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鏡の向こうの異世界【怪談・怖い話】

俺の家には大きな化粧台があって、その鏡が苦手だった。

高校の時、なんでこの鏡は壁に向いてんだ?って母ちゃんに聞いたら、
「あんたが鏡嫌いだからよ」って返された。子供の頃の俺はその鏡が大好きで、毎日「友達と遊んでくる」って言って出かけてたらしい。でも、その「友達」ってのは誰も見えない存在だった。

小学生の頃、よくアパートの駐車場で遊んでたんだ。ある日、母ちゃんが俺に「お友達はどんな子なの?」って聞いてきて、俺は「白いの!カミサマだって!大きいの!」って答えたんだ。母ちゃんは見えない友達だと納得したみたいだけど、その友達との関係は不気味だった。

ある日、俺は大興奮で「友達の家に遊びに行っていい?」って母ちゃんに聞いた。「すっごく綺麗な所なんだって!沢山の花が咲いていて暖かいんだって!こっちに住まないかだって!」って言ったんだ。

母ちゃんはそれを聞いて何か嫌な予感がしたみたいで、「家族と暮らしたいからそっちには行けないって、お友達に言ってくれる?」って言ったんだ。すると俺は、「髪が長くなったら連れて行くって!」って言ったんだ。その後、母ちゃんは急いで俺の髪を切り、化粧台の鏡を壁に向けた。

その後も奇妙な出来事は続いた。小学校に上がった頃、俺は落書き帳に絵を描いてた時、伸ばした足の首を掴まれ、振り返ると笑顔の男が俺の足首を掴んでた。

その瞬間、大きな地震が起きて、母ちゃんと俺は急いでアパートから飛び出した。地震が収まった後、部屋に戻ると、俺が寝てた所に箪笥が倒れてた。俺は「お礼言ってくる」と鏡がある部屋に行き、戻ってくると「鏡怖い」と言った。それ以来、鏡が嫌いになった。

大学進学後、地元を離れて半年経った頃、実家の化粧台が倒れて鏡が粉々になった。母ちゃんは「鏡が壊れた理由は、あんたを追いかけたのかもしれない」って言った。俺の住む地域に近い修理会社に出された鏡は、修理後も使える向きに戻された。

その頃、見知らぬ男が夢に出てきて「寂しいから早くおいで」って言ってた。母ちゃんは、「あんたを追って行ったのかもね」って言った。その後も俺は鏡が苦手だ。

大学を卒業して数年後、俺は地元に戻り、家業を手伝うことになった。実家に帰ると、母ちゃんは再び化粧台の話を持ち出した。

「あの鏡、今でも時々光るのよ」と。半信半疑で部屋に向かうと、確かに鏡は微かに光を放っていた。その夜、再び夢に見知らぬ男が現れた。

「もう逃げられないよ」と囁かれた瞬間、目が覚めた。恐怖に震える俺を見て、母ちゃんは「もう一度、髪を切りに行こう」と言った。

鏡は今も俺を呼び続けている。


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