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シン・トセイで政策イノベーションを起こす!~「加速化方針2022」~

2020年8月に都政の構造改革が開始して2年が経とうとしています。

改革の突破口となる7つのコア・プロジェクトなどの推進により、未来型オフィスの展開、ペーパーレス55%削減、FAXレス99%削減、都民利用78施設の入場料等のキャッシュレス化の完了、オープンデータを活用したサービスの創出、スタートアップ製品の都政現場への実装など、着実に成果が目に見えるようになってきました。

一方、「シン・トセイ2」の策定からわずか半年、東京は、新型コロナウイルスや気候危機に加え、ロシアのウクライナ侵攻による混乱やエネルギー危機など、これまでにない出来事が重なり複雑に絡み合った危機に直面しています。

こうした状況を克服しつつ、都政のサービスの質(OQS)を飛躍的に向上させていくためには、都庁をより活発で機動的な組織へと進化させるとともに、社会の変化を先取りすることで、この危機をチャンスに変えていく視点が必要です。

そのためにも、柔軟でスピーディーな事業展開、臨機応変かつ果敢な見直し、イノベーションを生み出すスタートアップとの協働、ユーザー起点のサービスデザインの徹底など、従来の枠組みを超えた大胆な変革に取り組み、都政の「政策イノベーション」を起こすことが重要です。

その具体的な方針として、本日、構造改革推進チームのリーダー武市副知事とサブリーダー宮坂副知事から都庁のすべての職員に向けて、「シン・トセイ加速化方針2022」が示されました。

今回の加速化方針では、これまでのシン・トセイの方針とは異なり、7つのコア・プロジェクトごとに取組を加速化させるという形式をとらず、プロジェクト横断の新たな観点として「5つの方針」を打ち出しました。

今回の方針は論点が多岐にわたるため、本文とあわせてこちらのnoteをご一読いただくと、より奥行きをもって全体像がご覧いただけるようになっています。それでは、5つの方針を解説していきます。


■方針01:政策効果を素早く都民に届けるため、事業展開をスピードアップする

今回の加速化方針の冒頭を飾るのは「事業展開のスピードアップ」です。

経済社会情勢が激変し、社会の変化のスピードが速まる中、これまで以上に政策の効果を早期に都民に還元していくことが求められています。新技術の社会実装やインフラ整備など、都民生活の向上につながるサービスの提供をを時間軸でもっと早められないか。こうした声に対応していかなければなりません。

そのためには、これまでと同じような仕事の進め方ではなく、予算・契約面を中心にあらゆる制度・運用を総動員し、事業展開をスピードアップさせていく必要があります。そこで、制度所管局と事業所管局からなるチームで議論を重ね、事業執行の迅速化に向けた手法を検討し、今回の方針に盛り込みました。

ここでは、地方自治法に規定されている「債務負担行為」を活用し、年度の壁を越えた柔軟な運用を行うことで、事業の前倒しや手続の短縮を実現するなど、9つの方策を「迅速化メニュー」として整理しました。

こうした手法を都庁全体にルールとしてしっかり浸透させるため、加速化方針では、社会実装、インフラ整備といった5つの事業類型ごとに「迅速化モデル(第一弾)」をとりまとめました。

こうしたモデルを浸透させながら、「迅速化メニュー」を都庁全体のスタンダードとして定着させることで、事業執行をスピードアップし、これまでよりも早期に都民に政策の効果を還元していけるように取り組んでいきます。


■方針02:庁内横断のチームで、スタートアップとの協働を更に推進する

次の方針は「スタートアップとの協働の推進」です。

時代の最先端のニーズを機敏に捉え、イノベーションを生み出すスタートアップは、東京の成長に必要不可欠な存在です。スタートアップが生み出す新しいビジネスモデルは、様々な社会課題の解決にもつながることから、ともに未来の東京をつくっていく重要なパートナーでもあります。

変化の激しい時代にあっても、時代にあわせた行政サービスを迅速に都民に届けていくためには、都庁だけで政策を考えるのではなく、スタートアップと協働し、ともに社会課題を解決していくことがなによりも重要です。

しかし、昨年度はじめて実施したスタートアップ向けの調査によると、東京都が実施している施策について、スタートアップの7割は知らないか、見聞きしたことがある程度という結果でした。

一方、この間、海外における行政とスタートアップとの協働に関する事例も調査してきました。フランスでは政府が「Mission FrenchTech」という組織のもと、ワンチームで、スタートアップと密接にコミュニケーションを行いながら協働を推進していました。

そこで、スタートアップとの協働をさらに推進するための庁内横断のチームを立ち上げ、スタートアップ支援拠点内にチームメンバーが常駐する都庁の「出島」を作り、日常的な交流を展開していきます。

スタートアップに都庁に来てもらうのではなく、都庁自らスタートアップの集まる場所に出向いて、交流し、コミュニケーションを深めていく。今回の加速化方針では、そうした抜本的な姿勢の転換を盛り込みました。


■方針03:ユーザー起点の「サービスデザイン」を徹底する

方針の3つ目は「サービスデザインの徹底」です。

「ユーザー目線」で改革を進めていくことはシン・トセイの基本スタンスです。質の高い行政サービスを提供していくためには、サービスを行政だけで考えるのではなく、海外の先行する多くの事例と同じように、ユーザーとの対話を通じて、公共サービスをデザインしていくことが重要です。

