【人見祐三子】不妊や死産を乗り越え妊活を頑張る女性の心と体をサポート。ひとりひとりに寄り添い伴走する「かかりつけセラピスト」~前編~
閑静な住宅街の中にひっそりと佇むログハウスで、女性専用のプライベートサロンを運営している人見祐三子(ひとみゆみこ)さん。
サロンは、日々頑張っている女性たちが、日常から離れ、心も体も開放される癒しの場所となっています。時には涙される方もいらっしゃるとか。
一人一人とじっくり向き合うスタイルが魅力のセラピスト人見さんにお話しを伺ってきました。
心も体もふわっと緩み解き放たれる
女性専用のプライベート空間「もりのいるか」
ーー1日3名限定の完全予約制プライベートサロンということですが「もりのいるか」の一番の特徴はどんなところですか?
一番のベースにあるのは、「一人一人に寄り添いたい」ということです。今、実際に通ってくださっているお客様とは、かなり細かいところまで話をします。その方の職業や家族構成、普段の食事や生活習慣、周囲の人間関係、今こんなことで悩んでいて、将来はこんな風になりたいと思っているなど、その方の背景をできるだけ知るよう心がけています。
初めからオープンに話してくださる方もいますが、もちろん、そこまで踏み込まれるのは嫌だと思う方もいるので、タイミングや心を開いてくださるまでの時間は人それぞれなのですが、私としてはその方のお話をしっかり聞いたうえでセラピーを進めたいと思っているんですね。
お客様との関係性を大切に育みながらセラピーをしています。そこが一番の特徴でしょうか。
ーーとてもカウンセリングに力をいれておられるんですね。深いところまで話を聞いてセラピーをするのとしないのとでは違うものなのですか?
全然違います!セラピーをする方もされる方も共通の認識がもてることが大きいんです。
私が体を触って感じることと、お客様が話してくれることをお互いが理解して「ああ、そういうことか」と気づくことが大切で。
例えば、セラピーをしていて、背中の腎臓あたりが固くて冷たいなと思ってお伝えすると、「そう言えば全然便が出ていなかった」とお客様が会話の中で思い出して話してくださいます。
私も「ああ、冷えているんだな」と腑に落ちるし、お客様も「そこが冷えてたんだ、それで便秘気味になるんだ」と気がつくんですね。
こうやって、お互いの共通認識をもつことで問題がスッキリと解決することが結構あるんですよ。
ーーへー!それは凄い!解決するなんて。一方的ではなくて相互にがポイントなんですね。話すこと、気づくことが重要そうですね。
そうなんです。あるお客様の話ですが、肩の一部が固くて「何か思いあたることはありますか?」と聞いたんですね。お客様もぶつけた記憶もないし何だろう?と首をかしげていたんですが、話す中で、ハッと思い出されて。
涙されながら、「実は子どもに肩を噛まれたことがある」と話してくれました。
そのお子様は特別支援学校に通われていて、今までお母さんに対して暴力的になることがなかったので、初めてのことでとてもショックだったと。
もちろん、噛まれた体の傷などは治っているのですが、心の中にある悲しさやショック、心配や葛藤などがその肩の部分に固くなって残っていたんじゃないかなと私は思いました。
ーー不思議ですね。心と体は繋がっているじゃないですけど、心の反応が体にも出るんですね。
そう思います。特にこういうお話は、誰にでも、どこでも話せる話ではないと思いますし、気がつかないうちに自分の内に抱えこんでいたのかもしれませんね。
体に何かしらの形で出て、その原因はなんだろうと探っていくと、私生活での心配事など心にも要因があるんじゃないかと思うことも多いですよ。
初めて来られた時に「恥骨と尾てい骨が時々痛むことがある」と仰っていて、出産で痛めることはもちろんありますが、時と共に回復しますし、お子様も小学校高学年でかなり時間も経っているので、その時はなんでだろうと思っていたのですが。このお話を聞いて、きっとお子様のことが関係しているのだろうと感じ、それもお伝えしました。
ご自身も私と話していく中で、子供さんへの想いや心配やストレスなどが体に出ていたんだと気づかれ、自分の深い部分に触れて、目をむけていくとことを繰り返しているうちに、いつの間にか痛むことがなくなったそうです。
ーー深いところまで話を聞いてセラピーをするのが大切なのがよく分かるお話です。こういう事は経験上よくあるのですか?
