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5月27日〜6月1日の新聞各紙歌壇俳壇チェック!

5月27日 日経歌壇より
●にはとりは千五百万羽殺されて卵が高いとヒトは嘆きぬ

人間の思考回路の貧しさ、残酷さ。生きるとはかくも悲しき性なのか。考え込んでしまう。

●黄砂来る予報のときは仏壇の扉を閉めて安眠保つ

こういう生き方は昨今「合理的じゃない」と一刀両断されがちですが、つくづく合理的ってしょうもないなって思う。

5月27日 日経俳壇より
●燕飛ぶ自在や今度はスイーパー

大谷翔平の魔球の鋭さと燕の翔ぶ様が妙にマッチするし翔平の翔は翔ぶやし。

●母吾と解らなくとも母へ薔薇

合理的を追求する人は、もう自分だとわからなくなれば母に薔薇を送らなくなるのだろうか。この健気な行為を無意味と切り捨てるんだろうか。

5月28日 朝日歌壇より
●冷め切ったカフェオレゆっくり飲み干した頼みにくいこと頼んだ後に

頼みにくいこと頼むから出されたカフェオレに口をつけるタイミングがなかった。一口も飲まないのは逆に感じ悪いから冷めた頃に一気に飲んだ。これ、めっちゃわかる。

●マイナンバーカードが電子徴兵に使われるかもしれない未来

この歌の右上に「メールにて徴兵をする時代まで開いてしまったこの戦争は」という歌が載っていて、ぐんとリアリティを感じてしまった。

●犯人になる前の人物が通り過ぎゆく防犯カメラ

事件が起こってから起こる前の新聞を読むときの妙な気持ち悪さを思い出した。

●トリチウムいかほど流せど海深み浄むるべしと人は気儘に

日経歌壇の「にはとりは千五百万羽殺されて卵が高いとヒトは嘆きぬ」に通じる人間のアホさ身勝手さ。残念ながら身勝手であることが前提でこの世界は動いてしまっている。

5月28日 朝日俳壇より
●異国語のあふるる五月浅草寺

ちょうど昨日、異国語あふるる六月の銀座を体感したばかり。タイムリー。この句の右隣に「野火猛る戦の炎如何ばかり」「戦なき空こそ泳げ鯉幟」が並んでいたので浅草寺が戦争時に思えてしまった。

●絵はがきに薫風染ませ送りたし

染ませて送りたいくらいの心地よい薫風。それを送りたいという心遣い、優しさ、この眼差しがにはとりや海にも及ばないものか。

●悪役の蟻地獄にも守る家

この視点が重要。多様性ってそういうことなんと違うんかな。でも悪役に対する共感は人間社会においては禁物である場合もある。

●佐保姫の薫り未だにそこかしこ

季節の名残をうまく詠んでる。こういう時の流れを感じさせる句が好きだ。

5月29日 読売歌壇より
●濃まやかに春を色づく峰仰ぐもの買ふ妻を長く待つとき

夫婦の距離感信頼感が滲み出ていて愛らしい。こういう関係も素敵やん。

●初孫の写真あふれる居間の壁次の孫にも同じであらねば

平等に配慮するのは素晴らしいことだと思うが二人めができる前提になってるその気持ちが息子(娘)夫婦の重荷にならないか、変に心配してしまう。

●AIの代筆したる恋文はカロリーゼロのコーラの甘さ

これはめちゃくちゃうまいこと言うなー。感心した。近くにあった「アクセルを踏むのが恋で時としてそっとブレーキ踏めるのが愛」もよかった。どちらも俵万智選。

●道端に咲ける花の名スマホにて知れども妻はその場で忘る

簡単にわかると簡単に忘れる。

5月29日 読売俳壇より
●百畳のうち敷くひかり昆布干す
矢島渚男さんの選評を読み、風景があらわになった。キリッとした空気、太陽光のエネルギー、自然の恵み、いい光景。

●わが窓に富士が近よる五月晴れ
新幹線ですよね。あっちが近づいてくるっていうのが面白い。そういえば富士山見たことないな。

●逆さ立ちのハンドクリーム水温む
我が家は歯磨き粉が逆さ立ちしてる。生活の知恵。暮らしの中に句は潜む。

●暑き日や脚立に置かれたる軍手
何の作業かわからないが確かに暑い日に軍手は暑い。置かれた軍手から伝わる暑さ。

5月29日 毎日歌壇より
●焼け跡にジャスティスジャスティス雨降るを受け止めている小さな傘よ

今も昔も戦争では正義という名の弾が降る。

●死にたさは詩にすればいい言葉でならどこに行こうと許されるから

言葉によって生かされている僕みたいな人間に突き刺さってくる。言葉を大事にして生きたい。

●スマホ見の人が歩けるのはきっとスマホを見ない人が避けるから

常々思ってることをうまいことまとめてくれてる。

●名が読めぬたびに時代を嘆きつつ教師はようやく点呼終えたり

昔も何と読むかわからない名前の子はいたが、今は何と読むかわかる子もいるって感じ。

5月29日 毎日俳壇より
●菜の花の果てが地の果て潮けむり
こういう風景の見える俳句が作りたい。

●筍のごろんと無人販売所
無人販売所の筍は確かにごろんとしている。

●初鰹買つて家路を急ぎけり
昔CDショップでCD買った帰り道のことを思い出した。

●しゃぼん玉割れて微かに空濡らす
あれを「空濡らす」とするのが素晴らしいじゃありませんか。

6月1日 産経歌壇より
●おふざけが過ぎる最近のNHK我らの眼と耳軽く見たりしか

NHKを私の担当する番組に差し替えてみるとドキっとする。視聴者はアホではない。ラジオが斜陽になってるのは作り手担い手の仕事への向き合い方にも原因があるかもしれない。

●事故ありて電車とまれば両脇の人の温みが伝わりてくる

乗客がこんな人ばかりならいいけど温みどころか沸騰しまくっとる人もいるからな。

6月1日 産経俳壇より
●日曜の工場広き花冷よ
普段いる人がいないとやけに広く感じるもの。小学校なんかもそうでしたよね。

●帰宅せりたけのこ飯の香の中へ
うらやましいと思ってしまった。お腹空いた。

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