愛読書をもう一度読んでみては
今日の朝日新聞『天声人語』に元アメリカ国務長官コリン・パウエル氏の著書『リーダーを目指す人の心得』に書かれている言葉が引用されていました。
「聞き手が聞くべきことを話さなければならない」
この本はアメリカ陸軍や連邦議会で鍛えたスピーチ哲学が惜しみなく紹介されていて、菅義偉首相の愛読書だそうです。
2年ぶりに国会党首討論が行われ、菅首相が初めて野党代表と論戦を繰り広げました。毎日新聞『余録』には、「野党代表にパンデミック下の五輪へのリスク認識を問われた首相は、前回東京五輪の自らの感動を語り、その開催の意義を訴えた」とあります。きっと愛読書を参考にされたのでしょう。
日本経済新聞『春秋』には「野球の基本がキャッチボールであるように、政治の基本は言葉のやり取りにあるはずだ」と書いてありました。今回の党首討論は、果たして基本に則ったものだったのでしょうか。首相の口癖のようになっている「国民の命と安全を守るのが私の責務だ」という言葉、ロボットのように繰り返すのも愛読書を参考にされたものなのでしょうか。
北海道新聞『卓上四季』は『論語』の言葉を引用していました。「言有る者は必ずしも徳有らず」。これに続けて「空疎な答弁は信を失い、その地位も損なうものである」と手厳しい。答えにくい質問はハンを押したように同じ文言で逃げるやり方も愛読書を参考にされたものなのでしょうか。
神戸新聞『正平調』は近藤勝重さんの著書『話術いらずのコミュニケーション』の中から、「聞く人が深くうなずいてくれる。分かる分かる、と思ってくれる。そうなるために大事なこと」を三つ紹介していました。
1話の中身が明快である
2あれもこれもでなく、これだけは分かってほしいという芯がある
3理屈や説明よりエピソードが大事
一見すると、菅首相の言葉というのは、話の中身は明快だし、これだけは分かってほしいという言葉を繰り返し続けるし、前回の東京五輪の思い出を語るなど、エピソードを盛り込んでいましたから、3つすべて条件を満たしているような気もしますが、その3つが揃っているにもかかわらず、言葉が何も響かないところに重大な問題があるように思います。もう一度、愛読書を読んでみられてはいかがかしら。
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