キーワードは「オープン&フラット」:「シン・トセイ3」で次のステージへ
2021年3月に「シン・トセイ」戦略を発表してから、1年後の2022年2月に「シン・トセイ2」、さらにその1年後の本日、「シン・トセイ3」に戦略をバージョンアップさせました。
「シン・トセイ3」では、2025年度をターゲットとして、都政のQOS(クオリティ・オブ・サービス)の更なる向上に向け、単なるデジタル化にとどまらず、組織文化の変革にまで踏み込んだ次のステージに挑戦していきます。今回のnoteでは、この新しい戦略について解説します。
■「シン・トセイ」「シン・トセイ2」の成果
これまで「シン・トセイ」戦略では、2020~22年度までに短期集中で取り組む「コア・プロジェクト」と「各局リーディング・プロジェクト」を実践してきました。全庁一丸となった取組により、着実な成果が上がっています。
2020年度から実施している都庁職員のデジタル環境に対する満足度調査では、2022年度に職員の「満足」が「不満足」を初めて上回りました。
また、ペーパーレス、FAXレスが大きく進展し、本庁のコピー用紙の調達量は2022年度に70%削減に到達する見込みで、FAX件数は99%削減を達成しました。
さらに、本庁だけでなく事業所が主体となるDXも進展しています。豊洲市場の衛生監視の現場で、現場の都庁職員自らノーコード/ローコードツールを使ってアジャイルにアプリを開発し、業務変革を進めてきた事例が、2022年11月、全国知事会で31都道府県から推薦されたデジタルに関する先進政策から「大賞」(デジタル・ソリューション・アワード大賞)に選ばれました。
■シン・トセイ3で目指すもの
このように都庁職員が一丸となって取り組んできた改革の成果は着実に実を結びつつあるものの、私たちが目指すのは都政のQOSのあくなき向上です。
「5つのレス」の徹底などにより、紙・はんこベースの働き方をデジタルベースへ転換するこれまでの改革に道筋をつけることができたことで、「シン・トセイ3」では、この改革をより広く事業所も含めた都庁全体に対象を広げ、さらに組織文化の変革といったより本質的な構造改革に踏み込んでいくこととしました。
では、私たちが「シン・トセイ3」で目指す都庁はどんなものか。大きく3つあります。
(1)2025年度に「デジタルガバメント・都庁」の基盤構築を完遂する
まずは、「デジタルガバメント・都庁」の基盤構築の完遂です。
構造改革推進チーム発足当時、私たちはひとつのビジョンを掲げました。「リアル」と「バーチャル」のハイブリッドで、デジタル空間にもう一つの都庁をつくる「バーチャル都庁構想」です。
この構想の実現に向け、「シン・トセイ」「シン・トセイ2」で取り組んできた「デジタルガバメント・都庁」の基盤構築に向けた取組を、「シン・トセイ3」では2025年度に「完遂」させます。
そのため、行政手続のデジタル化の実現、官民協働のデータ連携基盤の構築、主要内部事務のデジタル化の完了、本庁・事業所のオフィス改革の完了、"デザイン思考"の都庁全体への浸透、オール東京でのDX推進体制の確立に取り組んでいきます。
(2)「オープン&フラット」で「政策イノベーションを起こす都庁」へと進化する
「デジタルガバメント・都庁」の基盤構築の完遂という目標に加え、今回、新たに2つの「目指す都庁の姿」を打ち出しました。
まず、「オープン&フラット」で「政策イノベーションを起こす都庁」への進化です。
改革を進める間にも社会情勢は大きく変化し、都民のニーズも複雑多様化しています。こうした中、都政のQOSをさらに向上させていくためには、都庁外のプレーヤーから新たな発想を取り入れ、都庁内では職層や所属を越えた活発な議論を展開することで、様々な知恵を融合し、効果的な政策を生み出していくことが必要です。
このような「政策イノベーションを起こす都庁」へと進化していくため、「オープン&フラット」の視点で更なる改革を進めていきます。
たとえば、「オープン」の視点では、都庁内だけで政策を考えるのではなく、都庁を出て、都民や多様なプレーヤーと直接向き合い、対話する。
「フラット」の視点では、常にユーザーである都民の目線に立ち、都民と共に、使いやすい行政サービスを追求し、創り上げていく。
「シン・トセイ3」ではそうした視点で改革を進めていきます。
(3)職員一人一人が楽しく夢中で仕事をする「おもしろい都庁」へ
さらに、職員一人一人が楽しく夢中で仕事をする「おもしろい都庁」を目指すことを新たに打ち出しました。
誰でも、やりたいことをしている時が、一番楽しく、夢中になれる瞬間です。職員一人一人がそう思って仕事ができる都庁は、最高に生産性が高い都庁です。
職層や所属を超えて「オープン&フラット」に議論し、自分のアイデアを実現できる。意欲に応じて幅広い学びや挑戦、そして成長の機会が開かれている。こうした中で、毎日ワクワクしながら夢中で仕事に取り組んでいる。「シン・トセイ3」では、そんな「おもしろい都庁」を目指して取り組んでいきます。
