封じられた袋の中身【怪談・怖い話】
これは、大学時代の友人、英作(仮名)から聞いた話だ。
春の終わり頃、英作たちはオカルト好きの友人・幸助(仮名)の発案で、山間の村にある小さな神社を訪ねたという。神社は二時間ほど車を走らせた先にあり、そこには奇妙な「袋」が祀られているという噂があった。三人は、興味本位でその袋を見に行くことにした。
神社は小さな境内を持ち、参道を歩くと、木々の間から拝殿が見えた。その雰囲気は不気味でありながらもどこか平穏さを感じさせる場所だったという。しかし、その平穏は、境内に置かれた小さな社に足を踏み入れた瞬間に崩れ去った。そこには、「袋」が祀られていた。袋には無数の針が刺さっており、見る者を威圧する異様な光景が広がっていた。
神主は穏やかな口調で、針を刺すことで過去の罪や穢れを浄化できるという言い伝えを語った。しかし、その袋の中身については固く口を閉ざし、決して見せることはできないと言い切った。好奇心旺盛な幸助は不満を抱えつつも、袋の中身に触れたい衝動に駆られ、夜に再び神社へ忍び込むことを決意する。
英作は車で眠ってしまい、幸助ともう一人の友人は懐中電灯を手にして、夜の境内に足を踏み入れた。昼間は爽やかだった木々のざわめきは、夜の闇に包まれると不気味な音に変わり、風の音さえも彼らの神経を逆撫でするようだった。
社の扉は施錠されていたが、幸助は無言でドライバーを取り出し、扉を開けてしまった。袋はそのまま社の中にあった。幸助は針を一本ずつ抜き始め、袋の中にあるものを確認しようとした。だが、針を抜くたびに袋が小さく動き出し、不気味な鳴き声が響き始めた。それは赤ん坊の泣き声のようでもあり、動物の苦しげな叫びのようでもあったという。
突然、背後から声がした。「そのまま放っておけ!」。神主だった。彼は二人に向かって怒りもせず、ただ淡々と袋に針を戻すように指示した。幸助は恐る恐る、抜いた針を一本ずつ元に戻していった。その間、神主は「袋」の正体について語り始めた。
「この袋の名前は『犬返』。中には動物のミイラが入っておる。針を刺すことで人の穢れをその中に移し、動物に代わってその穢れを背負わせるんじゃ。針が刺された分だけ罪が清められる……だが、袋の中を見ようなどと考えた者は、二度と戻ってこれんようになることがある」
幸助はその言葉に青ざめながらも、針を全て戻し終えた。神主は満足げにうなずき、彼らに二度と好奇心に駆られて危険なことをしないよう忠告した。
帰りの車の中で、幸助は「本殿の中には人間のミイラがあるかもしれない」と言い出したが、英作はその言葉を冷たく一蹴した。結局、彼らが学んだことは一つだけだった。好奇心が猫を殺す、という古い教訓だ。
彼らはそれを教訓にして二度とその神社を訪れることはなかったという。
[出典:原著作者:2010/10/27 03:19 なつのさん 「怖い話投稿:ホラーテラー」]
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