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【都政現場のDX】豊洲市場の衛生監視:都庁職員自らノーコード/ローコードで業務を変えました
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【都政現場のDX】豊洲市場の衛生監視:都庁職員自らノーコード/ローコードで業務を変えました

都政の構造改革「未来型オフィス実現プロジェクト」では、都庁本庁舎に加え、事業所のオフィス改革を進めています。都民生活に密着した600を超える事業所にディスプレイなどの基礎的なデジタルツールを導入し、あわせてタブレットやローコードのような実践的なツールを導入することで、事業所の業務を変革していくことを目指しています

2021年度、豊洲市場の水産物等の衛生監視の業務を行っている福祉保健局の市場衛生検査所において、都庁職員自らタブレットとノーコード/ローコードツールを使って業務の進め方をデジタル化しました。

「ノーコード/ローコード(no-code/low-code)」:専門的なプログラミングの知識がなくとも、簡易なアプリ開発等が可能なツールのこと

今回のnoteでは、市場衛生検査所の野口所長、高田統括課長代理、田中主任をはじめとする担当者のみなさまと、それを支援したデジタルサービス局の民間出身のデジタルシフト推進担当課長、亀山さんでプロジェクトを振り返る座談会を実施しましたので、今回のデジタル化の全貌とその裏側についてご紹介します。


食品衛生法の改正によりHACCP監視が義務付け

―――今回、豊洲市場の衛生監視業務をデジタル化されたわけですが、どのようなきっかけで行うことになったのでしょうか?

【野口所長】
食品衛生法が改正され、2021年6月からHACCP (ハサップ、Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理が完全義務化されることになりました。

有毒魚などの不良食品の速やかな排除という従来の市場衛生監視業務に加え、HACCPに沿った衛生管理では、事業者さんへの聴き取りや実施記録の確認などのプロセスを継続的に記録に残し、効率的に管理していくことが必要となりました。

豊洲市場でもHACCPへの対応が適切にできるよう、昨年度中にチェックリストの作成まで完了させたのですが、実際どのように衛生監視を進めていくのか、手探りの状態でした。

【高田統括】
もともと、広い豊洲市場内を2人1組のペアに分かれて監視するため、他班との連絡が困難である一方で、有毒魚対応など即座の判断が求められることもあるため、監視班どうし、又は現場から事務所と連絡がとれるタブレットを導入できないかと思っていました。また、現場でデータを入力しクラウドに蓄積することができれば、事務所に帰ってデータを打ち直す手間もなくなるのではないかと考えました。

そこにHACCP義務化で新しい業務が加わることになり、この機会に従来の監視業務を含めて業務全体をなんとかデジタル化できないかと思っていたのですが、そのために必要なクラウドに関する知見がなかったので困っていました

そんな中、デジタルサービス局から事業所のオフィス改革を進めているという話をいただき、5月末に本件を相談することにしました。


デジタル人材がプロジェクトに参加


市場衛生検査所からの相談を受けたデジタルサービス局では、早速、タブレットとクラウドを活用した豊洲市場における食品衛生監視業務のデジタル化に取り組むことにしました。

都庁内のデジタルに関する各局支援の一環として6月にプロジェクトを立ち上げ、民間出身のデジタル人材が参加することになりました。そこでプロジェクトに加わったのが、民間のソフトウェア会社出身のデジタルシフト推進担当課長、亀山さんです。

―――このプロジェクトに参加されたとき、亀山さんはどう思いましたか?

【亀山さん】
プロジェクトが立ち上がったばかりの早い段階で話が来たのですが、かなり課題とやりたいことが整理された状態だったので非常に興味がわきました。

人が歩いて店舗を点検する、という業務のデジタル化は、2021年当初のいわゆる「第3波」のコロナ禍で関わった「徹底点検TOKYOサポート」プロジェクトの事例と共通点があったので、そのまま活用できそうだと思いました。

「徹底点検TOKYOサポート」プロジェクトでは、都内の飲食店等のコロナ対策に関する点検を実施するにあたって、従来のような紙を使ってチェックし、後でデータ入力するような形式ではなく、都庁職員がタブレットをもって飲食店を訪ね、アプリ上のチェックリストに基づいて点検し、その場で直接データを蓄積していく手法を採用しました。

その開発で使用したのがノーコード/ローコードツール「kintone」です。前職では使用したことがなかったのですが、コロナ禍ということもあり、プロジェクト立ち上げから「1週間」でリリースというスピード感が求められる中、このツールを駆使し、店舗のコロナ対策のチェックリストをデジタル上に置き換えたアプリを開発しました。

今回の豊洲市場の衛生監視のプロジェクトでも当時の事例をそのまま活用し、参加が決まってから必要となる情報を収集してすぐに作業にとりかかり、2時間でモックアップ(試作品)となるアプリを完成させました。