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こうした目指す姿に向け、「シン・トセイ3」では、次なる改革に向けてプロジェクトをバージョンアップさせ、これまでの7つのコア・プロジェクトを6つの「シン・コアプロジェクト」として進化・再編します。
この新しいコア・プロジェクトについて、かいつまんでご紹介します。
■01:都庁のワークスタイル変革プロジェクト
新しいコア・プロジェクト、一つ目は「都庁のワークスタイル変革プロジェクト」です。
これまでデスク、固定電話、紙などに制約された働き方を見直し、柔軟にレイアウト変更できる「未来型オフィス」の整備や、ペーパーレス、FAXレス、はんこレスなど「5つのレス」の徹底などに取り組んできました。場所や時間を柔軟に使いながら、様々な人たちとフラットな立場で「つながり、議論し、提案する」イノベーティブな働き方が都庁内に少しずつ広がり始めています。
「シン・トセイ3」では、こうした変革を本庁全体、さらには都内600か所で住民に近い場所でサービスを提供する事業所の隅々にまで展開し、単なるオフィスの整備にとどまらない、都庁全体の「ワークスタイル」の変革を実現していきます。
働き方を転換するため、オフィス、ツール、システム変革を全庁展開し、「自分たちのオフィスは自分たちで作る」を合言葉に、2025年度には本庁全部門で未来型オフィスを整備し、全600事業所でも業務改革を実践するとともに、職員が使うシステム基盤を利便性の高いクラウドインフラに大きく転換します。
■02:都政スピードアップ・制度改革プロジェクト
新しいコア・プロジェクト、二つ目は「都政スピードアップ・制度改革プロジェクト」です。
「シン・トセイ2」で打ち出した「事業執行の迅速化」は、「加速化方針2022」で事業の前倒しや手続の短縮化など手法を具体化させ、債務負担行為を活用して迅速化につながった事業の規模は約2億円から約367億円(R4三定補正・四定補正、R5当初予算)に拡大しました。
「シン・トセイ3」では、事業執行の迅速化の更なる展開にとどまらず、職員の採用/人材育成/効果的な人材活用、さらにはデジタル時代における都庁の意思決定のあり方、庁内の組織間の権限のあり方など、従来の考えにとらわれず、時代に即した形で既存の「制度・運用」を見直していきます。
本プロジェクトの推進にあたっては、局横断的な議論の場である「都政スピードアップ・制度改革推進チーム(仮称)」を編成し、制度・事業所管局が一体となって制度・運用の見直しを実施していきます。
■03:サービスデザイン徹底プロジェクト
新しいコア・プロジェクト、三つ目は「サービスデザイン徹底プロジェクト」です。
私たちはこれまで、すべての行政手続(約28,000プロセス)のデジタル化を推進するとともに、ユーザーレビューやユーザーテストなどにより、利用者の声を聴き、サービスの質を改善する実践を進めてきました。
「シン・トセイ3」では、すべての行政手続のデジタル化にとどまらず、使いやすいサービスの提供を徹底的に追求していきます。専門家を含めた「サービスデザインチーム」を編成して各局の実践をサポートし、都民(顧客)との対話を通じてより良いサービスをつくり上げる「サービスデザイン」の考え方を全庁に浸透させます。
その第一歩として、本日、都庁職員向けの「ユーザーテストガイドライン」をバージョンアップさせ、ユーザーリサーチやプロトタイプなど、「上流工程」でのユーザーテストの実践を方針化するとともに、都民にテスターを拡大させる改訂を行いました。「テストしないものはリリースしない」の合言葉を全庁に浸透させていきます。
一方、いくらオンライン環境が整っても、窓口を利用される方はいらっしゃいます。そのため、「待たない、書かない、キャッシュレス」など便利で快適な窓口の実現を目指し、全7,000の行政窓口において2025年度までにBPRを実践することとしました。また、今年度よりプロトタイプ窓口でQRコードから回答できる「ユーザーレビュー」を設置し、利用者意見を踏まえた改善を徹底していきます。
■04:オープンイノベーション実践プロジェクト
新しいコア・プロジェクト、四つ目は「オープンイノベーション実践プロジェクト」です。
これまで、2022年8月の「Team Tokyo Innovation」の始動、9月の「GovTech東京」設立構想の発表など、スタートアップとの協働や都内区市町村も含めた東京全体のDXに向けた枠組みが整ってきました。「シン・トセイ3」では、これらをベースに、都政のあらゆる分野で「オープンイノベーション」を実践していきます。
スタートアップについては、2022年11月に発表した戦略「Global Innovation with STARTUPS」に基づき、都庁全体でスタートアップとのコミュニケーションを深め、都政現場へのスタートアップの参画を進めていきます。
