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運動器は部品ではない

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は

運動器

について話していきたいと思います。

運動器理学療法は割と人気な分野であり

勉強会もさかんに行われています。

この運動器理学療法について

わたしなりに書かせていただきますので

よろしくお願いいたします。

それでは始めます。



現在の運動器治療の考え方

今の運動器の考え方は

機械論に基づいています。

説明すると割と簡単で

壊れた機械は部品を修理するとシステムが正常になるのと同じように

人間も異常なところを正常な状態に還元すれば

正常な生活に戻れるというものです。

この考え方は

デカルトの機械論的生命観によるものです。

例えば心臓はポンプ、血管はチューブといったように

部品の一つ一つが動くことで

生命は活動するという概念です。

現在の科学はほぼこのデカルト主義で展開されています。

解剖学や生理学、運動学も

人間を構造としてとらえ、それを分解して

人間を理解するための学問です。

ほとんどの科学が人間を分解して考えていくことを

前提として発展してきました。

このような背景から

運動器理学療法も

運動器を「部品」としてとらえ

その疾患部位の解剖学や運動学から異常なものを捉えて

そこにアプローチをしていくという

理学療法の形がほとんどになりました。

しかし本当に還元することが重要なのでしょうか。



生命は流れである

科学で機械論がブームになっていたときに

異を唱えた科学者がいました。

ユダヤ人科学者の

ルドルフ・シェーンハイマーです。

彼はこのような言葉を残しました。

「生命は機械ではない、生命は流れだ」

(なぜこのような言葉が彼から出てきたのかは福岡伸一先生の書籍をご参照ください。)

この言葉は一体何を私たちに伝えているのでしょうか。

それは人間は構造物ではないということです。

私たち理学療法士は

さまざまな整形外科疾患の現象を

構造の破綻としてみる傾向にあります。

しかしながら過去の記事にある

インピンジメント症候群のシステマティックレビューでも示されている通り

最近の研究でも構造的問題と疼痛にはあまり相関がないと結論づけられている例もあります。

これは解剖学や運動学の理解が

必ずしも症状の軽減に結びつくわけではないといえます。

これは

機能面のみで見た治療の展開の限界を意味している

と私は考えます。



「森も見て、木も見る」の功罪

よく理学療法では

全体も見て、部分も見なければならないという

ことで上記の言葉がよく使われる印象にあります。

しかしここで注意しなければならないのは

森と木はそれぞれ全く別のものとして見なければいけない

ということです。

森は木が生い茂っているところというのは

間違いない事実です。

ただこの森と木の例えが生命にはあまり適していません。

なぜなら

人体は細胞の集合体というだけではないからです。

明らかに細胞の和を超えたシステムで動いているのが生命です。

これは運動器にも当てはまります。

人体は運動器を組み合わせたものではない

ということです。

こう言うと

「そんな当たり前のことわかってるわ」

と言われそうですが

今の運動器理学療法の考え方は

人体を運動器の組み合わせとして見ている

ような傾向にあると私は考えます。

例えば足を骨折したとしても

悪くなるののは足だけではなく

全身に波及していきます。

過去の記事で触れた足関節と横隔膜に関係があると示唆されている通り

一つの部分が崩れると

たちまち全体が崩れていくのです。

このようなことから

私たちセラピストは

患者の全体を見て治療をしていかなければならないのです。


「全体を見る」は「全身を見る」ではない

よく勘違いされるのはこのようなことを言うと

全身を見るのが重要だと思われることです。

実際はそういうことではありません。

患者の全体を見るとは

患者の背景やストーリー、人格など

機能面ではないものを包含して見る

ということです。

生命の流れを崩すのは

外傷や骨折ばかりでなく

心理的背景も必ず関わってきます。

心理面の変化で動きや姿勢が変わるとも言われている通り

さまざまな要因が重なり合って症状が発現しているのです。

   


 
運動器疾患は

運動器を見るだけでは治せません。

なぜなら生命は構造物ではないから。





このようなことを言いながら

まだこのような考えを治療にうまく反映できていないのが現状ですが

より質の高い医療を提供するために

精進しようと思います。


本日はこれで以上です。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


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