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無視されるのが何よりも悲しい

令和3年5月26日の日記
昨日の福井新聞『越山若水』に人種問題研究の第一人者で社会心理学者のジェニファー・エバーハントさんの著作『無意識のバイアス 人はなぜ人種差別をするのか』を読んだ感想が書かれていました。

ジェニファー・エバーハントさんは、スタンフォード大学教授で、全米科学アカデミーにも選出された黒人女性です。著書では、人は悪意や利己的な動機に関係なく、偏見や先入観を持っているということを具体例を挙げながら解説しているそうです。

私個人について言いますと、恥ずかしながら、そういった「無意識のバイアス」があることを否定できません。高校生の頃だったか、「英語の授業にネイティブの教師がやってきます」と先生に説明を受け、実際にやってきたネイティブの教師が黒人だったことに驚いたことと、そうやって驚いてしまったことについて、友人に「こういうところに無意識に思っていることがあらわれてしまうんだね」と白状したことを覚えています。

人種差別に限らず、「無意識のバイアス」はあらゆるところに潜んでいると思います。言葉や態度の端々から「あ、この人、僕のことバカにしてるんだな」ということがわかってしまうこと、ありますよね。どれだけ気をつけていても、ふとした時の仕草や言動で、それが顕になってしまう。被害者ぶって書いていますが、私だって各方面で加害者になっているんだろうと思います。

所詮、他人なんだから、「分かり合う」には限界があります。そうであるならば、いかに「分からなさ」を楽しめるか、が肝になってきます。昨日の京都新聞の文化面に、まさにその、どうすれば人は「分からなさ」を楽しめるようになるのか、について書かれていました。記事を引用すると「本能的に同質性を求めてしまう人間にとって、かなりの難題だ。」

落語家で作家の立川談四楼さんは、「笑い」に一つのヒントを見出しています。記事に書いてありました。「人間は誰もが、弱くて怠惰です。そして、無視されるのが何よりも悲しい。でも、いつも大まじめな、"正論"しか言えない社会では、人は自分の駄目さを隠しながら生きていくほかなくなる。それで本当に寛容な社会がつくれるでしょうか」。

私はこの記事のこの言葉を読んで、泣きそうになるくらいに嬉しくなってしまいました。
何が嬉しかったかといえば「無視されるのが何よりも悲しい」と断言していることです。
常日頃、私はこれを感じているのですが、それを口にすることは、割と「恥ずかしい」あるいは「小さいことを気にしている」というレッテルを貼られ、「かまってちゃん」なんて言われたりするのです。しかしここでもやはり、「同質性」を求めてしまっているところが悲しい本能なのです。なんにせよ、「無視されるのが何よりも悲しい」と主張してくださる方がいるのは嬉しい。

こういう時、ついつい無視する人のことを批判して責めがちになるのですが、昨日の北海道新聞『卓上四季』に名作『グレート・ギャツビー』の語り手となるニックの父親の言葉が紹介されていて、こちらも肝に銘じておかねばならない至言だと思いました。

「ひとを批判したいような気持が起きた場合にはだな、この世の中の人がみんなおまえと同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思い出してみるのだ」。

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