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55%削減を達成した都庁のペーパーレスのこと

都政の構造改革では「5つのレス」として、ペーパーレス、FAXレス、はんこレス、キャッシュレス、タッチレスを推進しており、改革の進捗をダッシュボードで毎月「見える化」しています。

ダッシュボード(詳細は画像をクリック)

2021年度における都庁の「ペーパーレス」の進捗は、コピー用紙の調達量が2016年度比で55%削減という結果となり、目標としていた50%削減を達成することができました。

2020年10月の記事では、50%削減による効果であるコピー用紙1億枚は、積み上げると高さが約9,000m、世界最高峰のエベレスト(8,848m)を超えるとご紹介しましたが、2021年度末は、この「エベレスト超え」を成し遂げることができました。

今回のnoteでは、そんな都庁のペーパーレスについて、これまでの道筋をご紹介します。


都政の構造改革ではペーパーレスにどのように取り組んだのか?


都政の構造改革では、ペーパーレス、つまり「紙を使わない」ことは、都政のDXの第一歩であると考えています。まずは、これまで長い年月を経て強力に染みついている、紙前提の仕事のしかたを変えていかなければなりません。

都庁職員は業務でパソコンを使い、文書や資料はデジタルで作成しつつも、打ち合わせや上司への説明では、紙に打ち出して使うのが普通でした。資料の修正指示は紙の上に書かれ、それを再度パソコンで修正する。会議があれば、資料を大量にコピーし、ステープラの位置まで細かく指定されたルールに従って取りまとめて配布することが通例で、会議前には若手職員が総動員で大量の紙資料を準備しているという風景が都庁のスタンダードでした。都庁職員は「紙」のためにパソコンを使っていたのです。

しかし、紙中心の仕事では、働く場所がしばられてテレワークの障壁となりますし、業務で使用するデータを蓄積していくことも、集計することもできません。なにより打ち合わせや会議のためにクリップ止めなどの作業をする職員の業務量が職場の負担となっていたことは否定できません。

ペーパーレスは、わざわざ紙に打ち出して情報をやり取りする職員の手間を減らし、職員の働き方をDXに向けて変えていくために重要なことです。

* * *

都庁のペーパーレスは、「都政改革」の一環として2017年度から開始し、2019年度末時点では2016年度比で14%削減と、実績を積み重ねてきました。

そして、2020年8月からの「都政の構造改革」の取組の中でさらに抜本的にペーパーレスのあり方を再構築しました。

(1)高い数値目標の設定:「50%削減」へ

構造改革ではまず、高い数値目標を設定することから始めました。2020年10月に策定した「DX推進に向けた5つのレス徹底方針」では目標を大幅に引き上げ、新たに2021年度の目標を2016年度比50%削減と高いレベルに設定し、取組を抜本的に進めることにしました。

(2)進捗の「見える化」:PowerBIでオープンに

次に、取組の「見える化」に取り組みました。2020年11月より紙の使用量の進捗をMicrosoft PowerBIで「見える化」し、月次で更新していくことで誰でも都庁のペーパーレスの進捗を把握できるようにしました。


働く環境自体をデジタルで変える:本庁のすべての職場にディスプレイを導入


50%削減という高い目標を設定し、誰でも進捗が確認できる環境を整備した後、構造改革として取り組んだのは、都庁の職場にデジタルツールを導入し、職員の働く環境を変えることで、紙中心の仕事の進め方を根本から転換していくことです。

ペーパーレスを進めるためには、なによりもまず、都庁職員の業務端末が持ち運べるようになり、紙を打ち出した資料に頼ることなく、場所を選ばずに仕事ができることが不可欠です。そのため、2020年に都庁内の無線LANやテレワーク環境を整備し、2021年に入った後も回線やネットワークの増強などに取り組み、外部とのWeb会議を可能としました。(詳細は以下のnoteをご覧ください)

さらに、本庁職場へのディスプレイの配備にも取り組みました。

紙の資料を持ち出さずに打ち合わせを可能にするため、各局の打ち合わせコーナーに大型ディスプレイを導入し、業務端末から直接映し出した画面を見ながら打ち合わせし、その場で資料の修正を行える環境を整えました。

さらに打ち合わせスペースだけでなく、各局のそれぞれの職場にも一気呵成にディスプレイを導入し、日常業務でもペーパーレスを推進できる環境を整えました。デジタルサービス局としても標準価格などを示したディスプレイの「カタログ」を作成して提示するなど、各局での導入が円滑に進むよう支援を行いました。


