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【読書案内】主要文庫の紹介



0.はじめに

今回は主要な文庫本の種類や特徴について語ります。まあ、本が好きな人にとっては既知のことばかりかもしれませんが、もう一度おさらいしてみましょう。


1.岩波系文庫

(1)岩波文庫

岩波書店が擁する名文庫。国内外問わず多くの古典作品を扱う。幅広いテーマをカバーしており、教科書に出てくるような名著はだいたい岩波文庫に収録されている。初めて大学の図書館で岩波文庫に出会ったときの衝撃は今でも忘れない。
読んでいると頭が良さそうに見える文庫第一位かもしれない。電車やバスの中ではスマホをいじらず、岩波文庫を読もう(提案)。
ジャンル毎に色分けされており、

赤→海外文学
黄→日本文学(江戸時代以前)
緑→日本文学(明治時代以降)
青→思想・哲学、地理、歴史、音楽など
白→法律、社会、政治・経済
という感じで分かれている。
装丁がクラシカルで美しく、本棚に並べたときの景観の良さは文庫本随一。

(2)岩波現代文庫

創刊は2000年。古典が多い本家「岩波文庫」と異なり、20世紀後半以降に出版された文芸・学術書を扱う。代表作に『戦争は女の顔をしていない』『ご冗談でしょう、ファインマンさん』『鏡のなかの鏡』などがある。


2.新潮文庫

日本文学と海外文学の有名どころをカバーしている文庫。現代の作家も多い。詩や小説だけでなく、『孤独な散歩者の夢想』『この人を見よ』などの哲学・思想書もある。文庫の中では安く、ブックオフの100円コーナーでもよく見かける。岩波はお堅そうでちょっとやめようかな・・・という方は新潮文庫を集めよう。


3.講談社系文庫

(1)講談社文庫

1971年創刊。当初は古今東西の学術書が多かったが、後にそうした作品は「学術文庫」の方へ収録されるようになった。

(2)講談社学術文庫

1976年発足。人文・社会科学系の書籍が多く、『枕草子』や『日本書紀』などの古典日本文学も扱っている。「ポケットに学術書を」がモットーらしい。
岩波同様、お堅いイメージがある。こちらは高価なので手を出しにくいかもしれない。とりあえず図書館で読んでみよう。


4.光文社古典新訳文庫

2006年に創刊された光文社の文庫本。古典作品を現代に馴染んだ言葉でわかりやすく翻訳。岩波文庫や講談社学術文庫より読みやすく、親しみやすいのが特徴。岩波文庫と同じく色分けされている。あちらがジャンル別だったのに対し、こちらは著者(作品)の言語圏で分類されている(フランス語圏→青 ドイツ語圏→黄など)。
解説が充実した文庫としても知られており、巻末には作者の生い立ちと年表、作品の解説が詳細に書かれている。『カラマーゾフの兄弟』や『純粋理性批判』のように難しい本も親切丁寧な解説を加えてくれるため、完読の助けになってくれる。
また、注の解説は巻末ではなく見開きの左ページに掲載されているため、わざわざ巻末を参照する手間が省ける。このあたりは非常に親切な設計。

他にも、岩波と比べると、ややマイナーな作品も扱ってくれるので、王道の文学作品を読み尽くしてしまい、読むものがなくなった人にもおすすめできる。そういう意味でも岩波との差別化は図られているといえよう。
昔は安さがウリだったが、今ではそんなに安くない。せめて書籍にも軽減税率を適用して、庶民になるべく多くの本が読めるようにしてもらいたいものである。
筆者のお気に入り文庫でもあり、カント『啓蒙とは何か』、ルソー『社会契約論』『人間不平等起源論』、ミル『自由論』など読む価値の高い本も多数ある。


5.集英社文庫

割と新しい文庫で、現代の小説が多いが、クンデラ『存在の耐えられない軽さ』など著名な海外文学も扱っている。「ヘリテージシリーズ」ではジョイス『ユリシーズ』やプルースト『失われた時を求めて』を収録。


6.河出文庫

河出書房が出版している文庫本。ダンテ『神曲』など有名な作品も扱うが、ケルアック『オン・ザ・ロード』などマニア向けの書籍も扱う玄人向けの文庫でもある。


7.ちくま系文庫

(1)ちくま文庫

文学の個人全集を多く手掛ける筑摩書房の文庫レーベル。写真集やエッセイもある。結構渋いイメージ。そこそこ値が張るので、ブックオフで見つけたら嬉しい文庫のひとつ。
中里介山の大長編『大菩薩峠』も収録している。

(2)ちくま学芸文庫

1992年にちくま文庫から独立したレーベル。人文学術書はもちろん、『ローマ帝国衰亡史』などの歴史系もしっかりカバー。他にもヘーゲル『精神現象学』やキルケゴール『死に至る病』などの難解な哲学書も多く扱っている。
高価な文庫本であり、難解な本も多いことも合わさって岩波以上にお堅いイメージが強いかもしれない。背伸びしてでも教養を身に付けたい、あるいは読書力に自信のある人はどんどん挑戦しよう。


8.角川系文庫

(1)角川文庫

1949年創刊。かつては岩波書店同様、古典を多く扱っていたが、その後大衆路線に舵を切った。今では古典回帰も若干だが図られているようだ。モーパッサンの『ベラミ』が読める貴重な文庫でもある。

(2)角川ソフィア文庫

1996年創刊。日本文学の古典をわかりやすく解説した「ビギナーズ・クラシックス」がなかなか良い。岩波文庫は原文なので難しいが、こちらは現代誤訳で解説もあるので読みやすい。
他にもショーペンハウアー『自殺について』など海外作品もある。
値段もそんなに高くはないため、おすすめできる文庫だ。


9.おわりに

ということで、主要文庫の紹介でした。興味のある文庫があれば読んでみてください。
主要新書もいずれ紹介する予定です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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