初めてのデート
「なんか今日いい香りするね」
そんな褒められ方初めてだった。
それもそのはず。
だって、今日は人生で初めて香水をつけた日だから。
彼とは学校で出会った。
彼と同じクラスになって数ヶ月がたった。
彼と私は同じ高校に通っている。
彼は部活で忙しい毎日を送っているのに、
私ときたら毎日家に帰っては、スマホをいじるか眠るかの二択しかない。
私たちはある種、正反対の二人なのだ。
問題はそれだけじゃない。
彼はクラスの人気者で顔もわりといい(まぁ顔面偏差値60といったところか)のに対して、私はいつもクラスに馴染めずひっそりと過ごしている。
こんな私が人気者の彼にデートに誘われる日が来るなんて…
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「ねぇ、好きな食べ物とかってあるの?」
彼は爽やかな笑顔で私に聞いてきた。
こっちは昼休みに窓際で静かに本を読んでいるというのにまったく、空気の読めない男だ。
「ケーキとかは好きです」
私は静かに答えた。
「そうなんだ!おいしそうなケーキ屋さんあったら教えるね!」
そういって彼は友達とどこかへいってしまった。
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それから3日くらい後だろうか。
また彼が私の前にやってきた。
「ねぇ、この前美味しそうなケーキ屋さん見つけたんだけど一緒に行かない?」
彼はまた爽やかな笑顔で私に聞いてきた。
前回よりも少し顔が赤くなっているような気がする。
いつもの私なら断ってしまうのだろうけど、この日は好きな番組の特集が放送されるのが楽しみだったのか意外な答えを出してしまった。
「あぁ、いいですよ」
考えてみると男の子と二人きりで出かけるなんて初めてだ。
もちろん普段出かける予定もなく、家でゴロゴロしている私におしゃれな洋服などない。
それからというものの、洋服やメイク、髪型などやれることは全てやってやろうと必死にスマホで調べた。
ずいぶん便利な世の中で、GoogleやYouTubeは最高の教材になった。
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さぁ、いよいよ今日は初デートの日。
ファッションもメイクも髪型も今日はバッチリ。
なんてったっていつもより2時間も早く起きたんだから。
時計を見ると、家を出るまで少し時間がある。
その時、ふと母が使っている香水が目に入った。
ピンク色の四角い形をした綺麗な瓶だった。
「ミスディオール?」
私は蓋を取って匂いを嗅いでみることにした。
「なんかいい匂い」
そう感じた私の次の行動は決まっていた。
すぐにスマホで香水のつけ方を調べ、その通りにつけた。
いい香りを纏った私は
いつもより大人になった気分になっていた。
今日は初めての男の子とのデート。
私はドキドキしながら家を出た。