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解剖学は信頼できるのか

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は

解剖学

について話していきたいと思います。

理学療法では

基本中の基本であり

必須の知識です。

しかしながら解剖学とはなにか

と言われれば

「起始停止?」「組織がどこにあるか」

ぐらいの非常に単純なものに感じます。

ですがそうでもなさそうというのが実のところです。

解剖をどのように考えていくか

私なりに説明させていただきますので

よろしくお願いします。

それでは始めます。




解剖学教育の歴史

 人体は一つの宇宙といわれるように謎だらけである。これはどうしようもない事実であり、この事実が解剖学者を駆り立てているものともいえる。解剖学は歴史が古く、これまでに蓄えられた膨大な知識がある。しかしこの知識を伝えるには、かなり無理がある。理由は単純であり、とても伝えるには時間が少なすぎるからである。また初学者の理解が追い付かない可能性も十分にある。では教育において「わかりやすく」伝えるためにどのような工夫をするだろうか。それは情報を削ることである。

 この情報を削る作業は長い年月行われてきている。仮に情報を削る作業を行っていないとすれば、プロメテウスやグレイ解剖学、ネッターをはじめとした解剖学書のイラストがあそこまで美しく描かれるのはあまりに不自然である。あのイラストは情報を削った結果といえる。たとえば、関節包筋。実は関節包とつながっているような筋は多い。この事実は1975年版の解剖学アトラスで「深層にある筋の最深層の筋線維や腱が関節包に付着する」という記述からも明らかである。これは何を表しているかというと、ヒラメ筋も中間広筋も深層にある筋という時点で関節包につながっているということである。これはセラピストにとっては重要な記述であるが、それにも関わらず現在の解剖学書ではそのような記載はない。この50年間で削除されてしまったということである。

 解剖学は年を重ねるにつれてシンプルになってきている。しかし残念ながら人間の身体はいつまでも複雑である。いわゆる教科書に描かれた図は大まかにいえば正しいのだろうが、大まかではよくないものがたくさんある。解剖学書のイラストもトレースされてきたものばかりであり、19世紀以来変わっていない。このように考えると、私たちの職業にとって機能解剖学は非常に重要な知識にも関わらず、非常に曖昧なものといえる。この曖昧さは知識を蓄積し続けたゆえのものである。


解剖学をどのように学ぶか

 前述したようなことはあるものの、だからといって解剖の理解を曖昧にするわけにはいけない。ではどのように勉強すればいいのか。これは解剖学書を複数を閲覧して学ぶしかない。一番の勉強は実際に解剖することであるが、その機会はあまりに希少すぎる。解剖学書はなかなかに高価ではあるが、複数の書籍を閲覧して臨床感と近い情報を選択するべきであろう。解剖の理解においても臨床経験が重要になってくるといえる。

セラピスト向けの解剖学書はない

 解剖学書の多く、いや全部が医者に向けたものである。セラピストに向けたものは存在しない。医者にとって重要なものとセラピストにとって重要なものでは大きな違いがある。つまり多くの重要な情報がそぎ落とされている可能性がかなり高い。解剖学は医者との共通語としても大きな役割を果たすが、その多くの情報が医者に都合のいいものということを理解する必要がある。われわれセラピストが求めている解剖学はより深堀りできる余地がかなりあるが、その環境が整っていないのは大変残念な点である。


解剖が動作につながるか

 これはわれわれセラピスト目線のみの話であるが、セラピストは運動の専門家である。運動を学ぶ上で解剖を理解することは不自然ではないように思えるが、これは実はつながっているものとは言いにくい。それは静的なものから動的なものを推測することなど不可能だからである。解剖を理解し動作につなげようとする行為は、レントゲン画像をみて歩行分析をしようとしているのに近いものを感じる。運動を支配するものは解剖ではない。そして何より要素ともいいにくい。運動という統合的なものを評価する際に解剖という要素に着目するのはあまりに不可解である。解剖が役立つのは徒手療法やアクチベーションであり、理学療法の本質とは程遠い。


最後に

 解剖学は歴史が古く、私たち理学療法士にとって多いに役立っている学問である。本質はそこまでシンプルなものではなく、歴史による不都合もたくさんあることは理解しておくべきだと考える。しかし解剖学の理解はたしかに重要ではあるが、あまりに重要視しすぎている印象が私にはある。これは完全に偏見だが、トップトレーナーと理学療法士の差に関与している風潮だと考える。解剖・運動・生理は基本ではあるが、それでは通用しないことは理学療法が運動制御にパラダイムシフトしていることからも明らかである。何度も言うが、人間という複雑系にはシンプルな理論は通じないことを理解して治療に取り組むべきだろう。


本日はこれで以上です。

かなり私見ではありますが

お許し願いたいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


参考・引用文献

1)秋田 恵一 他:運動器臨床解剖学‐チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座‐ 全日本病院出版会 第1版第1刷 2020年

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