はい。あるんです!他にも色んな話がありますよ。全く根拠はないんですけどね(笑)。
これは、私が治したということでは全くなくて、その方が「自分の体が今、こう反応しているんだ」ということに気づくことが大切で、私と話すことをきっかけに自分の心と向き合ったり、こうなりたいという理想を確認したりということを繰り返していくなかで、体がいい方向に変わっていくんだと思います。
また、溜まっていた感情を出す、話すことで自分の中の考えもまとまって少しスッキリするのも体に出なくなる一つだと思っています。
私はそこに伴走する形で、治していくのはご自身の力が大きいんですね。
西洋医学で「かかりつけ医」って言いますよね。私は身近で安心して相談してもらえる「かかりつけセラピスト」のような存在になりたいです。
不妊・死産を乗り越えた私だからこそできること
ーー一人一人と深く関わり伴走していきたいということですが、特に妊活をしている女性をサポートしたいという想いも強いとお伺いしました。
そうですね。でも「妊活専門のサロンです!」としたい訳ではなくて、PMSや更年期障害など日々のあらゆる不調、女性のお悩みに対応したいと思っています。けれど、妊活は私自身が実際に経験し、迷ったり悩んだりした過去があるので、その経験を生かるのではないかと思って、一番思い入れがあるんです。
一人目も授かるまで3年ほどかかり、なかなか授からなかったんですよ。なんで妊娠しないんだろうと焦ったり、周りの妊娠や出産に反応してしまったり、色んな感情を味わいました。
2人目も欲しいと思ってから約5年かかりましたし、やっとの思いで妊娠したのに死産になって。当時は「これが運命なんだろうか……。」と、気持ちを持ちなおしても翌日には落ち込んで。気持ちの浮き沈みが激しかったですね。「あれをしたからダメだったのかな?」とか随分自分のことを責めたりもしました。
だから、妊活を頑張っている方の気持ちの揺れも自分ごとのように分かる気がします。
ーー失礼かもですが、人見さんが苦労なくお子さんを2、3人授かっていたら、どんなに寄り添って言葉をくれても「そんなこと言われても……」と頭のどこかで思ってしまいそうで。
実際に経験し、痛みを知っている人見さんだからこそ、同じ言葉でもすんなり耳に届いたり、話しやすかったりするのではないかな?と思いました。
まさにそうだと思っています。だからこそ私が伝えられることがあるんじゃないかと。今となっては、こうしてお話することもできますし、あの経験があったからこそ今の自分があると感謝することもできるようになりました。渦中にいる時はとても辛かったのですが、そんな私だからこそできることがあると信じています。
ーーまた不妊の辛さは話したくても誰にでも話せる話ではない非常にデリケートな部分ですよね。
そうですね。周期に合わせての生活になり一喜一憂することも多いですし、相談や話を聞いてもらう人を選ぶようなところがあると思います。
また、話せたとしても理解が得られなかったり、相手の反応によっては傷ついてしまったり、周りに話せず一人で抱え込んで大きなストレスになってしまったり、色々とあると思います。
不妊の辛さと一言でいっても、状況や置かれている環境も千差万別。誰一人同じ人はいないと思いますし、だからこそ、メンタルな部分でも伴走して少しでもストレスを軽くしてあげたいという想いがあります。安心して吐露できる場所であってほしいですね。
妊活をしていく中で、自分にとって辛いと感じる出来事やシーンに遭遇するともあると思います。でも、考え方ひとつで見える世界というか、見え方が変わることもあって。それだけでストレスが全然違うんですよね。時間が経った今だからこそ分かることもあって、私なりにお伝えして、お役に立てたらいいなと思います。
自分の体の中にある力を信じる!
本来持っている力を底上げする補完療法
ーー日頃は出せない感情や話を聞いてもらう場所があるだけで精神的に全然違う気がします。一方で妊活では体づくりも大切だと思いますが、体へのアプローチとしてはどういうことをされているんですか?
色々とありますが、代表的なものとして「ファータイルアロマセラピー」とというメニューがあります。ファータイルとは「繁殖力のある」という意味で、体が本来もっている力を底上げすることで妊娠する力も高めていくセラピーになります。
「ホットストーン」が土台となり、そこにメディカルアロマやカウンセリング、手を使う丁寧な施術、氣、東洋医学の知識など様々な要素を融合させています。
ーー体が本来もっている力を底上げしていくんですね!土台となっているんホットストーンとはどういうものですか?
