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読書の記録 和泉悠『悪口ってなんだろう』

 二年ほど前に出た『悪い言語哲学入門』という本がめちゃくちゃ面白かったので、そのことを確かfacebookに書いたところ、知り合いが著者の和泉悠さんの同級生であることがわかり、いやー、世間は狭いもんだと思っていたら、その同級生の方から一ヶ月ほど前に「和泉さんの新著が出ますよ」と連絡いただいたのでチェックしておりましたところ、先週、梅田の紀伊國屋書店で見つけまして、これまた「目と目が合った」気がして購入いたしました。

 悪口ってなんなんでしょう。例えば「悪意がある」のが「悪口」でしょうか。「人を傷つける」のが「悪口」でしょうか。悪口を定義するのは確かに難しいのですが、和泉さんはこの問題に対して考察を重ね、丁寧に「悪口の輪郭」をくっきりとさせていきます。学者さんってこうあるべきなんでしょうね。あり得る反論の芽をどんな小さな芽でもきちんと摘み取っていく様は、エンターテイメント性がないかもしれませんが(悪口ではない)、確実で説得力があります。人によっては退屈な読み物になってしまうのかもしれませんが、そうならないように上手い具合に「笑い」を散りばめているところは、自身の「隙の無さ」を自覚してらっしゃるがゆえの照れ隠しのようなところもあるんでしょうか。専門的な話をわかりやすく書くのは、すごく難しいと思うんですが、複雑な問題をはらむ難しい話を簡単な話にすり替えるのではなく、難しい話は難しいままにできる限りわかりやすくを心がけておられるところ、さすが言語を専門に扱う先生です。かっこええです。

 SNSにおける一般市民の政治への不満に対して政治家の先生が法的手段をちらつかせるのは何か違うよな、でも何が違うんかな。
 仲間内でアホ扱いされてもなんとも思わないのによく知らない人に同じことされたら腹立つのはなんでかな。
 あ、そういうことか、これを読んで腑に落ちました。めちゃくちゃ面白いです。

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