「はっきり言って、使いにくいです」:モックアップでの試行実施

プロジェクトへの参加後、ノーコード/ローコードツールを使ってなんと2時間で豊洲市場の衛生監視アプリのモックアップを開発した亀山さん。このモックアップを元に、現場のユーザーの意見を反映させながら改善を重ね、確認と改善を繰り返す「アジャイル」という手法を用いて開発していくことにしました。

kintoneの1か月の無料期間中に目途をつけてしまおうと早速モックアップを現場で試してみようとしたのですが、このプロジェクト用のタブレット端末の用意は当然ありません。福祉保健局の本庁部門で調整した結果、別の課で保有しているタブレット端末を今回のために一時的に貸してもらうことができました。

こうして、ここまで費用を全くかけることなく、プロジェクト立ち上げから1か月というスピード感で、モックアップを現場で試してみることになりました。

試行実施では、仲卸業者さんにご協力いただき、タブレットを使ってHACCP監視を実際にやってみました。アプリ上のチェックリストに沿って監視項目をお聞きしました。

―――現地でモックアップでの試行実施を行った後、会議室に戻ってすぐに全員で振り返りを行いました。そのときの田中主任の発言がこのプロジェクトを決定づけたとデジタルサービス局で言われています。そのときのことを教えてください。

【田中主任】
デジタルサービス局の方から「やってみてどうでしたか?」と聞かれたので、「はっきり言って、使いにくいです」と正直に言いました。

仲卸業者さんもお仕事をされているところ監視業務でお時間をいただくのに、指で入力していては時間がかかりますし、チェックリストの順番通りお話を聞けるわけではなく、質問項目を行ったり来たりして記入することが当時のアプリではスムーズに行うことができず、現場で使いやすいものとは程遠いものとなっていました

そこで、指ではなくペンで入力できないか、とか、チェックリストの項目が一覧で見えやすいように見た目を変えられないか、などその場で要望を伝えました。

【亀山さん】
最初に作成したモックアップでは、事前に提供していただいた監視項目のチェックリストをアプリ上に置き換えたのですが、「紙のチェックリストを単にデジタルにしただけ」にしかなっていなくて、本当の意味でのデジタルによる業務の変革にはつながっていませんでした。DX(デジタルトランスフォーメーション)ではなく、「デジタイゼーション」の段階にとどまっていました。


「目の前でアプリがどんどん変わっていく」:ユーザーテストとアジャイルな開発

「はっきり言って、使いにくいです」という田中主任の正直な感想は、耳の痛い意見というより、サービスを開発する側としてはユーザーの貴重な意見となりました。

アプリの改良のため、デジタルサービス局と市場衛生検査所とは、メールではなく、kintone上の課題管理表でオープンにやりとりしながら、ひとつひとつの課題をつぶして開発を進めていきました。

今回のプロジェクトではノーコードツールを使っているので、デジタル人材だけでなく、プログラミングを知らない職員も自らアプリの機能を開発することができます。

そこで、市場衛生検査所側にもkintoneアカウントを割り当て、豊洲市場で働くユーザーである職員に自らノーコードで(コードを書かずに)ツールを使ってアプリを改良してもらうことにしました。疑問点や改善点をkintone上の課題管理表で質問し、現場の職員が対応できない部分について、デジタル人材がローコードで(最小限のコードを書いて)改良するという流れでアジャイルに開発を進めました。

―――今回、職員自ら開発に加わりながら、現場でユーザーテストを繰り返し、進めていきました。こうした進め方はいかがだったでしょうか。

【田中主任】
亀山さんから「アプリは壊しちゃっても大丈夫ですよ」と言ってもらったので、安心していじることができました。私自身はデジタルにこれまで縁がなかったのですが、通勤時間もYouTubeの解説動画でkintoneの使い方を勉強しながら、自分たちで開発してみました。

「仲卸業者さんに聞かれても答えられない」「現場に持っていく物が多い」「これだったら手書きの方が早い」など、現場で監視業務をしている私たちでしか気付かないことがあるので、とにかく「現場で使いやすいものにする」ということを一番に考え、アプリを改良し、アイデアや提案をデジタルサービス局にぶつけてみました。

【野口所長】
目の前でどんどんアプリが変わっていくのを目の当たりにして、これはいける、と思いました。こんなことは通常2~3年かけていたこれまでのシステム開発ではありえなかったことです。私も田中主任に教えてもらってアプリを触ってみて本当に驚きました。

【高田統括】
従来よくあるような、開発の作業は事業者にお任せのやり方ではなく、現場の若手が実際にアプリを触り、試行錯誤しながら開発できたことで、従来だったら出来上がったものを見て使いにくくても仕方なく使っていたかもしれないところを、真に自分たちが使いやすいアプリの開発につなげることができたのは、大きな発見であり、とてもうれしいことでした。

「どうすれば紙を手放せるか」と思っていましたが、若手だからこそ発想を転換させることができたのだと思います。

【亀山さん】
驚いたのは、こちらでも気づいていなかったiPadのOSのアップデートの情報を市場衛生検査所側でキャッチしていて、そこから新しい機能実装につながった例があったことです。

通常のアプリ開発だと、要件をガチガチに固めてから事業者さんに開発を委託するケースが多いですが、今回、あえて要件を固めず、ユーザーである現場のみなさんに使ってもらいながら必要な要件を探していく手法をとったことで、より良いサービスの開発につながりました。

