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怨念に飲み込まれた家【怪談・怖い話】

凡人にも次第に幽霊は見えるものだった。

物語はここから始まる。

俺の名はショウタ、27歳の青年である。仕事に燃えていたその頃、都内にある陰気な1Rの部屋に引っ越していた。線路沿いの踏切近くにあり、静かで賃料も手頃だったからだ。だが、まさか入居してから次第に不可思議な出来事が起こるとは夢にも思わなかった。

乱歩は「なにがしかの暗い陰影を宿した物件」と表現したかもしれない。だがこの物語は幽霊が出るホラーではない。いつしか住人である俺の魂まで侵食し始めていた。それは徐々に、そして確実に。

最初は些細な出来事だった。部屋が暗いように感じたり、視線を感じたり、シャワー時に気配に襲われたりと。しかしそんなものは新生活のストレスから来るものだと片付けていた。

だがやがて、物品が勝手に動いたり割れたりするようになる。妹や友人が怖い夢を見たりと、俺以外にも異常が起こるようになった。そして奇妙な音も聞こえ始めた。夜中に洗濯機のようなドンドン、ゴンゴンという音が1時間以上続くことすらあった。

友人に助言され、パワーストーンやお守りを買ってみたものの、効力は一時的なものだった。やがて俺は熱病に冒され、ひどい吐き気と食欲不振に見舞われるようになった。奇怪な幻覚まで見えるようになり、恐ろしさのあまり、退去を決意した。

退去の際、引越し業者が俺の部屋に人の気配を感じとったことで、全ては事実だったのだと確信した。そして退去後、そこはたびたび人身事故が起こる踏切に近い場所だと知った。

この出来事は俺の視野を大きく変えた。幽霊は存在し、気づかぬうちに人の心を蝕んでいく。今でも俺が傷つき続けなければならないのは、すべてあの部屋での出来事が原因だと思う。

人智を超えた何かに翻弄された結果なのだろうか。あの部屋に宿っていた呪われし存在に、我が身も魂も蝕まれてしまった。もはや何が真実か、俺にはわからない。ただ消えぬ恐怖と不安に怯えているだけだ。


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今後とご贔屓のほどお願い申し上げます。