俺が禿なん、納得でけへん、公平にじゃんけんで決めへんけ?」とか、そういうノリにはならないものなんだろうか。

 同じ京都に住んでいるのに住む世界が違いすぎる人々の特別な一日を遠くから眺めることができるのも祇園祭なのです。

京都新聞の写真を見て書いた
雑すぎるお千度の儀


19時過ぎの四条烏丸の空


 祇園祭が始まったといっても別に何があるわけでなく、それでいて昨日までと明らかにちがう四条烏丸あたり。傘をさすなんて粋じゃないねっていう程度の雨が柔らかく肌を撫ぜる。19時を過ぎても空はまだ明るさを保っている。昼と夜の境目は戦争と平和のそれ程度には曖昧なのだ。

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