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職員一人ひとりのアイデアを実現!「デジタル提案箱」の今

都政の構造改革では、都民・職員からの声を募ることで、課題を見出し、改革に反映させる『双方向コミュニケーション』に力を入れています。

今回のnoteでは、都庁の職員が日々の仕事をする中で思いついたアイデアを改革に直接取り入れるためのツールである「デジタル提案箱」をご紹介します。

「提案すれば変わる!」と感じてもらうために

「デジタル提案箱」は都政の現場で仕事をしている職員から、改革のタネとなる提案を募ることを目的に2020年10月に開設しました。

私たちが意識したのは、職員が日頃思っていることを率直に提案でき、一緒に改革を進めていけるものにしたいということです。自分の考えたアイデアを提案し、それが担当部署に届いて実際に仕事のやり方が変わる。こういった事例を積み重ね、「提案すれば変わる!」と感じてもらえれば、より多くの提案につながっていくと考え、試行錯誤を繰り返してきました。

まず、役職や職種に関わらず、職員であれば誰でもポータルサイト上から手軽に提案できるフォームを作成し、寄せられた提案には全て回答することを原則としました。

これは、意見を聞いて終わりにするのではなく、組織として真剣に受け止め、一つ一つしっかり検討してフィードバックすることが、提案箱の信頼性を高めるために、何よりも重要だと考えたからです。

ここで課題となったのが、職員への回答スピードです。すぐに回答できるものもあれば、詳細な検討や調整が必要で回答まで数か月を要するものもあります。回答できないでいる間に、「提案したけれど無視された」と思われては、構造改革推進チームへの不信感につながると危機感を覚えました。

そこで、回答する際のルールを見直し、回答の類型を
① ご案内します(現行の仕組みでの実現方法を案内)
② 実施します
③ 実施に向け検討します
④ 将来的な課題とします
⑤ 実施は困難です
の5つに分類し、原則3週間以内その時点での検討状況を回答するよう見直しました。
例えば、実現に向けて制度の根本的な見直しが必要など、検討に時間を要するものについては、「④将来的な課題とします」として現時点での見解をフィードバックしています。

これまでの回答内容を振り返ると、
① ご案内します:35.3%
② 実施します:10.4%
③ 実施に向け検討します:17.2%
④ 将来的な課題とします:26.4%
⑤ 実施は困難です:10.7%
となっており、①~③の合計、つまり、提案したことで、課題が解決したりアイデアが実現に向けて具体的に動いたりしたものが全体の約6割となっています。

職員の提案が都庁の仕事を変える

「デジタル提案箱」には、これまで1,000件を超える提案が寄せらていますが、その中から職員の提案をきっかけに、実際に都庁の仕事が変わった例をご紹介します。

(1)Web会議環境の整備

「デジタル提案箱」を開設した当初に多く寄せられた提案は、「業務用の個人PC端末で都庁外の人とWeb会議をできるようにしてほしい」というものでした。

2020年10月当時の都庁では、他自治体や事業者など外部の方とWeb会議をするためには、専用の端末を準備し、Wi-Fi環境の整った限られた会議室を予約する必要がありました。予約が1か月先まで取れずに、外部との打ち合わせを対面で実施せざるを得なかったケースもありました。

感染症の拡大でリモート会議のニーズが増える中、こうしたWeb会議環境に対する改善提案が多くの職員から寄せられました。

そこで、早急に検討を進め、職員の業務用PC端末でTeams、Webex、ZoomなどのWeb会議サービスの利用を可能にし、執務室には無線LAN環境を整備することで、各職員がPC端末からいつでも外部とWeb会議をできるようにしました。

また、カメラやマイクなど、Web会議に必要な機器が足りないとの声が寄せられたため、外付けデバイスの配布を行いつつ、新規の業務端末を調達する際にはカメラやマイクを搭載したものへと更新を進めていきました。

こうした環境整備が一気に進んだことで、今ではWeb会議は都庁で当たり前の風景となりました。これは感染症対策につながるとともに、都庁にいなくても一緒に議論したり協働したりできる、そんな新しい働き方にもつながっています。

(2)QRコードの活用によるご案内の改善

普段から都民と接する機会の多い職員ならではの気付きやアイデアも「デジタル提案箱」に寄せられています。

東京都主税局のホームページ上には、AIチャットボットがあり、24時間365日パソコンやスマートフォンから、都税に関するお問い合わせができます。

このAIチャットボットについて、職員から
「都民の方は納税通知書を見て問い合わせをされることが多いので、AIチャットボットにアクセスできるQRコードがあれば、すぐに問い合わせできるのではないか」
という提案が寄せられました。