「デザイン思考」を都庁内で「あたりまえ」のこととするため、今回改めて「サービスデザイン」の徹底を方針の一つとして盛り込みました。

加速化方針では、UI/UXデザインの取組の実践として、「テストしないものはリリースしない」を合言葉に、2022年度は100件を目標とし、テスターを職員から都民に拡大し、ユーザーテストをあらゆるサービスで徹底していくことを掲げました。

江戸時代、幕府は橋のたもとに「高札」を置くことで民衆に情報発信をしました。住民はわざわざそこまで出向いて「お上」の意向を知る必要がありました。

足立区HPより

江戸から明治に時代が変わり、150年以上経った現在も、私たち行政のサービスにはまだ「お上」の意識がないだろうか。「高札的な行政サービスを提供していないか?」都庁で働く職員の一人ひとりがそのように自分に問いかけ続けることが、この変化の激しい時代に今、求められています。

「答えを知っているのは(私たちではなく)ユーザーである。」ユーザーテストを都庁で年間100件実践することを通じて、そうした意識の根本的な転換を都庁内に浸透させていきます。


■方針04:デジタルを活用し、都庁の「仕事」をアップグレードする

4つ目の方針は、「仕事のアップグレード」です。

都政のQOSの向上のためには、職員一人ひとりがいきいきと働くことのできる環境を整備することがなによりも重要です。新しいデジタルツールやオフィスを使いこなし、自分たちの仕事の進め方を自分たちで作り上げていく。そんな風に仕事の進め方を転換していくことも呼び掛けていきます。

まず、より柔軟に職員が働き方を創造できるようにするため、2023年1月から職員がクラウド上で仕事ができるようになり、クラウド上に保存したファイルをみんなで同時に編集したり、チャットなどで気軽にコミュニケーションができる環境を整備します。

また、私たちが働く「オフィス」についても、「自分たちのオフィスは自分たちで作る」を合言葉に、2025年度の全庁展開に向けて未来型オフィスの整備を加速させていきます。

こうした新しい働き方への転換の「型紙」となる先行事例として、以前このnoteでもご紹介した市場衛生検査所の事例を動画にしました。職員自らノーコード/ローコードを使って仕事の道具を紙からタブレットへ転換することで、検査・データ共有・コミュニケーションを革命的に変化させる。こうした職員が自ら働き方を作り上げていく事例を都庁内に横展開していきます。


■方針05:都庁を活性化し、組織・人材づくりを強化する

最後の方針は、「都庁の活性化」です。

都政の構造改革の担い手は、職員です。職員一人一人が、世界に目を向け、積極的に学び、意見やアイデアを出し合い、「シン・トセイ」を実践し、都庁を活性化していかなければなりません。

都政の構造改革は上から押し付けるものではなく、職員一人一人が自分事として参加して作り上げていくことではじめて自律的な運動になります。すべての職員がいきいきと働くために、できることはないだろうか。

そこで、2022年5月にキックオフした「東京デジタルアカデミー」を通じて、オンデマンド学習コンテンツの充実など、幹部・若手問わず、全ての職員に向けた学びの場を用意します。

学びの機会の提供とあわせて、私たち構造改革推進チームと職員の双方向コミュニケーションも充実させていきます。

これまで職員が提案を投稿できる「デジタル提案箱+」で意見を吸い上げて反映していましたが、それをさらに深めていくため、「デジタル提案箱+」上でのテーマを設定した意見募集や、若手職員が構造改革について意見交換を行うトークキャラバンの実施など、意欲ある職員が積極的に構造改革に参画できる取組を進めていきます。

先日、東京都では育児休業の「育児のために仕事を休む」というイメージを一新するため、愛称を「育業」に決定しました。「育業」は、職場での仕事とは違った面から社会と関わり、市民(=ユーザー)の目線で行政サービスを見つめるチャンスでもあります。こうした発想の転換をそれぞれの職場にも促し、都庁の様々な現場で働く職員の一人ひとりが自分の経験から新しい発想を都政に持ち込んでいける環境づくりにも努めていきます。


仕事の進め方を転換し、「政策イノベーション」を起こすために

予算・契約制度を柔軟に活用することで事業展開をスピードアップさせること。スタートアップに来てもらうのではなく、都庁の方から出向くことで協働をさらに推進していくこと。行政だけで考えてサービスを作るのではなく、デザインの過程にユーザーに入ってきてもらうこと。職員が自分の仕事の仕方を自分で作り上げること。そして、職員との双方向コミュニケーションにより都政の構造改革を推し進めていくこと。

これまでの仕事の進め方を転換することを通じて「政策イノベーション」を起こす。それが、「シン・トセイ加速化方針2022」を貫く考え方です。

とはいえ、理念ばかりが先行していても、事は前に進みません。「都政の構造改革」はなによりも「運動論」であり、職員一人ひとりの「実践」の積み重ねの先に「新しい都政=シン・トセイ」を実現するものです。この方針を着実に都庁内に浸透させ、すべての職員の「実践」を通じて、都政のサービスの質(OQS)を飛躍的に向上させていくよう、構造改革推進チームとしても取り組んで参ります。

これからもこの「note」などを通じて改革の進捗状況をわかりやすくみなさまにお届けして参りますので、変わらぬご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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