「上流」を止める:紙の調達量の「総量規制」


紙を削減するためには、現在地を正確に数値化し、その推移を適切に管理していく必要があります。2021年度はペーパーレスの進捗を図る成果指標(KPI)の見直しを行いました。

これまで、ペーパーレスの成果指標は各局の複合機の複写サービス利用件数(コピー件数)としていたのですが、抜本的に紙を減らしていくためには、その「上流」にあるそもそもの「コピー用紙の調達量」をコントロールしていくことが必要なのではないかと考え、ペーパーレスの成果指標を再設定し、紙の調達量の「総量規制」を実施することにしました。

各局で調達できる紙の上限を設定することで、年度途中で50%超過した局は購入を原則禁止するなど、その進捗をきめ細かく管理していくことにしました。

一方、この制限には事業を実施する各局からの反発も大きいと予想されたため、担当レベルだけでなく、各局総務部長会の議題でもとり上げるなど、様々な局面でペーパーレスを強力に推進するよう各局に働きかけを行いました。


「上司は部下に紙で資料を求めない」:職場の意識を変える


ペーパーレスのためには職場における意識改革も欠かせません。2021年8月には「上司は部下に紙で資料を求めない」という方針を打ち立て、副知事からの通達として幹部職員への啓発を行いました。

また、全庁に共通する業務である予算、人事、計画の3部門でkintone®(キントーン)や部門サーバーの局横断での利用により、ペーパーレスを徹底していく方針を掲げました。

こうした全庁的なディスプレイの導入、職場の意識改革などの結果、構造改革以降ペーパーレスが抜本的に進み、2021年度は55%削減となり、目標を達成することができました。この結果は、なによりもそれぞれの現場にいる職員一人ひとりの理解と協力の賜物です。

※新型コロナウイルス感染症の発生に伴う業務量の大幅な増加による部分については除外していますが、仮にこの数値をいれた場合についても、2016年度比50.8%削減と、目標を達成しています。

紙前提の仕事の一つであったFAXについても、デジタルツールを活用することにより紙を使わないことが徹底され、2021年度に2019年度比で99.1%削減となり、こちらも98%削減の目標を達成しました。

FAXレスの取組の詳細は以下のnoteをご覧ください。


職員に仕事の質の向上を実感してもらえるペーパーレスに向けて


このたび55%削減を達成したペーパーレスですが、そもそもの目的は職員が働きやすい環境を作ることです。紙を減らしたことでかえって職員が働きにくくなったということでは本末転倒です。

そこで、2021年12月に都庁職員全員を対象に行ったデジタル環境に関する意識調査の中で、ペーパーレスによって仕事の質が向上したかどうかを調査しました。

その結果、ペーパーレスが進んでいる実感がある職員が53%、そのうち、ペーパーレスによって仕事の質が「向上した」と答えた職員が41%ということがわかりました。一方、仕事の質が下がったと答えた職員は10%、そもそもペーパーレスの実感がない職員が22%ということもわかりました。

職員からは、

● 上司への報告・資料提出・会議・レク資料をデータで行うようになった
● 印刷・検索・保存・廃棄にかかる時間が減り、他の作業に時間を割けるようになった
● 紙資料が減った結果、執務スペースが整理され業務に集中しやすくなった
● テレワークがしやすくなった

などの声が多く寄せられている一方、

● ペーパーレスで仕事をするためのツールが十分でない
● 上司・組織の意識変革が必要
● 誤字・脱字チェックなどは、紙の方がやりやすい

といった意見も寄せられました。こうした点を踏まえて、デジタルで効果的に仕事ができるよう、様々な工夫をしていきたいと思います。


これからの目標:70%削減に向けて


ペーパーレスは55%削減という大きな山を登ったばかりではありますが、今年度はさらに高い目標として「70%削減」を掲げています。

そのため今年度は、職員からの要望の多かったPDF編集ソフトの全庁導入や業務端末においてインターネット系でクラウドを活用して業務を進めることのできる環境の整備を予定しています。さらに、ペーパーレスが進んでいる部署から聞き取りなどを行うことで、好事例の横展開も進めていきたいと考えています。

また、今年度は、本庁だけでなく事業所についてもディスプレイの導入を進め、それぞれの業務の実態に合わせた形で、ペーパーレス、FAXレスの取組を展開していきます。

私たちが目指すのは、職員全員がペーパーレスを実感し、さらにそれによって仕事の質が向上した、と実感することです。「職員の仕事の質が下がらないペーパーレス」ということを意識しながら、日常業務で紙を使わないことを徹底していくことで、都政のDXに向け、デジタルを前提とした業務環境への転換に向けた第一歩を着実に歩んでいきます。

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