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恐怖のオニオンスライス【怪談・怖い話】

数年間、私は自営業に従事していた時期がありました。毎朝早起きをして、まだ幼い娘と一緒に仕込み作業を行っていました。ある朝のことです。オニオンスライスを作る際、指先に痛みを感じました。見ると軽く皮膚を削いでいたのです。

"おかしいよ、お母さん。"

娘の突然の叫び声に、私は足を止めました。彼女の言葉は正論でした。まだスライスの最中で、手にしていたオニオンは大きなものだったのです。刃に触れる理由はありませんでした。しかし、目に見えぬ切り傷が私の指先に残されていたのは事実でした。

この不可解な出来事は、そこで終わりませんでした。ゆで卵のみじん切りを作業中、汚れた包丁を濡れタオルで拭いていた時のことです。拭き終えた包丁からは、つんと刺すような痛みが私の指先に走りました。改めて見ると、そこにはまた小さな切り傷が見え隠れしていたのです。

この異常事態に戦慄を覚えた私は、ティッシュに塩を包んで胸元に挟みました。オカルトの世界に傾倒するほどの人間ではありませんが、この不可解な現象には超自然的な意味合いがあるように思えてならなかったのです。

結局、この怪奇現象は忘れ去られるどころか、あるものを私から奪ってしまいました。その日、機械の点検をしていた私の指先が、何者かに刃渡りされてしまったのです。刃にはガードが付いており、手順通りに作業をしていたはずの出来事でした。理不尽な事故に疑問符が付きましたが、私の中に妙な安堵感が去来しました。

"もうこれで終わったんだよね。"

しかし、この出来事はそう単純に終わるはずもありませんでした。私の指先が無残にも切り落とされてからも、怪奇現象は後を絶ちませんでした。

救急車で運ばれた病院で、医師に説明を求められた際、私は口を濁すしかありませんでした。超自然的な力が関わっているという可能性を話せば、きっと精神病院に連れて行かれることでしょう。

そうした中で、私を救ったのが娘の発言でした。機械の点検を手伝っていた娘が、突如、恐ろしい言葉を口にしたのです。

"あれは、お母さんに気をつけろって言ってたんだよ。"

娘によれば、私の指先が切り落とされた直前、機械から悪魔のような声が響いたそうです。娘はそれを聞き逃していなかったのです。

医師たちは難しい顔をしましたが、私たちの証言を単なる妄想とは片付けられませんでした。そこで提案されたのが、私たちに同行し、実際の現場を調査するという案でした。

病院に残された私は、看護師から心当たりを聞かれました。私はしぶしぶ、ティッシュに塩を包んでいた出来事を打ち明けました。すると看護師は、塩は古来から魔除けの力があると言われていると教えてくれました。なるほど、私は無意識のうちに魔除けを行っていたのですね。

翌日、医師と娘たちは工場に戻ってきました。そして、驚くべき事実が判明しました。機械そのものに悪魔が宿っていたのです。長年の歳月の中で、機械に罪の魂が宿り、私たちを苦しめていたのだと分かりました。

医師たちは呪術師を呼び、機械に宿る悪魔を祓い、工場の地鎮祭が行われることになりました。機械の修理や工場の改修を施し、ついには営業を再開することができました。娘の発言がなければ、私たちはおそらくこの出来事の真相を知ることはできなかったでしょう。

私はその後も怪我の後遺症に悩まされましたが、魔除けの力を借りつつ、この出来事を乗り越えることができたのです。この恐怖の記憶は、未だに私の心の中で生々しく蘇ります。


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