また、来年度から稼働する新団体"GovTech東京"と協働し、都内区市町村も含めたオール東京でのDX推進も加速させていきます。
さらに、西新宿におけるデジタル技術を活用した市民や企業等がまちづくりに参加できる機会や場の創出や、シビックテックとの共創コミュニティの形成など、都民参加によるオープンイノベーションも推進していきます。
■05:データドリブンな都政の推進プロジェクト
新しいコア・プロジェクト、五つ目は「データドリブンな都庁の推進プロジェクト」です。
これまで、データを社会全体で活用していくため、仮想空間に現実世界を再現するデジタルツインの実現に向けた基盤構築やセンサー等が搭載されたスマートポールの整備、行政データのオープンデータカタログサイトでの公開などの取組を進めてきました。
「シン・トセイ3」では、あらゆるデータを安心して利活用できる「東京データプラットフォーム(TDPF)」を2023年度に稼働させ、官民が保有する様々なデータをつなげ、オープンに協働して新たなサービスを創出するなど、データを活用して課題を解決していく「データドリブン社会」を目指していきます。
■06:都庁の活性化・ウェルビーイング実現プロジェクト
新しいコア・プロジェクト、六つ目は「都庁の活性化・ウェルビーイング実現プロジェクト」です。
都政のQOS向上に向けた改革を確実に実践していくためには、その担い手である職員一人一人が、楽しく夢中で仕事ができる都庁、つまりは「おもしろい都庁」であることが重要です。そのため、「シン・トセイ3」では「活性化」「ウェルビーイング」という視点からこのプロジェクトを推進していきます。
まず、職層や所属を越えてアイデアが飛び交う「オープン&フラット」な組織づくりを実践していきます。これまで取り組んできた職員のアイデアを実現する「デジタル提案箱+」、職員同士で課題を解決するQ&Aフォーラム「SHIN-QA」といったオンライン上の仕組みに加え、シン・トセイで実践している構造改革推進チームと若手職員や現場職員とのリアルな議論の場を拡充するなど、さらに機会を増やしていきます。
さらに、職員の学び・挑戦・成長の機会の充実に向けて、派遣を充実させ、公募制人事を拡充させるとともに、きめ細かい採用・任用の仕組みづくり、男性の「育業」の定着や女性の活躍推進なども進めていきます。
■各局リーディング・プロジェクトも11追加し、全57プロジェクトを推進
都庁内各局が主体となって進める「各局リーディング・プロジェクト」も11プロジェクト追加し、全57プロジェクトで都政のQOSの更なる向上に挑戦します。
アート、テクノロジー、デザインをテーマに様々なプログラムを開催し、スタートアップ等との連携により東京からイノベーションを生み出す「シビック・クリエイティブ・ベース[CCBT] 東京プロジェクト」や、
SNSを活用した相談環境の整備(バーチャルな居場所の創出)により、つながりを創出し、子供や子育て孤独孤立を予防解消する「子供・子育てメンター事業(仮称)」プロジェクトなどを追加しました。
■双方向コミュニケーションで改革を進めていく
最後に、シン・トセイを進めるにあたって最も大事にしているのが、都民や職員のみなさまとの「双方向コミュニケーション」です。
今ご覧いただいているnoteやポータルサイトを通じて、改革の進捗状況などを皆様へ「見える化」するとともに、いただいたご意見・ご感想を取組に反映する「デザイン思考」を徹底します。
noteでは、引き続き職員が自ら考え、実践する事例を都庁内外に発信・共有し、「顔の見える」情報発信で、取組を都庁内外に波及させていきます。
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「シン・トセイ」で私たちが重視してきたのは「実践」です。改革を「理念」にとどめるのではなく、職員の働く環境をデジタルの力で変えることで職員一人ひとりの「行動」を促し、その実践の過程で見出された課題を、柔軟な発想とアプローチで制度や仕組みの変革につなげ、職員を、組織を、都政全体を変えていく。それが私たちの目指す姿です。
「シン・トセイ」は1、2、3と改訂を重ねてきましたが、これまでの戦略の歩みを確認しながら、取組をステップアップさせ、「ギア」を上げることで、より本質的な改革に踏み込んでいます。
今回「シン・トセイ3」として戦略をバージョンアップし、それを実践することで、私たちの目指す「オープン&フラット」で「政策イノベーションを起こす都庁」、職員一人一人が楽しく夢中で仕事をする「おもしろい都庁」を実現していきます。
これからも情報発信を続けてまいりますので、「シン・トセイ」を応援していただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。