―――こうして繰り返し行ったユーザーテストですが、とある打ち合わせの際、高田統括が発した言葉が、デジタルサービス局含め、このプロジェクトにかかわるすべての職員の気持ちを奮い立たせました。

【亀山さん】
現場ではこれまでどおり紙がいいといった意見は出てないですか、と尋ねたとき、高田統括が「使わないなんて、言わせません」とおっしゃったのです。これはデジタルサービス局としても心強かったです。

結果としてデジタルと紙の併用となってしまって本末転倒になることもあるのですが、そこのところを、現場の総括である高田さんにそう言ってもらってすごく助かりました。このプロジェクトがうまくいったのは、現場の理解と協力があってのことでした。

【高田統括】
デジタルに抵抗する人は、自分も含めてですが、慣れたやり方を変えたくない、デジタルでどう変わるのかわからないからこわいのだと思います。こうすれば使いやすくなる、業務が効率化しもっと良い仕事ができるようになる、としっかりメリットを説明すれば納得してもらえると思っていました。

「使わないなんて、言わせません」というのは、みんな使えるはずのものなのにぼんやりとしたイメージで配慮してしまってはダメになる、もったいないと思って言いました。

【田中達也さん】
実際は慎重な意見にも耳を傾けていましたし、有無を言わせずに進めていたわけではなかったですね。部分部分では、慎重になる高田統括を若手が説得することもありました。

【野口所長】
「使わないなんて、言わせません」というのは、高田統括の覚悟でもあるのだと思います。私もはじめは、現場で行うには操作が煩雑なようで、すべての職員が使おうという気持ちになるのは、やっぱり厳しいかなという感想を持っていました。

ところが、高田統括、田中主任たちが、日々、試行した感想を職員から聴き取りし、さらに、自分たちが実現させたい方法をデジタルサービス局に正しく伝えられるように、自発的にkintoneの勉強をしてくれました。そして、所内みんなで参加できるよう、会議でアプリ開発状況を説明し、改修情報は「キントーン ミニ通信」というのを作って所内メールで流すなどの工夫も重ねてくれました。


デジタル化で仕事の進め方が変わった


「使わないなんて、言わせません」という現場を統括する高田さんの理解と協力も得ながら、現地で実際に使ってもらってユーザーテストとアジャイルな開発を繰り返し、11月にデジタルサービス局の立ち合いのもと、2度目の現地での試行を実施しました。

この頃には、アプリが現場で使いやすいものに進化していただけでなく、タブレットを肩にかけるストラップを使うなど、現場のみなさんも完全に使いこなしていて、現場での使用例を見ていなかったデジタルサービス局としては驚かされるばかりでした。

―――機能改善したアプリを使ってみて、仕事はどのように変わりましたか?

【高田統括】
これまで紙で行っていた業務をタブレットでやれることで、現地に持ち込むものも減り、身軽になったのと、仲卸業者さんに聞かれたことをその場で答えたり、チャットで事務所にいるメンバーと連絡がとれるようになったことが大きかったです。

【田中主任】
アプリ上でコミュニケーションをとることができるようになったのは仕事の進め方としては大きな変化でした。

私たちは早朝監視から通常監視までローテーション勤務で働いているので、これまでは職員同士でコミュニケーションをとるのが難しかったのですが、アプリ上の掲示板でチャットで会話ができるので、申し送り事項などをアプリ上で確認できるようになりました。このことで以前よりチーム内のコミュニケーションが活発になりました

【高田統括】
ある日、私が事務所にいたとき、現場でトラブルが発生したのですが、タブレットを使っていたので現場からすぐに連絡が来て、画像やテキストをやり取りしながら、迅速的確に対応することができました。新しい仕事の進め方が実際に役に立っています

【野口所長】
例年、人事異動がありおおよそ3割の職員が入れ替わってしまうのですが、タブレットが導入されたことで、業務ノウハウの引き継ぎが楽になり、また、データが蓄積されることで継続的なHACCP監視が進むことを期待しています。


これからの展望


タブレットとノーコード/ローコードツールを使った今回のプロジェクトは、今後、市場衛生検査所内で横展開を図っていきます。

水産物だけでなく、青果の衛生監視も対象とし、豊洲市場だけでなく、大田市場、足立市場などほかの中央卸売市場にも展開させることができるよう、アプリの更なる開発を続けていくことになりました。

今回のプロジェクトは、デジタル人材だけでなく、都庁職員が自らkintoneを使ってアプリ開発に加わり、現場が主体的に関わりながらアジャイルでスピード感をもって業務を変革させていった、都庁としても画期的なプロジェクトとなりました。

構造改革推進チームも一緒になってこのプロジェクトを進行しました。現場のみなさんが「現場の業務をよくしたい」という共通の思いを持ち、同じ方向を向いて一緒になって考え、行動していたことが強く印象に残っています。デジタルの力で所長や主任といった職層を超え、若手とベテランの相乗効果で業務のDXを成し遂げることができました。

市場衛生検査所では、デジタルの力で業務を見直しながら、これからも安全で安心な食品を都民のみなさまにお届けしていきます。

【ご意見募集】
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