50~60度に温めた天然の玄武岩を使ったオイルトリートメントです。岩盤浴に使われている石と同じで、おいているだけで遠赤外線効果で体の深部まで温まり、ゆるめる効果があります。
普通のトリートメントだけでも血流がよくなりますが、温めた石でオイルトリートメントすることで、温熱状態のところに温かいものが体全体に流れていき、代謝がすごく上がり循環がさらによくなります。
ーー体がものすごく温まりそうですね。それにメディカルアロマなどを融合されているんですね。
はい。体を温めることがとても大切なんです。体温が1℃上がると免疫力が30%あがると言われているくらい体が変わるんですよ。現代人は平熱が35度台と低い方も結構多いんです。基本的に冷えは様々な不調につながります。体が温まることで自然治癒力もあがり体が強くなりますよ。
メディカルアロマは精油の中に入っている成分を把握して効果効能から、お客様のその日の状態や時期、目的や用途に合わせて30種類くらいから3~4種類をブレンドしています。
例えば、キレイな生理を起こすために内膜をスッキリ出すならばデトックスの効能があるものを、卵胞期だと、卵胞を育てるホルモンを出すための精油を選びます。また、卵巣や子宮にエネルギーを送るのを意識してトリートメントの手技も細やかに調節したりします。
ただ単純にご褒美でリラックスする様なエステのイメージではなく、医学の補完療法として利用してもらえる内容となっています。
ーーリラックスする目的ではなく、医学に替わる、補完するようなセラピーということですね。
もちろん心地よさを感じて思いっきりリラックスしてもらうことも大切です。ただ、それだけではないというか。不妊治療と並行して通われている方が多いのですが、薬だけに頼ってホルモン値をあげるのではなく、自然治癒力があがっていくことで自分の体の中からホルモンをしっかり出すことができる、体の中にある力を底上げすることが妊娠に繋がるというという部分を大切に考えています。
他にも韓国の伝統的な「よもぎ蒸し」も妊活におすすめしたいと取り入れています。専用の壺の中によもぎなど薬草と乳酸菌、水を入れてグツグツと沸騰させ、その蒸気を下半身を中心に皮膚や粘膜に当てて子宮周りを温めます。
体が温まることはもちろん、血流やリンパの流れもよくし、ホルモンバランスも整い、いい菌を増やし子宮内の状態を整えます。
また、サロンを離れた日常生活でのアプローチとして、食生活や気をつけたほうがいいこと、日々の過ごし方やストレスとの向き合い方などもお伝えしています。
ーー日々の生活で意識するといいことなどもお話されるんですね。まさに心と体へ色んな方面からトータル的にサポートされているんですね。
はい。食生活や冷やしてはいけない部位など、無理のない範囲でできることをアドバスさせていただきます。また、サロンの特徴の一つでもありますが、自然派志向なので、体が本来もつ力についてもお話しますよ。
具体的には、人間という生き物としての自然な反応、体の持つ防御反応を大切にしていて。例えば、鼻水や咳、下痢や嘔吐など、体が「出そう」とすることは、とてもいいことだと捉えています。
薬で不自然に止めてしまうのは実は体にすごく負担をかけているんですよね。
もちろん、高熱が続いて水分が全く摂れないなど、あまりに辛い時はお薬を上手に利用するのはいいと思うんですが、基本、すぐに止めることはしないで自分の体の中の力を信じて見守るという考え方です。どうしてその反応をしているか体の働きとして必ず意味があることなので。様々なことが自然治癒力、免疫力をあげることにも繋がっています。
ですが、色んな考え方があると思うので無理に押し付けることもしません。あくまでも私の話をいいなと思ってくださる方に色々とお話させてもらっています。中には、できるだけお薬を飲まないようにしたいと、少しずつ生活を変えて量が減ったりするお客様もいらっしゃいます。
ーー自分の「体」にしっかりと意識を向けて労り、反応を大切に暮らしていくことで、本来の健やかな体に戻っていき、それが妊娠や薬に頼らない生活に繋がっていくのではと感じました。前編ではサロンのことを中心にお話を伺いましたが、後編では人見さんという「人」をもっと深堀していこうと思います!