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インスマス面の男【怪談・怖い話】

これは、ある友人から聞いた話だ。彼が高校生の時、まさに異界の住人としか思えない男と遭遇したという。

その頃、彼は高速道路のサービスエリアでアルバイトをしていた。ゴールデンウィークの真っ只中、休憩する暇もないほどの忙しさだったという。人波に紛れながら、ふと妙な視線を感じた。まるで冷たい触手が背筋を撫でるような感覚だった。

彼が顔を上げると、一人の客と目が合った。その瞬間、時が凍りついたかのように感じたという。男の目が徐々に丸く膨らみ、異様なほどに飛び出してくるのを目撃した。さらに、肌は薄く緑色がかり、まるで生物の進化の過程を逆再生しているかのようだった。

彼は驚愕し、再び目を凝らして見直した。すると、その男は何事もなかったかのように普通の人間の顔に戻っていた。見間違いかと思い、その場ではそのことを深く考えなかった。

しかし、それから数年後、彼がラヴクラフトの『インスマスを覆う影』を読んだ時、あの男の姿が蘇った。インスマスの住人として描かれたその風貌は、まさにあの時見た男そのものだった。

男の顔立ちはどこかカエルを思わせるものだった。まばたきもせず、冷たい視線を放っていた。その異様さは、今でも彼の記憶に鮮明に残っている。しかし、クトゥルフ神話は創作だとされている。それでは彼が見たものは一体何だったのか?

別の友人からも、似たような話を聞いたことがある。電車で座っている人物の顔が突然茶色くなり、その顔が見られたことに気付くと、笑って元の色に戻ったというのだ。どうやら彼だけがその異形の者を見たわけではなさそうだった。

彼はその時の経験を幻覚だと思うようにしている。しかし、一つだけ腑に落ちないことがある。男と目が合うより先に、確かに「誰かに見られている」という視線を感じたのだ。

その男の風貌は、ワイルド芸人のスギちゃんに似ていたが、口をもっと大きくし、唇の中央を突き出させたような、どこか不気味なものだったという。カエルを思わせるその顔立ちが、今も彼の脳裏に焼き付いて離れない。彼が見たものが一体何だったのか、今も解明されることはない。

[出典:122 :本当にあった怖い名無し:2012/06/12(火) 05:30:40.31 ID:HAuLEhziO]



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