そこで、2021年5月から、納税通知書に同封するチラシにAIチャットボットにつながるQRコードを記載することとし、これにより納税通知書を見てわからなかったことを、すぐに手元のスマートフォンで調べていただけるようになりました。

この他にも、「申請書の受付を持参・郵送だけでなくメールで受けつけるようにするべきではないか」「学校から保護者に配布する資料を電子化できないか」など、現場目線で多くの提案が寄せられ、実現に向かっています。

(3)テレワークできる場所の充実

最近では「自宅以外にテレワークできる場所を増やしてほしい」という提案が実現に向けて動いています。

都庁では、テレワークを活用した柔軟な働き方を推進していますが、この取組を進める中で、職員からは「子供が家にいてリモート会議がやりづらい」「自宅のネット環境が不十分で業務が難しい」など、自宅でのテレワークに関する悩みが多く寄せられていました。

また、複数の場所に出張する機会の多い職員からは、訪問先の周辺にPC端末を使って仕事ができる場所がないため、外出時間を有効活用しにくいという声もありました。

こうした声を踏まえて、今年の6月から民間シェアオフィスの活用を一部の職場で開始しました。

実際に使ってみた職員からは、「仕事に必要な環境が整っており、集中して仕事ができた」「出張先から都度職場に戻らず、効率的に働くことができるようになった」などの声が寄せられています。

民間シェアオフィスの利用開始に合わせて、テレワーク時の効果的なコミュニケーション方法など、テレワークを活用して日々の業務を効率的に進めるための知見を集めたワークルールを作成しました。

新しい働き方を実践していく中で、「ユーザー」である職員の意見を踏まえ、働く環境やワークルールをブラッシュアップすることで、場所に捉われない柔軟で質の高い働き方を浸透させていきたいと考えています。

「デジタル提案箱」から、職員とのコミュニケーションを、より広く、より深く「シンカ」させる

「デジタル提案箱」を設置した当初は、提案に対して担当部署が回答するのみでやりとりは限られていましたが、もっと多くの職員にコミュニケーションの輪を広げていきたいと考え、2021年8月からは、提案者以外の職員も提案への共感を示したり、意見を述べたりできるよう、「いいね」ボタン「コメント機能」を追加し、職員間で議論することも可能にしました。

当時は「現状への不満のコメントが大量に来て、いわゆる炎上となってしまうのではないか」「感情的なやりとりがエスカレートして荒れてしまうのではないか」という不安も正直なところありました。

しかし、スタートしてみると、不満のコメントが来ることもありましたが、提案者が感じている問題点を別の職員が助言して解決したり、お互いの職場のノウハウを交換したりとポジティブな相乗効果が生まれ、職場・職層の垣根を超えた職員同士のコミュニケーションに大きな可能性を感じました。

この可能性は実際に形となり、2022年2月には、オンライン上で職員同士が疑問や質問を投げかけ、教え合うフォーラム「SHIN-QA(シンカ)」を開設しました。このネーミングには、シン・トセイのQ&Aフォーラムという意味のほか、職員同士で議論をシンカ(深化)させ、都庁をシンカ(進化)させていきたいという想いを込めています。

さらに、「デジタル提案箱」や「SHIN-QA」を運用する中で、投稿してくれる職員の方とオンラインだけでなく、顔を合わせて議論したいと考え、2022年8月に有志の職員を集めた座談会を「シン・トセイ オフ会」(オンラインではない会)と称して開催しました。

本庁・事業所合わせて約20名の有志が集まり、職場の壁を超えて活発に議論することができました。今後、更に回を重ねて議論を深掘りし、構造改革の新しい取組につなげていきたいと考えています。

* * *

構造改革が始まって約2年、「デジタル提案箱」で職員の提案を日常的に募り、それをきっかけに仕事の進め方が変わっていくことを目の当たりにすると、改革の重要な要素である職員との「双方向コミュニケーション」が着実に根付いてきていることを実感します。

時には手厳しい意見をもらうこともありますが、構造改革に関心を持ち、時間を割いて意見を言ってくれる職員がいることは、改革を進める立場としてとても励みになっています。

様々な職員が部署の壁を超えてフラットに提案し、活発な議論を行い、相乗効果によって更にブラッシュアップされたアイデアを組織がしっかり受け止めて、都庁にイノベーションを起こしていく。そんな将来の姿を目指し、一歩一歩、「デジタル提案箱」を起点とした双方向コミュニケーションを深めていきたいと考えています。

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