お日様の香り
「今日もいい天気」
朝の6時過ぎ。カーテンから差し込むお日様の気配を感じて私は察した。
朝早く起きて散歩に行くのが私の日課だ。だから天気はすごく大切。
「いい天気でありますように」
そうやって願いながら、毎朝ドキドキしながらカーテンを開ける。ドキドキというと、発表会の前の緊張感とかを思い出しそうだけど、そんな大袈裟なものではない。半熟に茹でた卵を食べる時に成功しているか不安になるのと同じくらいのドキドキ。
今日の空は雲が2割くらい。文句なしのいい天気だ。空気は少し冷たいから念のためカーディガンを羽織って行こう。帽子も被った。カーディガンも忘れてない。靴の爪先を床にトントンと2回叩いて準備は完了。
「いってきます」
3年ほど一緒に暮らしている水色のインコに囁きのような挨拶をして、私は今日も散歩に出掛ける。
私は毎朝仕事に行く前に、朝早く起きて散歩に行く。いつも散歩するルートは決まっていて、家から5分くらい歩いたところにある大きな公園を一周するだけ。木が少ない代わりに草原広がっている。アメンボやザリガニがいる小さな川もある。そんな大きな公園は1周するのに30分もかからないかな。
最近はいつもとは違い、もっぱら家で仕事をしている。(はやりのリモートワークってやつ)
たまに違う道を歩きたくなる時がある。リモートワークだと時間を気にする必要がない。おかげで気になっていた道に行くことができる。世の中意外なところで恩恵を受けるものだ。
「このご時世に不要不急の外出なんてけしからん!」
なんて言われてしまうと少し落ち込んでしまうから心の中に留めて欲しい。
一応私の言い分は用意してある。都知事が1時間くらいだったら外に出てもいいと言っていたんだもの。
こんなご時世だから外出する時にはマスクは欠かせない。
けどマスクが邪魔して私の大好きなお日様の香りを感じないのは残念。
まるで公園で悪いことでもするかのように周りを伺った後、私はこっそりマスクを外して深呼吸した。ほのかにお日様の香りをまとった空気が、勢いよく鼻を通って私の肺に入ってきた。
さぁ、今日も1日頑張ろう。