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疳の虫【怪談・怖い話】

これは、職場の同僚から聞いた話だ。

彼が小学校低学年の頃、三人兄弟の末子であった彼は、自分の部屋を持たず、夜はリビングで酒を飲む父親とテレビを見て過ごしていた。

父親が絶対的な権力を握る我が家では、チャンネル権も当然のごとく父親にあり、野球や釣り番組ばかりが流れていた。彼は、学校で流行っていたアニメの話題についていけず、いつも孤立した気分を味わっていたという。

ある火曜日の夜、父親はいつものようにテレビのチャンネルを変え、お宝鑑定番組を見始めた。

その番組は、道端で拾った石ころが実は隕石で数百万の価値があると鑑定されたり、大金を払って買った伊万里焼が二千円と評価されるなど、出品者が喜怒哀楽を露わにすることで人気を博していた。その日は特に「曰く付きのお宝鑑定大会」という企画が放送されていた。

その企画の中盤、ある出品者が「手を合わせると指と爪の間から白い糸が出る」という不思議な「お宝」を披露した。

それまでの妖刀や涙を流す屏風絵などに比べると、一見地味なこのお宝に対して、彼は内心で失笑した。ところが、ふとそのお宝に向かって手を合わせた瞬間、彼の指先から本当に白い糸が生えてきたのだ。

その糸は、指と爪の間から1センチほどの長さで、布繊維のように細いものであった。驚愕した彼は、その糸を摘んで引っ張り、次々と抜き取っていった。糸は抵抗なくスルスルと抜けていき、全長10センチ未満の短い繊維が現れた。全ての糸を抜き終えた彼は、父親に見つかることを恐れ、それらをこっそりゴミ箱に捨てた。

その後、彼は「疳の虫」という現象を知った。疳紐という迷信によれば、子供の指先から出る白い糸を抜くと癇癪が治まると言われているが、実際に手から糸が出ること自体があるという。

しかし、彼の体験はその一度きりで、特にオカルト的な力が働いたのかもしれないと考え、この話を共有することにしたのだ。

「お宝」の詳細については彼の記憶が曖昧で、掛け軸だったような気がするが確信は持てないという。彼は、当時の放送映像や画像をネットで探してみたものの見つからず、同じ放送を見た記憶がある人がいれば書き込んでほしいと願っていた。

彼の話は、特にオチもないかもしれない。しかし、その一度限りの奇妙な体験が、彼の中で今もなお解けない謎として残っている。

[出典:759 :本当にあった怖い名無し:2022/06/23(木) 21:31:05.69 ID:0cI0p3bU0.net]



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